Neetel Inside 文芸新都
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【 お取り替え 】
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【お取り替え】

ある朝、黒人の老人男性が住む家に営業マンが訪ねて来た。

「あなた様は自分の体に不満を持ったことはございませんか。」

「不満ならたくさんある。この手を見てみろ。俺は生まれつき両手とも3本しか指がないのだ。この事でこの60年間どれだけいじめられて来たか。」

「それはさぞお辛かったでしょう。しかしご安心ください。当社はそんなあなたのご不満な体の一部を今なら無料で取り替えて差し上げます。」

「体の一部を取り替える?なにを馬鹿げた事を言っとるんだ。」

「我が社の特殊技術において、あなた様が望む体のパーツに痛みも傷口も全くつく事なく、取り替えることが可能となったのです。万が一ご満足いただけなかった場合には、ご本人様から直々にキャンセルしていただければ全てのパーツをお返しいたします。」

男は、無料とキャンセルが効くという条件を聞き、試しに自分の両手を若い立派な男性の手へと取り替えた。

「これはすごい。本当になんの痛みもなく、かつ縫い目なども全くない。」

「喜んでいただけて何よりです。お客様は我が社の記念すべき始めてのお客様ですので、あなた様がよろしければ他のパーツも無料で取り替えてさしあげますが、いかがなさいますか。」

「そういえば、最近歳のせいか目が霞んできたんだ。」

「かしこまりました。視力の優れた目と取り替えてさし上げましょう。」

「それと髪も薄くなってきたんだ。」

「かしこまりました。立派な毛根を持った髪に取り替えてさし上げましょう。」

「それにこの黒い肌が俺は嫌いだったんだ。全てを立派な白人の体に取り替えたいんだが。」

「お時間はかかりますが可能です。よろしいですか。」

「かまわん。やってくれ。」

こうして男は全ての体を交換し、完璧な人間として生まれ変わった。







そんなある日、男の住む国の独裁者である黒人が、今まで虐げられてきた報いとして白人全てを虐殺しろというとんでもない命令を下した。

完璧な白人となった男は命の危機を感じ、直ぐに営業マンに家に来るよう連絡をいれた。

「俺だ。お前んとこの最初の客だった男だ。」

「どうもお久しぶりでございます。お体の調子はいかがですか。」

「そんなことはどうでもいい。取り替えた体の部分を全て、すぐにキャンセルさせてくれ。」

「かしこまりました。それではご本人確認の為、こちらの機械を使ってあなた様の指紋、髪の毛、そして網膜スキャンを行わせていただきます。」



END

       

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