Neetel Inside ニートノベル
表紙

お前の命と引き換えに
強襲の篇

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「授業はじめるぞー」

モテ男と雄二は机にいつものように突っ伏している。
他の生徒は割と真面目に黒板を見つめていた。

いつもならここで教師から寝ている二人に罵声が飛んでいた。
しかし気づくと教室は静まり返っていた。
不思議に思ったモテ男は顔を上げて喫驚した。

「なんだ……これ」

周りの生徒の首から上はなく、血が吹き出ていた。
教師もまた胴のあたりから切断されていた。

「あー、ベルトの持ち主外しちまったかぁ」

そんなことを言いながら、前にみたスパイダー男が現れる。
彼は自ら出す糸をワイヤーのように硬くして、教室の中を横に切り裂いたのだった。

「あら、あなたがベルトの持ち主? 」

その後に現れた女性は新登場。
スパイダー男の仲間のようだ。

「おいおい、なんやこの状況は」

雄二もついに起きたようだ。
モテ男はそれを確認したあと、ベルトを掴もうとする。
しかし、彼の道徳心は善良な人間の犠牲を許さなかった。

「どうした、はやくベルトを使え」

スパイダー男が煽りはじめる。
モテ男はその方を向いてある発想を思いついた。

「おい、そこの女、そいつの仲間か? 」

この問に対して女は丁寧に自己紹介しはじめる。
誰もそこまでは頼んでいないのだが。

「私はコイツの上司、前回のベルト奪取に失敗したから今回は私も仕方なく来たのよ、ちなみに名前はルリ」

この答えにモテ男はある作戦を編み出した。
雄二の方を向くモテ男。

「雄二、スパイダー男の足止めよろしく」

突然の提案に少し黙る雄二。
この提案にはスパイダー男も驚いた。
ただの人間にスパイダー男の足止めなど自殺行為に他ならない。

「わかった、よう分からんけど、モテ男は何とかしてくれる男や、信じるで」

格好良く決めた雄二はこのとき、実はこの摩訶不思議な出来事を夢だと思っていた。

「いい度胸だ、よし先輩はベルトの持ち主の方を頼むっす、すぐにこっちを片付けて合流するっす」

ニヤリとモテ男は笑みを浮かべ、教室から出て走り出した。

「ちょっと、どこ行くよのー」

すぐにルリが追いかける。
このときの彼の考えはアホだった。
なんとこの短時間でルリを惚れさせるつもりなのだ、自惚れにも程がある。

二人はそのまま屋上へ来た。

「で、ルリはどんな能力持ってんの?」

「はぁ? 教えるわけないでしょ」

ツンデレか、そう理解したモテ男は彼のモテパワーを最大限まで出し始めていた。

「なぁ、一目惚れってあると思うか?」

「な、なによ突然」

緊張が走る、雄二が死ぬまでに落とさなければならない。
このままでは雄二が死ぬ。

「俺さ、お前の為なら死ねる」

「ば、バカ、意味わかんないし」

と、荒めの告白だったが効いているようだ。

「ここから、飛び降りる、そんでベルトは死体から持っていけ」

モテ男の気迫はモテパワーを存分に発揮していて、ルリの視界にはキラキラが現れ始めていた。
こんな文句では普通は落ちないはずだが、彼のモテパワーによってドキドキしはじめる。

(なに、この気持ち、十数年のあいだ悪の組織として働き続けてきたけど、この気持ちは始めて、もしかしてこれが恋なの?)

「じゃあな、来世で会おうぜ」

勝利を確信したかモテ男は屋上から飛び降りる。
シュッとね。
刹那、ルリは叫ぶ。

「待って‼ 私もあなたのこと……っ」

叫びながら彼女の能力であるタコの能力を発動して、ニョロニョロと手を伸ばしてモテ男をキャッチ。
少しヌルヌルしていてモテ男は若干テンションが下がったが。

「なんだ?」
いやらしくモテ男は問いかける。

「あの、私、あなたを見ているとドキドキするの」

顔を下へ向けて照れている。
タコのくせに可愛いところもある。

「それが一目惚れさっ」

焦っていたモテ男は雑に決める。

「よし、すぐに雄二の所へいくぞ」
「はいっ」

ルリは完全にモテ男にゾッコン。
モテ男を担ぎ上げながら教室へと向かう。



     

