Neetel Inside ニートノベル
表紙

お前らこんなのが好きなんだろ(笑)
出会い編

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 回答受付中のQ&A

 raisuke さんの質問
 私は小説家を目指すワナビです。
 ライトノベルを書きたいのですが、何を書けば良いのか思いつきません。
 面白いストーリーや好かれるキャラにはなにか法則があるのでしょうか?
 教えてください><

 質問日時:1234/5/67 00:00:00
 回答数:3

 ******さんの回答
 それはやはりラブコメなのではないでしょうか? 普通の高校生の周りに女の子がわんさかやって来て何にもしていないのにモテモテ……といったところでしょうか?
 いきなりHなシーンや萌え萌えなキャラクターを出せば大ヒット間違いなしですよ(笑)

 ******さんの回答
 主人公には実は秘められたチカラが眠っていて、それが覚醒した時に――其れは最強の存在と化す。
 だが主人公はその「チカラ」を嫌っており、自ら開放することは決して無い。
 その能力で、人ならざるモノ――怪物や魔王を素手で倒したあとに長々と説教をする。

 ******さんの回答
 最近の流行りはファンタジーだと思います。
 全く違う種族が出会って気持ちを通い合わせたり、協力して何かを成し遂げる話が多いです。
 ですが、まったくの空想ではなく生々しい話や現代社会の批判といった要素が強いと感じます。

 質問した人からのコメント
 ありがとうございますm(_ _)m
 皆さんのアドバイスを参考に書いてみたいと思います。

   □■□

 登場人物紹介
 主人公:高校生。親は家にいない。とりあえず金髪で見た目が不良。性格がひねくれている。だが、怒りで覚醒すると……!?
 メインヒロイン(仮):なんかよく分かんないけど何故か主人公のことが好きな自称・妹兼幼馴染み。頭が良くて非暴力的。あと無駄にエロい。

   □■□

 これはずっと昔の話だ。ある日突然、俺に「神奈子」という妹ができた。妹と言っても実際には俺と血が繋がってなくて、それはまぁパッと見て分かった。神奈子は俺によく懐いていて、いつも後ろをついて回った。だけど人見知りで、家からは出たがらなかった。
 それとは別に、俺には男友達がいた。本名は英雄(ひでお)といって、俺はヒデと呼んでいた。ヒデは無二の親友で、よく一緒に野球やゲームをして遊んでいた。俺はその二人を会わせて、皆で遊ぼうと考えた。だが、そううまくはいかなかった。

「お前さ、そいつのことが好きなんだろ? だったら結婚しろよヒャハハハハ!」
 これがヒデの第一声だった。俺たち二人を見て吐き捨てるように言った。その時ヒデは笑ってはいたが、言葉の端々から悪意のようなものを感じ取れた。俺は急に自分の行動が恥ずかしく思えてきて、とっさに否定した。
「なっ、ちげーよバーカ」
「……お兄ちゃん? 私のこと嫌いなの?」
 神奈子は、涙を湛えた目で俺を見つめた。ヒデは意地悪く笑うと神奈子に囁いた。
「聞いてなかったのかよ、お前のお兄ちゃんは俺らと遊ぶんだぜ。お前はどっか行ってろよ! ケケケ」
 気づくと俺はヒデを突き飛ばしていた。全身を血液が高速で流れて、信じられないほど息が荒くなっていた。今思い返せば、我を忘れていたように思う。
「黙れ!」
「ひっ……」
 ヒデが驚いた様子で見つめいていた。お前は何を驚いているんだ。ずっと俺が怒らないとでも思っていたのだろうか?
 ――ムカついた。とにかくムカついて、俺の中でナニカが切れた。たとえヒデが、泣いて許しを乞うたとしても俺は許さなかっただろう。
「ああ、そうだよ! 好きだよ。結婚するんだよ!」
 ヒデの服を掴み、拳を振り上げる。
「じ、じゃあ……証拠見せてみろよ!」
 ヒデは地面に座り込んだまま、俺たちを指差した。コイツをぶん殴るだけじゃダメだ。

 もっと徹底的に痛めつけなくちゃ。

 そして俺は、妹の顎を右手で掴むと乱暴に引き寄せて、キスをした。神奈子の、大きく開いたエメラルドグリーンの瞳孔を覚えている。そこから温かい綺麗な雫が数滴、右手に落ちた。――涙だ。驚いたことに、神奈子が泣くのを見るのは初めてだった。
 俺たちはそのまま長いこと硬直していた。本当はすぐにでも離れて神奈子に謝りたかった。でも、もう戻れなかった。少なくともヒデの目の前では弱気なところは見せたくなかった。
 少し経ってからヒデの「知らねーよバカ」という声が聞こえてきて、周囲に誰もいなくなった。……神奈子の唇の感触は、まぁ、柔らかかったとしか言い様が無い。

 その後のことは、思い出したくない。神奈子が俺の後ろでずっと泣いていて、謝るタイミングが見つからなかった。
 家に帰ると母親に叱られた。神奈子の保護者が遠くから迎えに来ていたらしい。俺は母親とともに玄関から見送ったが少女は、後ろ姿が見えなくなるまで、うつむいて終始無言だったのを覚えている。
 そえrからの俺は、空っぽだ。神奈子は遠くへ去り、ヒデとは二度と会話することも無くなった。
 ――つまり俺は、愛する妹と親友を同時に失ってしまった。

第一章 会って一秒、即えっち!

「まーったくよぉ! なんで俺がこんなことしなくちゃならねーわけ!?」
 ホコリまみれの部屋を、金髪の少年が掃除していた。少年の名は佐々木浩一(ささきこういち)。この春から晴れて高校一年生だ。両親は仕事で忙しく、普段はめったに帰ってこない。それを良いことに、浩一はつかの間の自由を満喫した。
 学校へ行かず深夜までゲームをしたり、家に帰らず夜の街を散策したりもした。どこへ行っても一人だった。俺は一人で何でもできるのだ。
 だが、その自由も永くは続かない。
 ――約2時間前。久しぶりにかかってきた母親からの電話は、こうだ。
『明日、帰ってくるから。あの使ってない部屋の掃除しといて。じゃヨロシク!』
 ガチャン――会話終了。
「俺を奴隷か何かと勘違いしてんじゃねーのか!? あのババァは」
 怒りに任せて壁や床をすべて磨き上げる。壁に立てかけてある姿見の鏡も磨きあげた。すると浩一の目に、怒りに歪むあまりにも強烈な自分自身の顔が映りこみ、思わず皮肉っぽい笑みがこぼれた。
「うはっ、こいつぁひでぇ」

 最初に全体像。鏡の中の自分は、けっしてスタイルが悪いわけではない。175センチのヤセ型だ。どこにでもいる普通の少年と言えた。だが問題はそこではない。
 きつくつり上がった目、小さな黒目がギョロギョロと動く三白眼。ただでさえオソロシゲな目元には慢性的な睡眠不足から黒いクマができている。笑顔の口元からは鋭く尖った歯が覗いていた。
「問題は髪型か?」
 前髪を下ろしてみても眼つきの怖さは変わらなかった。むしろ目を細めるので逆に迫力が出る。あがけばあがくほど深みにはまる悪循環。

