1
「呪いをかけられたくなかったら、今日中に1万円寄越すこと」
安アパートの隣室に住む少女にこう言われたのが2日前。
勿論、完全に無視する。貧乏大学生にとって1万円は大金である。
今からこんな不当要求をするようでは、まったく先が思いやられる。
●-●
「お前に呪いをかけた」
そして、これである。
構っている暇は無い。
バイトが俺を呼んでいる。
「聞け」
無視して原付にまたがる。
叱ってやってもいいが、昨今は挨拶するだけで「事案」にされてしまう世の中である。
関わらないのが一番よろしい。
「お前は今日、イノシシに襲われるだろう」
コイツの親の顔が見てみたい。
●-●
バイトの帰り道、俺はイノシシに襲われ、コンビニで購入した晩御飯を喪失した。
なあに、このK市ではよくあること。気にすることはない。
8歳の少女に呪いをかけられる事案が発生
第1章
2
「おい」
バイトに行かねばと、部屋の扉を開けたとたん、例の少女が近寄ってくる。
「1万円、払う気になったか」
なるわけないです。なので、今日も無視します。
「聞け」
聞かない。バイトが俺を呼んでいる。原付にまたがる。エンジンをかける。アクセルを回す。前に少女がいる。急ブレーキ。
「あ、危ないって!」
さすがに大声出してしまう。
「聞ぃーけぇー!」
小さな手で服を引っ張ってくる。ちょっと可愛いな、思う。
「お前に呪いをかけた」
うわぁ……、可愛くない。少女の横をすり抜けて、原付を発進させる。
「今日、お前の家に泥棒が入り、現金を盗まれるだろう」
ハハッ、残念ながら、呪いとやらもそこまでだ。なぜなら、今俺が所有している現金は財布に入っている2千円だけだから!(泣)そして、財布は肌身離さず持っている。家に泥棒が入っても、財布を盗られることはない。
●-●
その晩、珍しく実家から電話があった。曰く、空き巣に入られ、俺の部屋にあった貯金箱も盗られたとのこと。
●-●
結論:偶然は重なる。
●-●
大学の講義に向かおうとした矢先、例の少女に話しかけられた。
「1万円、払う気になったか」
俺は精一杯の自制心をもって、答える。
「ごめんね、俺、いま920円しか持ってないから」
ちなみに、不当要求への対応としては、こういう回答は「下の下」である。「ホナお前、1万円あったら、払うんやな?」と逆ねじを食らわされてしまうから。まあ、でも今回相手は子供だし、軽くあしらえると思――
「お前に呪いをかけた」
容赦ない。容赦ないよ。
「いや、ほんとお金ないんだって……」
「今日、お前は酷い風邪をひくだろう」
●-●
「困るんだよねえ、今日棚卸なのにさぁ……。なんとか、3時間だけでも来れないの?」
携帯電話の先から聞こえてくる店長の甲高い声が頭に響く。
「無理っす。」
半ば強引に切って、俺は布団に潜る。悪寒、頭痛、喉の痛み及び腹痛のため、とてもバイトに行ける状態ではない。
●-●
人が風邪で寝込んでいるのに、呼び鈴を押しまくるアホがいる。
さてNH○か、宗教・政治系団体への勧誘か、宅配業者か。いずれにせよ、今日はパスだ。睡眠の継続を全会一致で決定したところで、ドアポストにメモ紙。
「1万円、払う気になったか」
「おい」
バイトに行かねばと、部屋の扉を開けたとたん、例の少女が近寄ってくる。
「1万円、払う気になったか」
なるわけないです。なので、今日も無視します。
「聞け」
聞かない。バイトが俺を呼んでいる。原付にまたがる。エンジンをかける。アクセルを回す。前に少女がいる。急ブレーキ。
「あ、危ないって!」
さすがに大声出してしまう。
「聞ぃーけぇー!」
小さな手で服を引っ張ってくる。ちょっと可愛いな、思う。
「お前に呪いをかけた」
うわぁ……、可愛くない。少女の横をすり抜けて、原付を発進させる。
「今日、お前の家に泥棒が入り、現金を盗まれるだろう」
ハハッ、残念ながら、呪いとやらもそこまでだ。なぜなら、今俺が所有している現金は財布に入っている2千円だけだから!(泣)そして、財布は肌身離さず持っている。家に泥棒が入っても、財布を盗られることはない。
●-●
その晩、珍しく実家から電話があった。曰く、空き巣に入られ、俺の部屋にあった貯金箱も盗られたとのこと。
●-●
結論:偶然は重なる。
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大学の講義に向かおうとした矢先、例の少女に話しかけられた。
「1万円、払う気になったか」
俺は精一杯の自制心をもって、答える。
「ごめんね、俺、いま920円しか持ってないから」
ちなみに、不当要求への対応としては、こういう回答は「下の下」である。「ホナお前、1万円あったら、払うんやな?」と逆ねじを食らわされてしまうから。まあ、でも今回相手は子供だし、軽くあしらえると思――
「お前に呪いをかけた」
容赦ない。容赦ないよ。
「いや、ほんとお金ないんだって……」
「今日、お前は酷い風邪をひくだろう」
●-●
「困るんだよねえ、今日棚卸なのにさぁ……。なんとか、3時間だけでも来れないの?」
携帯電話の先から聞こえてくる店長の甲高い声が頭に響く。
「無理っす。」
半ば強引に切って、俺は布団に潜る。悪寒、頭痛、喉の痛み及び腹痛のため、とてもバイトに行ける状態ではない。
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人が風邪で寝込んでいるのに、呼び鈴を押しまくるアホがいる。
さてNH○か、宗教・政治系団体への勧誘か、宅配業者か。いずれにせよ、今日はパスだ。睡眠の継続を全会一致で決定したところで、ドアポストにメモ紙。
「1万円、払う気になったか」