2人教室に残された雄二とスパイダー男。

「おい小僧、死ぬ覚悟はできているか?」

スパイダー男が問う。
しばし考えたあとに雄二は頷く。
この状況を夢だと考えている雄二には覚悟など朝飯前なのだ。

「じゃあ、この糸を貴様に突き刺す、別に恨みはねぇから苦しまないように一瞬で殺してやる」

狙いをすますスパイダー男。
そんな様子に自身満々で避けようとする雄二。

「さらばだ」

糸が放たれる。
その速度は銃弾より早かった。
しかし雄二はこれを避ける、いやコケる。

床は他の生徒の血だらけだったため雄二はコケた。
これにより運良くスパイダー男の攻撃を避けることになった。

「いてて、なんや危ないのー」

「くそっ、なんてこった、外しちまった」

少し怒った雄二は煽りはじめた。

「おい、あんたの攻撃なんて当たらへんでー」

これに対してスパイダー男は糸を出したかったが、一本しか出せないという制限があって、今出した糸を回収しないといけなかった。

「この小僧っ」

走り出そうと勢いつけたせいで滑って転倒。
目を回している。

「ふぅ、モテ男はん遅いなー」

と、ここでモテ男の登場。
タコに乗って。

「お、生きてたか」

「おお、遅かったなー」

ここで雄二の片腹から糸が出る。
噴き出す血、雄二の視界がぼやける。

「ふっ、油断するとは甘いな」

倒れながらも糸を回収し終えたスパイダー男の会心の一撃。
致命傷では無かった物の出血多量。

「痛っッ、夢やないん……か」

その姿にモテ男、激怒。
ベルトへ手を伸ばしはじめる、が留まる。

「先輩、遅かったっすよ」

スパイダー男がルリに話しかける。

「なぁ、ルリ、あいつを倒してくれないか」

同じくモテ男も話しかける。

「何いってんだ、先輩がそんなーー」

ここまで言った次の瞬間、タコの足がスパイダー男へと巻きつく。

「モテ男の言うことなら何でも聞くわ」

「ちょ、なにいってんすか、正気じゃないっす」

ルリはもはやブラックドロップスなど頭にない。
愛の力によって戦っている。

「もう安月給にもウンザリしてたのよ、これからはお嫁さんとして頑張るわ」

グッと親指を立てている。
そんな彼女の子供の頃の卒業文集の将来の夢の欄にはお嫁さんと書いてあったという。

「いやいや、グッじゃねーっすよ」

焦りながらも糸を回収しだすスパイダー男。
しかし引っかかる。
何故だ、と見てみると雄二が糸を掴んでいる。

「夢やないんなら本気や……、後で病院に運んでくれよ」

手から血を出しながらも糸を掴み続ける。
緊張の中、聞き覚えのない声がこだまする。

「おやおや」

黒尽くめの男は宙に浮きながら話しはじめる。

「やはり女を最強のモテ男の所へ送るのは失敗でしたか」

「誰だ」
モテ男が問う。

「名前などはどうでもいい、そんなことよりもスパイダー男が良い時間稼ぎをしてくれたおかげで、良い人質が見つかりました」

と言って睡眠薬で眠らされた染川をモテ男に見せる。
これにはモテ男も驚いた。

「なんで染川が……」

「ふん、何も調べなしに強襲などしない、貴様と仲の良い女を見つけだすのは簡単だったなぁ」

そんなことを言いながらスパイダー男の方を見る。

「遊んでないで早く帰るぞ」

「でも先輩が……」

しかし表情を変えない黒尽くめの男を見て諦めたのかスパイダー男は本気で糸を引っ張る。
もちろん雄二の手はボロボロになり糸を離す。
そのままの勢いでタコ足を切り裂いて自由になる。

「ふん、この女を助けたければ後日、東京の千代田にあるアジトに来い。正確な場所はあとあとルリの携帯に送るから」

と言いながら男とスパイダー男はどこかへ消えた。
ルリは一気に手を切られたショックで気を失っている。

「くそっ、110番だっけ、119番だっけ」

そんなことを言いながらモテ男は怒りを感じていた。
これでブラックドロップスをぶちのめさなければならなくなった。
染川を救うために。

変身もしなければならなくなるだろう、その覚悟も必要だ。

       

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