 ――余談だが、浩一の髪は染めた金髪である。根元から先っちょまでサラッサラの金髪である。その金色の髪の一本一本から、「俺は普通の人間じゃないですYO!」オーラが溢れ出していた。(もっとも黒髪にしていても「ヤダ。あの人なんかネクラっぽい、近寄りがたいわ」的なオーラが染み出してくるのが悲しいところである。)
 金髪に染めたのは失敗だったか? でも昔からの憧れだったし、誰に嫌われても、ま、別に構うこたあねーか……なんて前髪をいじりながら思いつつ。
「って顔なんか眺めてる場合じゃねー! 掃除だ! 日が暮れちまわぁ!!!」
 浩一が大急ぎで掃除した結果、部屋は綺麗サッパリになった。衣装箪笥と姿見があるだけのシンプルな部屋だ。
「気に入らねーもんは全部捨ててやったぜ。ははは、ザマミロ、ババァ!」
 浩一は床に寝そべって、天井を見つめた。顔に当たる西日が眩しい。それを手で遮りながら、浩一は考える。「このまま誰にも邪魔されずこの綺麗な空間を独り占めできたら良いのに」
 小さな窓から夜を告げる涼しげな風が吹いてきて、掃除で疲れた身体に心地よかった。
 自分だけの力で作り上げた場所。確かな達成感。満ちてくる充足感。そういったものが一気に感じられて、浩一はなぜだかとても嬉しくなり、そのまま部屋の端から端までを転がってみることにした。
「うひょひょーい!!」
 独りでいるとついテンションが上がってはしゃいでしまうのがこの男、浩一のサガである。顔の怖い金髪オニーチャンが笑顔で床を這いずっているというのは、なかなかにシュールな光景だが、誰も家にいないのだから気にすることもない。
 ドガァン!! その刹那、肩が箪笥に激突。次に頭に小さな箱が落ちてきて、中の何かが割れた音がした。
「やっべ、掃除したばっかなのによ!」
 痛めた額を撫でつつ、浩一は箱を開けた。
「あん、なんだこりゃ?」
 箱の中では写真立てが入っていた。割れたガラスや枠はあとで捨てるとして、浩一は肝心の写真を拾い上げた。
 映っているのは不思議な雰囲気の漂う美少女。雪のような真っ白な肌に、優しそうなハの字眉毛とパッチリ二重の目。その双眸は、右はアンバー、左はグリーンのオッドアイ(虹彩異色症)。そして、腰のあたりまで長くまっすぐ伸びた髪は――現実世界では信じがたいことだが――鮮やかなピンク色だったのだ!

「……神奈子」
 浩一の口から自然と言葉が漏れた。俺はこの少女に遠い昔に会ったことがある。浩一は少し過去に思いを馳せた。

  *・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜―思い出―*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜

「お兄ちゃん、あそぼ!」キュンッ
「いや、わりぃ。ヒデと約束してるから」
「わ、わかった。なんかゴメンね……」

「お兄ちゃん、大好き!」キラキラッ
「ああ、そう。ちょっとヒデの家に行ってくるから」
「あっ、うん。」(´・ω・`)

「あたし、お兄ちゃんと結婚するの!」キャピキャピ
「いらん」
「お、怒らないでよぉ」(泣)
  *・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜―思い出終了―*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜

 あぁ、そういえばやたらモテてたな、と浩一は改めて思った。もっともあの頃は男友達と遊ぶのが楽しくて、ピンク髪の妹なんか全然気にしてなかったな。今にして思えば、変な色の女の子が身内だと悟られるのが恥ずかしくて意識的にあえて冷たくしていたのかも知れない。
「もったいないことしたよなぁ……」
 あの時にもし、好きだと伝えられていたら――いや、違う。伝えたんだ。俺は気持ちを伝えた。だけど、不器用なりに正直な気持ちを伝えたら、俺の周りには誰もいなくなってしまった。
「ちっ、つまんねーこと思い出しちまったぜ。気分転換して寝よう」

   □■□

 窓の外はすっかり暗くなりどこからか懐かしいメロディーが流れてくる。浩一は照明を点けると部屋の扉を閉め、厳しい表情でポケットから『神奈子』の写真を取り出した。
「神奈子」
 浩一は写真を見つめながら、ズボン(パンツ)を脱ぎ、自らの剛直した欲棒を優しく右手で撫でた。
「かな子!かなさん!かなちゃん!可愛いよ可愛いよ!!!」
 写真に向かって語りかけながら浩一は無心で自身の男の象徴を擦り上げた。シュッシュッ。手馴れた様子でリズミカルに扱く。
 最近気づいたことであるが、オ○ニーする時に声に出して叫ぶと興奮度がグッと上がるようだ。シュッシュッ! リズミカルリズミカル。激しく脈動する「ソレ」は間もなく絶頂を迎える――!?
「ああっ、かな子ォ! いいよ、すごく良い! あっああっああああっ……かな子、好きだッ!!」
「ホンマにぃ?」
「あぁぅ!?」ドピュ
 ふいに話しかけられたことで思わずのけぞってしまう。やばい。コントロールが乱れる。股間から発射されたゲル状の液体は浩一の額を高速でかすめると、背後の人間の顔を正確に撃ち抜く。
「うわっ、なんか飛んできよった! なんや、なんやこれ!!!??? 取って!!」
「誰だテメェ! ここでナニしてやがる!?」
 冷静になって考えればナニしてるのは俺だな。うん。

「うぎー、取って! 取って! 変な匂いしよる! あふぅん、あひぃん!」
 絶頂の甘美な感覚から醒めた浩一の目に「丸々と太った背の低い女」がのたうち回っているのが見えた。どうやら顔に『浩一の汁』がかかったようで、手探りでめちゃくちゃな動きをしている。その動きはまるで閃光弾を食らった大型モンスターだ。
 何だコイツ。どこから入ってきやがった。聞きたいことはたくさんあったが、その前に。
 浩一はティッシュを何枚か乱暴に掴むとできるだけ優しい声色で目の前の「知らない女」に話しかけた。
「お前さぁ、勝手に他人の家に上がってくるんじゃねぇよ。俺は一切悪くねーからな」
 浩一はしっかり弁解しつつも彼女の顔を拭いてあげた。彼女は赤いニット帽を被って、上はニットカーディガンを羽織り、下は淡い灰色のオーバーオールを履いている。立ち上がって見たところ、浩一よりもだいぶ背の低い女だ。もしかしたら体重は同等以上かも知れない。
 年齢は見た目からはちょっとわからない。中年のおばさんにも見えるし場合によっては小学校高学年にも見えた。
 そもそも人間なのだろうか? じーっと見ていると人間では無い別のおそろしい何かに見えてきて浩一は思わず目を伏せた。
「あっ、あの、キミは佐々木浩一さん……で間違いないやん?」
 女は垂れ目気味の細い目をさらに細めて微笑みながら、独特のアクセントで話した。関西弁だ。しかし微妙にインチキ臭い発音だった。
「そうだけど。だったら、なんだよ」
 浩一はぶっきらぼうに返す。そもそも他人がなんで俺の部屋にいるのだ。そしてお楽しみを邪魔されなくちゃならないのだ。浩一はイライラしてきた。
「あっ、あのですね。そのぉ……」
 女はなんだか口ごもっている。浩一は殴ってやろうかと思ったが、ギリギリで耐えた。たとえ知らない無礼な人間であっても女を殴りたくはなかった。
「言いたいことあんなら言えよ。そして出てけ」
 しかし女の口から出た言葉は意外なものだった。

