Neetel Inside 文芸新都
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ティラノクション
intro.

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ヒットチャートからロックが消えて10数年が経った。

いや、この国には初めからロックンロールなんてものはなかったのかもしれない。俺が幼少時代にスピーカーから流れていた音楽なんてもんは洋楽のメロディーに合わせて「あなたに会いたい」だの、「キミを愛してる」だの超個人的かつ(波風を立てない)平和的な音楽ばかりだった。

論理積と最大公約数を駆使し、ラブソングはヒットチャートを駆け上がる。今後もこの流れは変わらずにいらいらする空っぽの歌ばかりが寂れた向陽町の商店街に流れていくのだろう。

わかってる。そんな事、俺が生まれる前からずっと続いてる。要は曲に合わせて歌ったり、踊っている人間が違うだけなのだ。若さと才能が枯れたら新しい人間に入れ替え悪徳プロデューサーはまたレコードに針を落とす。

それを収録したCDを買いに中高生は金を落とす。よく出来た仕組みだ。嫌になるくらい。


いらいらする。どうしてこんなにいらいらするんだろう。


答えは出ている。「魂の問題」。メジャーデビューしたロックバンドが正常に稼働するには常にセールスが求められ、納期に追われ制作サイドからも注文がつく。

そんな状況で自分の「超個人的」なロックの魂を量産型の円盤、12cmのコンパクトディスクに吹き込めるだろうか。そういった状況でも結果を残したミュージシャンはたくさんいるだろう。

尾崎豊は孤独で忌野清志郎は優雅だった。でもそれだけだ。すべてが虚しい。彼らの精神も肉体もこの世界にはもう残っていないのだ。それに俺も前記のミュージシャンを耳しげく聴いていた時期もないし、どうしてか彼らを本物のロックンローラーだとは思えなかった。

そんな事を頭の片隅でぼんやり考えながら俺はたいした感慨もなく高校二年生になり――、

平野洋一と出会った。

       

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