【ジオラマ】
とある町にすむトーマス博士とその助手ジムは人々に幸福をもたらす赤い水を開発した。
「トーマス博士、確かに計算上その水は効果を発揮するはずですが、確固たる確証はありません」
「大丈夫だ。その検証のためにこの町をそのまま再現したジオラマを完成させておいた。我々と全く同じ体内構造と知性を兼ね備えた生命体もそこで飼育している」
そういうと博士は赤い水を霧吹きの中にいれ、そのジオラマに吹きかけた。しかしその途端、ジオラマの中の生命体は悲鳴を上げながら苦しみ始め、あっという間にすべて息絶えてしまった。
「どうやら検証は失敗のようだな。もう一度計算をし直そう」
そしてついにトーマス博士とジムは人々に幸福をもたらす青い水を開発した。
「これは赤い水と正反対の物質でできている。これこそ本物の幸福をもたらす水だ」
そして二人はその水を世間に公表し、町の住民合意のもとでそれを雲に変えて町全体に雨として降らせた。
しかし、計算に誤りがあったのか青い水もまた赤い水と同じく害のある水であり、たちまち町の住民が次々に息絶えてしまった。
トーマス博士は死ぬ間際に、町全体に響き渡る轟音のような声を耳にした。
「どうやら検証は失敗のようだな。もう一度計算をし直そう」
END