「あの……あのあのっ! 何かよくわかんないんですけど! 多分あなたのことが好きです! えっちなことして下さい!!」
「はぁ?」
 ガシィ!
 女は浩一の肩を掴むとグイグイと押してきた。押し倒してキスでもするつもりだろうか? ってゆうかデブの力ってスゲーのな。
「私は浩一さんの恋人になりたいんです!」
「意味分かんねーから! やめろっつーの」
 浩一は後ろを振り向いて確認した。鏡に自分の動揺した顔が映っている。もう逃げ場は無い。
「だって、一緒に遊んだら友達! えっちなことしたら恋人でしょ!? そこに愛なんてあっても無くても関係ないもんねっ!?」
「うるせえっっ!! いい加減にしろ!!」
 浩一はデブ女の首ねっこを抱え、そのまま身体をまっすぐ高く持ち上げ、勢いをつけて後ろに叩きつけた。
「ギャー!!! ウギャギャー!!!」
 女は数秒ほどもんどり打って跳ね回っていたがすぐにまた立ち上がると、掴みかかろうと襲ってきた。
「テメッ、こっち来んじゃねー」
 浩一は無数の拳を女に叩き込んだが、それらは総て肉に吸収されてしまった。
「ファ~ハハハ! 我が身体は拳法殺し! 貴様の拳も経絡秘孔にとどくまでにすべて肉厚に吸収されてしまうのだ」ブニュブニュ
「ならば・・・ならば・・・肉体言語にて語るまで!!!」
 浩一は女の頭を抱え込み、両腕の力を使って締上げる! HEADLOCK(ヘッドロック)だ!
「ウギャギャー! 痛い痛い痛い!!」
「ギブ? ギブ?」
「ギブ! すんません! ギブっす!」
「ならば良し!」

   □■□

 浩一は女を解放し、床に座らせた。女は最初こそ抵抗していたが、浩一がひと睨みすると小さく「ぁぅ」とだけ呟き、ピシッと正座したのだ。
「あのさぁ……」
 浩一は怒りを内心全力で押さえ込みつつできるだけ穏やかに尋ねた。
「なんで俺が怒ってるのかお前には分かる?」
「はい……ホントすみませんでした。私が女だということで、あなた様が手加減されているのをいい事に、調子に乗っちゃってすみませんでした」
「いや、そっちじゃねーんだけどな」
 勝手に家に上がってきて、いきなり力づくで襲ってくる。性別を逆にして考えると、事態の異常さや恐ろしさが分かってもらえると、思う。
 だが、急にしおらしくなった女を前に、怒りが収まりつつあった浩一は「やれやれ、どうしたもんかな……」と、後頭部を掻いた。

 警察に突き出す程でもないし、そのまま外にほっぽり出すわけにもいかない。
 そもそも、なんで俺んちに上がり込んで、関係を迫ったのか? 理由くらいきいても、まぁいいだろう。
「まぁ色々と聞きたいことはあるんだが、なんであんなことをしようと思ったの? バカなの?」
「だって、男の人ってえっちのことしか考えてないじゃないですか。私だってちょっとおかしいと思ったけれど、浩一さんや読者さんが喜ぶと思って……」
「どんな男だって他にも色々考えてるっツーの! そもそも俺、お前のこと知らねーしよォ!?」
「エーッ、浩一さん、私のこと誰だか知らないであんなことをしたんですか? それはアカンで! ワシャまだええけんど他の人ならポリスに捕まるかも知れんよ?」
「捕まるのはオメーのほうだろが……。そもそもお前誰なんだよ?」
「フッフッフ……」
 女はおもむろにニット帽を脱ぐと頭を振りながら髪をバサっと広げてみせた。
「あっ、お前、その髪の毛!」
「わかりましたか? 私、あなたの妹で幼馴染みの矢内神奈子(やないかなこ)です! お久しぶりやんな? 浩一さん」
 浩一はかつての写真と見比べてみた。色々とおかしいだろ……? こんな可愛い天使がどうやったらあんな醜悪な豚になるのだろうか?
「目だって色違いやねんぞ! 見てみ! 見てみ!」
「うるせーよデブス! キモいからそんなの見せんじゃねー!」
 神奈子は細い目をせいいっぱい指で開いてアピールしたが、浩一はその腕を払いのけ、それを掴んだ。
「ありえねーだろ!? ちょっとこっち来いオラ!」
「いやーんえっち!」
 浩一は自称・神奈子の襟首を掴み、鏡の前に立たせた。
「いいか? この写真を見ろ。これが神奈子だ」
「あー、懐かしい! これ昔の写真ですね。まだ大切に持っててくれたんやね」
 神奈子は嬉しそうに微笑んだが、浩一は昔話がしたいわけではない。
「そんで、こっちがお前だ」
 鏡に映った神奈子は、丸々と太っていており顔は力士や魔人ブウのよう。背の低さも相まって、浩一には一般的な人間とは違う別の生物に見えた。
「うわ、なんやコイツ。えっらいブタやなぁ!」
「オメーだよ! ブタァ!」
 鋭いロー(キック)が神奈子のふくらはぎを捉える。
「ギャー! 痛いってば」

   □■□

「あ、そうだ。浩一さんの高校……えと、セントクロノス学園でしたっけ? 私もそこに通うことになりました。」
 神奈子は布団を敷きながら、ご機嫌で言った。
「ふーん。ってここに泊まんのかよ!」
「オッス! 三年間お世話になります! よろしくアニキ!」
「ああん? 誰がアニキだ。ぶち転がすぞコラ」
「まったまたー。男の人ってこういうのお好きなんでしょう?」
 浩一無言のリストロック!(手首固め)
「痛い痛い痛い! わかったワシが悪かったけん。許してつかぁーさい!!」
 浩一は手首を開放すると、神奈子を布団で簀巻きにして、掃除したての部屋に放り込んだ。
「……とまぁ、冗談はこのへんにして、これから短い間ですがよろしくお願いします」
 神奈子は人間離れした動きでスルリと布団巻きから脱出すると、三つ指をついて深々と座礼をした。
「ったく、やれやれだぜ」
 かくして、二人の共同生活は始まったのだった。

「そういや、ババアはどうしたんだよ? 帰ってくるんじゃねーの?」
「そこはまぁ、もうじき帰ってくるんじゃないですか? つまりは作者の都合次第です」
「は? 何言ってんのか意味がよくわかんねー」

 憧れの幼馴染みに数年ぶりに再会したら、なんか残念な感じになっていた。
 よっしゃ、これで間違いなく大ヒット間違いなしである。by作者

     

 作家志望が集まるワナビスレ
1 名前:名も無き作家志望[] ID:******
 ワナビたちのスレです

100 自分:名も無き作家志望[] ID:raisuke
 二話目って何書いていいのかワカンナイ(´・_・`)
 とりあえず最終目的とライバルキャラみたいなの出しとけばいいのかな?
 人気が出そうなライバルってどんな感じだろ? ちなみにラブコメ
 メインヒロインは関西弁のデブス

101 名前:名も無き作家志望[] ID:******
 >>100
 ツンデレお嬢様貧乳ロリ眼鏡委員長実は隠れオタク
 好きなのを選べ

102 名前:名も無き作家志望[] ID:******
 デブスとか誰得だよ
 そもそもブサイクははじめから出てこない方が良いに決まってるだろ……

103 自分:名も無き作家志望[] ID:raisuke
 >>102
 はい、その通りです。生まれてきてスンマセン……
 今、関西弁のデブが人気あるって噂で聞いて(汗)
 それじゃメインヒロインは、本当はブスでは無かったっと ((φ(..。)カキカキ
 >>101
その中から人気出そうなのを貰うよ
 とりあえずエロくすればいいんだろ(笑)

104 名前:名も無き作家志望[] ID:******
 ただエロければいいわけじゃなくってだな
 恥じらいとか羞恥心も大事だとオジサンは思うんだよ
 あとは、ギャップってのもあるね
 「気弱で大人しそうな女の子が実は毒舌」とか
 「なんでもできそうな完璧超人がヘタ過ぎて激マズな料理作ったり」

105 自分:名も無き作家志望[] ID:raisuke
 >>104
 ありがとうございます
 「恥じらい」と「ギャップ」っすね。ちょろいちょろい
 でも主人公が料理下手くそな設定なんですよ。困ったな(´・_・`)

   □■□

 登場人物紹介
 佐々木 浩一:この作品の主人公。身に降りかかる不幸に負けないように頑張る
 「普通の」高校生

 矢内 神奈子:メインヒロイン。ピンク髪でオッドアイのデブ。どうやらブサイクでは無いようだ。

 レストラン店長:当て馬(サブヒロイン)。ツンデレお嬢様貧乳ロリ眼鏡委員長実は隠れオタク。

   □■□

 皆さん、おはようございます! おなじみ皆の恋人、矢内神奈子です! 今日は世にも不思議な生物「はぐれ金髪ヤンキー」の生態に迫ってみようと思います。
 おおっ、はぐれ金髪ヤンキーの部屋は常に綺麗に片付いているようですね。ポスターが水着のグラビアなのも昭和っぽくて神奈子的に高ポイントです。あそこでのんきに眠っているのが今回のターゲットはぐれ金髪ヤンキーです。
 しっ、静かに! はぐれ金髪ヤンキーは非常に獰猛な生物です。奴のテリトリーに入ったが最期! 強靭な腕力によってバラバラに引き裂かれて鋭く発達した牙で頭から食われてしまうかも知れません。 ハァハァ……私、自分で言ってて興奮して参りました///
 おーっ、今なら奴の寝床に忍び込めそうです。ぐっすり眠ってますよ!
 どれどれエロ本は何冊持ってるのでしょう? あるいはパソコンの類が見つかれば良いのですが……。
 これは!? ――っと昔の私の写真ですねぇ。おやおや、やっぱり私のことが好きなんじゃないですか。なのに彼ったら顔を合わせると「死ね!」「帰れ!」「デブス!」しか言わないんですよ。素直じゃないですよね。私は今も昔も浩一さんのことが大好きだっていうのに……。
「オイ、てめこら! 俺の部屋で何してんだ!?」
「ちゃうねん! ちゃうねんこれは! 別にエロ本とか漁ってた訳やないねん! ちょ、ちょっとオシッコ行きたくなって……(震え声)」
 響く鈍い音。そして遅れてやってくる叫び声。それが私が佐々木家で初めて迎える朝でした。

第二章 佐々木浩一は一人で暮らしたい

「ほらよ、朝飯だ。」
 浩一は、神奈子に向かって皿、そして上に乗った"何か"を差し出した。
「えっ、朝ごはんでしたら私が作りましたのに」
 神奈子は不満そうに皿を受け取った。神奈子の人生の中で、見たことのない黒い食べ物(?)が乗っていた。
「俺は他人の作ったものは食いたくねー。それも、信用してない奴のなら尚更だ」
「はぁ、そういうものですか」
 浩一は表情一つ変えずにパクパクと食べる。目はテレビのニュースに釘付けだ。
「……あまり美味しくないですね」
 黒焦げになった何かは、炭の味と生の身の感触が混ざり合って、一言で表現するとするならば不快だった。
「これは……伝説のダークマターでしょうか?」
 神奈子は黒焦げになったソレを色んな角度から眺めては「ほー」とか「へぇー」と、感想を漏らす。それを見て浩一は「食えりゃ良いんだよ、食えりゃ」とでも言いたげに睨んだ。
 ひとしきり観察を終え満足した神奈子はダークマターをガリガリと噛み砕き飲み込む。が、よほど苦かったらしく眉間の辺りを抑えて約5秒間ほど悶絶した。
「マッズい! デラマッズイッ! こりゃ私が作ったほうが絶対美味しいッスよ兄貴!」
「あーそう! 別に嫌なら食わなくていーんだよ!」
 浩一は皿を掴んで奪い取ろうとする。だが、神奈子も離そうとしない。両者はしばらくテーブルを挟んでにらみ合ったが、浩一は大人しく皿の主導権を渡した。
「……食うんなら残さず食えよ」
「はい!」
 神奈子はキリッと敬礼すると黒焦げのダークマターを箸でつまみ上げる。
「わ、わぁ~! 醜いブタのワシにふさわしいゴミみたいな朝飯や~! ありがてぇありがてぇ、ブヒヒヒヒヒヒイイイイイ!」
 神奈子は卑屈な笑みをこぼし、涙を流しながら食べる。せめて褒めるか貶すかどっちかにしろよ。やれやれ、浩一は溜め息をついた。

「俺ァ今日はこれから出かけてくるからよ」
「はぁ、せっかくの日曜なのにですか?」
「テメーは大人しく留守番してろよ。変なことしたらマジでぶっ殺すぞ!」
 浩一は外出の準備をして玄関でそう言った。「んー」神奈子は唇に手を当ててしばし考え込んでいたが、こんな質問をした。
「では、これから恋人とデートですか?」

 なんで、そうなった。

 意味がわかんねー。浩一は頭を抱えた。なぜこの女はこんなにも恋愛脳なのだろうか。
「もうすでにお付き合いされている恋人がいるのなら、私と付き合えなくても合点がいくのですが……」
 何を考えているんだ? このバカ女は? 脳にスイーツでも詰まってんのか? 浩一は怒りを抑えて答える。
「そんなんじゃねーよ、バイトだバイト。恋人とかいねぇ。欲しいとも思わねぇ」
「じゃあ、私と付き合いましょうよ。えっちなことしましょう! Let's えっち!」
「ヤダ」
 浩一はコンマ数秒で断った。神奈子は泣きそうになった。
「なんでや! 私がブサイクだからですか? それとも変な髪の毛してて変な目の色だからですか!?」
 神奈子は浩一に詰め寄った。浩一は答えに迷ってしまった。髪や瞳の色は嫌いではない。――むしろ好みだ。だって俺は、昔の神奈子に憧れて金髪に染めたのだから。
 ではブサイクだから嫌なのか? これも違う気がした。太ってはいるが顔のパーツは変わっていない。浩一はなんだか神奈子のことを……あんまりブサイクだブタだといって殴るのも可哀想に思えてきた。
「いや、良く見たら……髪の色とか瞳とかスゲー綺麗じゃん……それに顔もブサイクではないよ。痩せたら美人になるんじゃねーの?」
 浩一は、ついポロっと本音を言ってしまった。普段他人を褒めるのが苦手な浩一だが、素直に正直に褒められたと思う。心臓が早鐘を打ち、全身が熱くなっているのが自分でもわかった。顔とか耳とか紅くなってたら嫌だな。

 神奈子はどんな反応をするだろう。少なくとも、俺のこと嫌っているふうではなさそうだから、素直に喜んでくれると嬉しいんだが。
「んん? 何? よく聞こえなかったですけど」
 だが、神奈子はとぼけた顔で耳を差し出してきた。浩一は内心ホッとするとともに怒りが湧いてきた。もう一度、今度は少しだけ、声を大きく、はっきりと。
「だ・か・ら! 痩せたら美人だって言ってるんだよ! お前は!」
「え~~~~~~~っ? 何なにナニ? よぉ聞こえんて~~」
「お前は綺麗だって言ってんの!!!」
「もっと大きな声で!!!!」
「美人だよ!!!!!」
「ぜんっぜん伝わってこない! もっと高らかに、サンハイ!!!!!!」
「世界一可愛いよ!!!!!!!!」
「もっと!!!!!!!!!!!!!!!!!! 世界中に聞こえるように!!!!!!!!!!!!!!!」

 浩一は神奈子の耳を掴んで穴を拡張した。そして、その状態で深呼吸か~ら~の~
「うるせぇ!!ブス!!勝手にしろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」である。

「ウギギー! やかましいねん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 両者ともにボロボロである。近所の皆さん、休日の朝からすみません……。
 神奈子は片耳を塞いだまま、浩一を恨めしげに見つめ、勢いよく指差した。
「ほ、ほれ見ィ! やっぱりわしゃぁブサイクやないか!!! 変な色の髪のせいで! 左右の目の違いのせいで! 不細工な顔のせいで! どこに行っても虐められるし初恋の人にもフラれるし! マジで生きる価値無いからもう死ぬしかないな!」
「あーあ!」
「あーあ!!」
「あーあ!!!」

 床に伏したまま神奈子は泣き出した。浩一には何が何だかわからなくなった。
「お、お前アレだな……。顔よりもよっぽど性格に問題あるな!」
「そんなこと無いもーん! 容姿以外は完璧ですもーーん!」
「あぁそう。俺バイトの時間だから。勝手に喚いてろよクズが!」
 少年時代の「初恋の女の子」が、残念なんて生ぬるい言葉じゃ形容できないほどの救いようのないダメ人間になったのを再確認しつつ、浩一はバイト先のレストランに向かった。

   □■□

 埼玉県のほぼ中央。クロノス市の片隅にそのレストランはあった。
 レンガ造りの小さな店舗で、屋根は落ち着いた緑色。ファンシーなドアの前には小さな手描き看板。日替わりメニューが丁寧な女の子の可愛らしい文字とイラストで描かれている。浩一が一週間前からバイトし始めた『創作レストラン&カフェ エクレール』はそんな店だ。
「うーっす」カランカラン
「遅かったわね! 1分35秒の遅刻よ」
 店の奥で苛立った女性の声が聞こえた。店長が特製スープの仕込みをしているのだろう。店内から獣の濃厚な異臭が店に立ち込めて浩一は眉をしかめた。
 何度通っても、この匂いは好きになれない。だが、やめるのも気が引けた。店長は浩一を外見で嫌わず雇い入れてくれた数少ない人なのだ。
 浩一は従業員ロッカーでエプロン姿に着替えるとカウンターやテーブルを拭き始める。それにより店内のすべてが柔らかい照明を受けて輝き出す。なにより、この消毒液の匂いが好きだ。もしかしたら俺は、自分で思っている以上に掃除が好きなのかもしれない、なんて思いながら。

 ふとした瞬間にベルが鳴った。客か、珍しいこともあるものだ、と浩一は思った。
「あっ、すんません。まだ準備中なんですよ」
「ど~ぞ~、お構いなく~うふふふふふ」
「ぬぅん!」
 浩一は力ずくでドアを押し戻すと、ガチャガチャと鍵をかけた。それは――聞き覚えのある声が聞こえたからで、さらに言えば不吉なピンクの丸いシルエットが一瞬、確実に見えたからでもある。
「ちょ、なんでやの!? 開けて、あーけーて!」
「まだ準備中だっつってんだろが! だが、たとえ開店してもペットは入れん!」
「ギャワーン、ひどいワン!」
「お前はブタだろうが!」
 二人はドアを挟んで罵り合った。このまま二人は平行線なのだろうか?

「もう準備は終わりました。入れて差し上げなさい」
 凛と張り詰めた声がした。女性らしく優しい声色の中に理知的な厳しさが感じられる声だった。
「て、店長……でもコイツは……」
「何か問題でもあるの?」
「……」
 でも、コイツは――なんだろう? 浩一は色々考えたが、どれも入店を断る理由にはならなかった。せいぜいクラスメイトがバイト先に来てちょっと恥ずかしい、とかその程度の感情だ。
「食ったらすぐ帰れよ」
「はーい!」
 神奈子は元気よく返事をすると、メニューを眺めながら瞳をキラキラさせた。浩一は、腕組みをしてそれを眺める。
「えとね、じゃあこの『春風が運んでくれたごちそう。シェフのきまぐれほにゃらら何とかかんとかナマムギナマゴメナマタマゴっっっ』……をくらはい!」
「うぃーっす、店長! 春風一丁!」
「はーい、春風一丁!!」

   □■□
 料理が来るまでのあいだ、二人はテーブルを挟んで雑談した。浩一は嫌だったが、お構いなしに神奈子が質問してくる。
「しかしまぁアレですわね。キミがマジメに働いてるなんて意外だよね。料理好きなん? どーせ下手なくせに! ヒャッヒャ」
「うるせぇな。理由があんだよ。良いだろ別に。もう高校生なんだし」
「ふ~ん?」
 神奈子は椅子に斜めに座り背もたれに手をかけ、けだるそうに足を組んだ。お前は映画監督か。
「でもなー。レストランはキツいなぁ。仕送りがしょぼいからあまりワシ来れんよ?」
 神奈子は大げさなアクションで言った。
「それもこれも稼ぎの悪い親が全部悪いねんけどな!」
 神奈子はヒャヒャヒャと嗤った。浩一は今まで黙って聞いていたが、反論した。――いや、してしまったというべきか。

「自分の小遣いくらい自分で稼げ。一人で生きてけなきゃ生きる価値ねーだろ」

 そうだ、一人で生きてけなきゃ、自分で自分を支えられないような奴に存在価値などない。それが――浩一が16年間、誰にも頼らずに生きてきて分かったことだ。なぜなら、誰も自分を救ってはくれないのだから。
「……っ」
「バ、バカタレ! お前の些細な一言でなぁ、傷つく人がようけおるねんぞ! 謝罪しいや!」
 ※作者及び、この作品にはニート・ごくつぶし等を差別・侮辱する意図はありません。安心して、ひきつづきニートタイムをお楽しみください。

 店の奥でリズミカルに野菜が刻まれる。浩一は、いつでも料理を運べるように座り直した。
「嫌な仕事なんかしなくていいんよ! 好きなこと、夢中になれることがあれば、それが存在価値やと、ワシは思うで」
「まぁ一人でマジメに頑張ってる人も立派やけどな。スゴイ」
「やめろ、俺にとっちゃそれが普通なんだ。今度スゴイだの頑張ってるだの抜かすとシメ殺すぞ」
「その発言カッコイイ! すごい立派なこころがけ! 浩一さんSUGEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」
「ハイ、処刑決定」
「うぎゃおおおおおおおおおおう!!」

 ――それにしても。
 コイツはさっきからグイグイ来るな。こんなのと高校卒業まで暮らすのか……。浩一は早くも先が思いやられるのであった。
「キミは今、好きな女の子とかおらんの?」
「いねーよ」
「ワシ知ってるねんぞ! 昔はおったやろ? 強引にキスして結婚まで申し込んだ女の子が!!」
 それを今持ち出すのか。
「だ」浩一が反論しようとした瞬間――その時、厨房からありえないような轟音が響いて二人は椅子からひっくり返った。
「なっ、今の何や? なんか店が揺れたんやけど」
「ハハ、またかよ……」浩一は慣れっこといった感じで嘆息 (←作者、最近これ覚えた。これ使っとけば頭良さそうに見える) した。

「とにかくなぁワシが言いたいのは」
 神奈子はテーブルに這い上りつつ、まだ話を続けるのだった。恐るべき話の長さである。
「自力で生活できなくたって……皆に嫌われたって……我を忘れるほど夢中になれるものがあれば、そういう人は立派だとカナちゃんは思うのです」
「え? なんか言ったか?」
 奥から大皿を持った浩一が現れた。
「お、料理できたんか? なんでもないやで~」
「じゃあ、それ食ったら帰れよ。残しても良いから」
 浩一は吐き捨てるように言って、厨房に引っ込んだ。

 アレを食べれば神奈子も黙るだろう。おそらく二度とここに来ることもない。
 再び、店で掃除だけして家に帰る生活だ。本当は接客業なんてしたくもない。
「あー、やれやれ。早く終わらねーかな……」
 浩一は嘆息した。嘆息した。嘆息した。

 後半へ続きます。by作者

     

 ○前回の宿題
  ギャップと恥じらい
  ツンデレお嬢様貧乳ロリ眼鏡委員長実は隠れオタク

   □■□

   第三章 料理が下手な女って何考えてるの? レシピ通り作れば失敗するわけないだろ

「……ええと、シェフを呼んできてもらえるかしら?」
 神奈子はナプキンで口を拭いながら不機嫌そうに言った。
「どした」
 浩一はいぶかしげに皿を見た。それは旬の野菜や肉の盛り合わせで、可愛らしい飾りつけがされていて、とても食欲をそそる。だが、その一見美味しそうな「春風の(以下略)」はほとんど手がつけられていないのだ。
「シェフを呼べっちゅーたんや! 何この料理は!? 嫌がらせか? ワシになんぞ恨みでもあるんか!?」
 神奈子は『春風』をフォークを乱暴に刺すと振り回した。その切っ先はまっさきに浩一に向けられる。
「うわ、やめろバカ!」
「食べてみて! 食べてみて! クッソマズイから! 作った人間の人格を疑うマズさだから!」
 浩一はボクシングのスウェイのように華麗にかわした。なおも続くしつこいフォークの連撃をいともたやすく受け流す。
「テメ、とにかく店長の悪口だけはやめろ! 影山さんに吊るされるぞ! ……っ!」
 浩一の目線が天井に向く。大げさなアクションで制止を促す、その顔は青ざめていた。
「カナ子、逃げたほうがいい。振り向かずに逃げろ」
「えっ、なにが始まるんです?」
 神奈子から思わず間抜けな声が出た。

 目の前に、黒く細長いものがぶら下がってきた。ほどなくして、それが黒いスーツを着た人間の腕であることに神奈子は気づく。
「お嬢様の悪口は許さん!」
 腕は神奈子の首根っこを掴み、少しづつ持ち上げ始めた。
「ひゃあ、何!? 今、天井から手が伸びてきてカナちゃんの首を掴んだよ!?」
「やだよ! カナちゃん吊るし首になっちゃう! そんなの、や……だ……」
 神奈子は激しくもがいていたが、そのうち動かなくなった。

「影山、やめなさい」
 凛々しい女性の声が店内に響くと、黒い腕の主は神奈子を解放した。
 床に落下した神奈子は素早く立ち上がる。
「し、死ぬかと思ったわヴォケ!!」
 神奈子は、憎しみのこもった視線で腕の主を睨む。その瞳に映るのは、黒いスーツを着て黒いサングラスをかけた長身ナイスバディの美女だ。彼女は何故か重力が逆さまに働いたように、天井に直立していた。
「お前か! あの変な料理を作ったのは! この黒ずくめ! SPかエージェントみたいな格好しよってからに!」
 だが、神奈子の非難の声に別の声が反応する。
「彼女は忍者の子孫で私のボディーガード。私、姫宮がこの店の責任者です」
 神奈子は間近で声がしたことに驚く。
「なっ……ななな!」
 周囲をあわてて警戒するが誰も見当たらないのであった。
「どこや、どこにおるんや」
 天井に向かって叫ぶ。だが、黒服のボディーガードが完全な無表情で見つめているだけだった。
 神奈子の耳に店長と浩一のひそひそ声が聞こえてきた。
「あのさ……佐々木。この子、ワザとやってるの?」
「まぁ、そうっすね。コイツそういう所があるんで」
「ふぅーん」
 神奈子は困ってしまった。確かにワザと他人に嫌がらせしたり、おちょくる時はある。だが、今回は姿が本当に見えないのだ。
「ちょ、ちょい待ち! ホンマにわからんのよ。姿が見えんのよ……」
「あっそう、ここにいるわよ!」
 鋭いパンチが神奈子の脇腹を打った。「おぶぅ!」神奈子が見下ろすと、確かにいた。自身の胸あたりの高さに小さな女の子がいた。
「え? あ? いっ、いつの間に!」
「ずっとここにいたわよ」
 少女は腰まで伸ばした緑なす美しい黒髪を三つ編みにしていて、フレームの無いメガネをかけていた。(イラストは緑髪でオナシャス)
 身長は130センチくらいだろうか? ロリだが、鋭い目つきと不機嫌そうなへの字口がその可愛らしい容姿を台無しにしているのだった。
「影山、引っ込んでいなさい」
「ハッ」
 美少女店長の一言で影山の姿は一瞬にして消えた。それはまるで漫画で見た姫様と付き従う忍者のようだ。

   □■□

「えーっと、そう。これ食べてみてくださいよ。この春風と呼ばれたナニカ」
 店長と呼ばれた少女は、平気な顔で口に運ぶ。
「別に、なんとも思わないわ」
「えーっ嘘! これ不味いやん」
 神奈子はしかめっ面で文句を言った。店長はそれを無視するかのように、春風を黙々と食べ続ける。
「普通」
「そんな訳ない! というより、そんな無理して食べんでもええんやで」
「別に……なんとも、無いんだから」
 店長の頬から、涙がこぼれてきてテーブルクロスを濡らした。それを見た神奈子は驚いて、駆け寄った。
「どうしたん? ほれ、マズい料理を無理して食べるから!」
「……マズくなんか無いもん」
 店長はかたくなに料理の失敗を認めようとしない。「どれ」浩一は思わず気になって料理を口に運んでみたが「おべぇえええ!」気分が悪くなってトイレで吐いた。
「なんじゃこりゃ!? いつもと全然違うじゃねーか? おい店長、ちゃんと味見したのかよ!」
「う、うわああああああああああん!」
 店長は子供のように泣き出してしまった。
「したわよ! でも、わかんないのよバカ! 何が美味しくって何がマズいのか! わかんないのよ!」

   □■□

 何が美味しいのか分からない。彼女は静かにそう告げた。
 例えばの話だが、目が見えないのに絵を描いたり、音が聞こえないのに曲を演奏しようとしたら人は不安になるだろう。彼女はたった一人でそんな不安と戦ってきたのだ。
「ひえ~っ! 自分でおいしいと思ってないのに、人に食べさせてお金取るんや! ワシやったら恥ずかしくてそんな商売できひんで!」
「ううう」
「あー恥ずかしい恥ずかしい! なぁ浩一さんもそう思うやろ?」
 神奈子が勝ち誇ったような顔で店長を責め続けていた。その顔は恍惚として、ほんのりと上気しているのが浩一にもわかった。
「うっせーな、いちいち俺に振るなよブス」
「ひーひひひ。楽しいねぇ! こんなに楽しいのカナちゃん久々!」

 店長は二人のやりとりをじーっと見ていたが、質問をしてみることにした。
「佐々木浩一、あと隣のピンクの人。アンタ達、ずいぶん親しげだけど、どういう関係なの?」
 店長の質問にまっさきに神奈子が答えた。
「はい! 幼馴染みで恋人です! 結婚を前提にお付き合いしてます!」
「嘘つけ! コイツはウチで飼ってるただのペットだ!」
「嘘じゃないです! 子供の頃、一ヶ月くらい一緒に過ごしました! 幼馴染みです!」
 それを聞いて店長は距離を取り、腕を固く組んで拒絶する。
「どういうこと? ペットって……まさかイ、イヤラシイ意味じゃないでしょうね?」
「ちげーよ! コイツ見てみろ! 人間のフォルムじゃねぇだろ? 俺はコイツを人間だと思ってねえ」
「ひでぇ」
 ゼロコンマ1秒で浩一は否定する。実際に浩一は醜く太ってしまった神奈子をかつての恋人とは見なしていないのだった。
「わかったわ。アンタ達が清い関係だってことが分かればもう大丈夫。さっきは集中を乱されて失敗したけれど」
 店長は気まずそうに咳払いした。
 神奈子はそれを聞いて、ふーん、ああなるほど、と小さく呟いた。その目は獲物を狩る肉食獣の目だ。
 店長は、もう一度エプロンを身につける。だが、ピンクの肉食獣が逃さない。神奈子は浩一を指差し、叫んだ。

「ちょい待て、こんな男のどこがええねん!? 好かれる要素が皆無やぞコイツ!」

「「……?」」
 神奈子をのぞく二人は呆然としてしまった。
「え?お前さ、俺のこと好きじゃなかったの? さんざん好きだ好きだって言ってたぞ」
 神奈子は少し考えたあと、納得したように笑顔になると胸の前で両手を合わせた。
「あーはいはい、確かそうでしたね。じゃ、今の無しです。なんか、よく考えたら大好きでした」
 神奈子はてへぺろ、と舌を出して笑った。
「でも、店長はコイツのどこがそんなに気になるの?」
 一方、店長は顔を真っ赤にして腕をブンブンと振った。
「べっ、べべべ、別に好きじゃないわよ! たまたまコイツがバイト募集に来たから仕方なく雇ってるだけ! 他に有能な人が来たらまっさきにクビよ、クビ!」
 浩一は何がなんだかイライラしてきた。

「あー、うぜぇ! じゃあ辞めてやるよこんな店! そしたらお互いスッキリするだろうよ」
 それを聞いて二人は顔色を変えて詰め寄って来た。
「なんでやの! 辞めたらアカンで! お互いのためにずっとバイトするべきや」
「辞める必要なんてないわ! だいたいアンタ他に雇ってくれる所あるの?」
 二人はさらに距離を詰める。吐息が浩一にかかる。
「キミのためにゆうとるんやぞ!」
「アンタのために言ってんだからね!」
 えっと。
「あーもう、うぜえな! なんだこれ」
 浩一はその場から離れたくなった。

   □■□

 いつものレストランのホール。三人は丸いテーブルに座って話し合った。
「話を戻すぞ。要するに店長が美味いと思える料理を作ればいいわけだな?」
「その通りです! さすが浩一さん! 私の自慢の幼馴染み!」
「なんなの? このピンク頭。たかが一ヶ月程度で幼馴染み面しないでもらえるかしら?」(←ツンデレ)
「そっちこそ、どこがツンデレなんです? これじゃただのデレデレじゃ無いでしょうか?」(←毒舌)
「二人とも止めろ! で、店長は好物ってあるか? 美味いと思った……じゃなくて印象に残ったものとか」
「そうね……。世界中を周って色んなものを調理して食べたけど、もう終盤には何も美味しいと感じなくなってたわ」
 店長は深く考え込んだ。頭の中で深く記憶を手繰り寄せる。

「あっ、セモポヌメ」
「あん、何だって?」
 一瞬、意味がわからなかった。ゆえに聞き返す。
「えっと、いわゆる肉よ。珍しい種類の」
「あっそ、じゃあそれ使おうぜ」
 浩一の軽快なレスポンスに反して、店長はイマイチ乗り気にならなかった。
「ダメよ、今はもう味覚がおかしいから、やるだけ無駄だと思う」
「あとは、俺の好物。アレとコレと」
「全然聞いてないわね……」

「おーい、豚野郎! おまえの好物って何?」
「あっ、私納豆以外ならなんでも食べます。THE 関西人ですので」
「オッケー、納豆な。わかった」
「全然、聞いとらんやないか」
 浩一は人の話を聞かないのだった。

 勢揃いした材料を前に浩一は気合を入れた。
「うおりゃー!!」ザシュザシュザシュ
「これはすごい! なにか良くわからないけどスゴイ!」
「えっ? まさかアレをしようと言うの!?」

「うしゃしゃーーー!!!」ドガッドガドガ
「まぁ、アレがあんな風になるなんて」
「しゅ、しゅごいのぉ!!」

   □■□

「オラ! 全員の好物を使って絶対うまい新メニュー作ってやったぜ!! ハーハハハハハ!」
 あっという間に料理が完成した。だが、それは見るも無残な黒い塊なのであった。

「いただきます」
 女子二人組は仲良く料理を食べた。
「……うべっ、オフッ!」
 神奈子は途中で席を立ったが、黒い物体を吐きながら倒れて――それきり動かなくなった。浩一はそんな神奈子の様子を見て笑う。
「ガハハハハ、倒れやがった!」
 浩一は乱暴に料理を掴むとドンドン自身の口に放り込んだ。味は、正直言ってマズイ。だが、食べ進むしか無いということを浩一は理解していた。つまり、ヤケクソであった。
「ひゃーうめぇ! うめぇなぁ! うめぇ! こんなうめぇモンは今まで食ったことないぜ!」

 店長が潤んだ瞳で浩一を見つめている。浩一はそんな店長を見るのははじめてであった。
「ねぇ、浩一。見てよ」
 普段と違うトーンの声に浩一はハッとした。女神がそこいた。
「見て……なぜだか涙が止まらないの……手がすごく震えてて……私、料理でこんなことになったのはじめて」
「私、今美味しいと感じてるの? 本当に美味しいってこういうことなのね……?」
「あー、そうとも! 皆で作ったんだ。マズイわけがねーだろ!」
 やがて浩一の手も震えてきた。目が霞んで前が良く見えない。やがて、二人の意識は遠くなっていく――

   □■□

「ひゃー、バイトの後のココアうんまー!」
「お前バイトも何もしてねーだろ! メシ食ってクレームつけてゲロ吐いて倒れただけじゃねーか!」
 浩一と神奈子は帰り道の途中、ベンチに座って休憩していた。真っ赤な夕日が正面から二人を照らして、ブロック塀に巨大な影を映す。

「えへへへへ、ふふふふふ」
 ふいに、神奈子が笑い出したので浩一は嫌な予感がした。
「なんだ、どうした? 悪いモンでも食ったのか?」
「いえいえ、浩一さんは将来、洋食屋さんになるんかな? って思ったら嬉しくなってきて。」
「は?」
「あの緑の屋根の小さな洋食屋さんで、コックさんとして、もしくはウェイターとしてずっと働くんやな。ほんでゆくゆくは店長と結婚するんや」
「しねーよ! ただのバイトだって! 親が小遣いくれねぇから自分で稼ぎたいだけだっつーの」
 浩一は慌てて否定する。確かにレストランでのバイトは嫌いじゃないし、店長は厳しいところもあるが、美人で頭もいいし、性格も真面目だ。だが、そんな風に決めつけられると、なんていうか浩一は困ってしまった。
「だいたい、店長は俺のこと嫌ってるじゃん? 相手は大会社の令嬢だし、あるわけねーよ」
「ふーん。ワシはそう思わんけどな」
 神奈子は少しうつむいて寂しそうに言った。
「浩一さんはどんな大人になるんかな? 幸村や戸塚ちゃんはどんなオジサンになるんやろうな?」
「誰だよ……。知らねー奴の話すんなよ」

「よし、言っちゃおう!」
 神奈子は膝をポンと叩くと、浩一の正面に立った。背で光を受けて表情はよく分からなかった。
「私ね、昔からずっと『主人公』という存在に憧れていたんです。自分もいつかそんな存在になれるって思ってて、どんな辛い事も耐えてきました」
 神奈子は優しく、少しさみしげに微笑んだ。それは、精一杯無理して笑顔を作っているような印象を受けた。
「でも、どうやら違ったみたいで。キミが主人公に選ばれたんですよ? 抽象的な話で申し訳無いですけど、つまりキミが選ばれて、私は選ばれなかった」
 神奈子は浩一の両手を包み込むように握る。熱い体温が伝わってきた。
「だから、何でもトコトンやって下さい。仕事でも、遊びでも勉強でも。やりたいことを思いっきりやるのです。カナ子、キミがどんな人間になるか、とても楽しみにしてるんですよ?」
「キミが、一体どんな大人になってオジサンになってお爺さんになって……。私はそれを遠くから見守っていたい」
「あー……、ちょっと待ってくれ」
 そんなこと言われても困る。浩一は頭の中がこんがらがったような感覚を覚えた。主人公? なんじゃ、そりゃ。
「おい、あのな」
「あー、でもでも!」
 言い出しかけた浩一のセリフに神奈子は手のひらで待ったをかける。
「金持ちのご令嬢と結婚するのはどうかと思うな私は。だって稼ぎが違うんだよ? 箸の上げ下げから夜の営みまで相手に気を使って暮らさなきゃならないだよ。私そんな浩一さん見たくない! 強くてカッコイイ浩一さんが好き! わかって?」
「オイコラ、勝手に話進めてんじゃねー! 俺は俺だ! 他人の指図は受けねーの! つーかどんだけ店長と結婚させたいんだよ! 俺嫌われてるって言ったよな? アァン!?」
「ケケケケケケケ。それはどうなんだろうねぇ」
 神奈子はご機嫌でくるくると回転しポーズを決めた。
「じゃあ、そういうことで! 期待してますよ! 『主人公』!」
 それだけ言うと神奈子はキャッと顔を抑えながら走り去ってしまった。

 主人公だから期待してる? ずいぶん勝手なことを言うもんだ。やれやれ。浩一はベンチにもたれて沈みかけの太陽を眺めた。
「何をやるにもトコトンまで思いっきり、か」
 だが、俺は昔そんなことをして――全部失ったのだ。今でも頭に血が上るとヤケクソになってワケのわからない行動に走ってしまう。
「クソが……。簡単に言ってくれるなよ」
 遠くで神奈子の声が聞こえた。
「すまーん、鍵持ってへん? ワシ家の中入れないんよ?」
「お前の方があとに家を出たんだが? テメー合鍵失くしたのか」
「ち、違うよ。えっと、ニ階の窓から飛び出したんでさぁ」
「はぁ~~?」
 浩一は思った。やっぱりコイツの方がワケがわからない、と。

       

表紙

ハヤシライスケ [website] 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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Neetsha