Neetel Inside 文芸新都
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拡散記
グランギニョールの少女

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  17 グランギニョールの少女

 そういえば最近雨が降っていないなと思ったら雨になった。白雨。市街地はお祭り騒ぎだった。なんのために? 数分後には誰もいなくて革命党の精鋭が行進。私と■■■はそれをテレビで見ながら米を食べる。おかずはない。
 首都の画はいつも不鮮明だ。砂嵐の中のごとく。空に突き刺さるように建造物が建ち並んでるらしいということは分かった。
 死体がごろごろと並んでいてそれはなおも増え続けているようだ。煙が上がっている。人々が死体を燃やしているのだ。
「戦闘行為ってのは生産的なもんなのか? それともその逆か……革命か。それよりオレは野菜を植えて自給自足の生活をしたいね。だけど農業するほど体力がなくてすぐ飽きると思う。こうなったらもうどこか安住の地を求めて旅行へ行きたいね。すべては幻想、霧だ。オレはそう考えてるけどね」恐らくそうだった。
 突如私は昏倒して白色と青色のシャワーを浴びる。青は澄んだ色、平坦なスペースに腰掛けて巨大な動物を見上げる、そいつは全長一キロくらいある黒い猫に似た動物だ。空で火が燃えているのが見えた、白い炎、太陽は暗くて、夕刻。私は回転式拳銃を抜いた。地面を撃つ。すると、そこから花が咲いた。赤い花だ。私は続けて撃つ。花が咲く。そのひとつを摘んだ。私は自分の部屋に戻って■■■へそれを渡す。彼はありがたそうに受け取った。そして疲れて我々が寝ている間に首都は陥落したらしい。途中経過は一切見なかったが、きわめてスムーズな革命劇だったらしい。
 竜巻で湾口の半分が壊れた。私は見に行った。蛇が足元をうろつく。大変なことだ。こいつらは毒を持っている。私は硬直し動けなくなる。動いたら噛まれてきっとそこから腐っていく。

 郊外、左目が潰れた五十人の技師が有害な電波を発信している。白い砂が無造作に撒かれている。麻薬の材料になる花を労働者が刈り取っていた。川の中に両生類の死体が折り重なっている。突如、自分の体内にある種の蟲がいて液体を分泌しているのではないかという疑念が。死んだあとの私の腹の肉を食い破ってそれは孵化するのである。
 頭の中は閃光のようなイメージだらけだ。神聖なヴィジョンかもしれない。虚数の神が送ってきた啓示か。それよりどこか不可侵のシェルターに入り込んで冷たい空気を享受したい。
 そして私は、おぼろげな光の下の砂漠で、幽体と化した透明の人々が、向こう側へ歩いていくのを見た。空が暗いのは数億の蝗が黒く覆い隠していたからだ。彼らは楽園へ到達したがってはいるが到底そこへはたどりつけそうになかった。

 あやしい少女が道を塞いでいた。髪の毛を脱色しているように見えたが生まれつきかもしれなかった。私は今は休日だなという気がしていたのであまり介入してほしくなかったが無理だと思った。彼女は■■■革命党の軍服、即ち私が今着ているのと同じ服を着ていたからだった。軍帽でなく飛行帽をかぶっていて件の脱色したような生まれつきそういう色かなという髪が長いので風に揺れている。年齢は十六歳くらいに見えた。つまり十五歳くらいに見える私より多少は上といったところで、もちろん肉体的停滞を経験しているか継続中かもしれなかった、ので結局年上かどうかは不明瞭。少女は涼しい顔をしていた。私も、同年代の子達と比べると涼しい顔をしている方だと自分で思う。それは停滞を経験したからではなく最初からずっとそうである。飛行帽の少女は私よりも「皮肉めいた顔」に傾いている涼しい顔の持ち主だった。彼女がなにを目的に来たのか分からなかったが、現在革命党はまさに革命に尽力している最中でありその勢いに乗って過去を清算するためにきたのかもしれなかった。つまり私への制裁だ。制裁されるのは嫌だ。
 ところが少女はそれほど敵対的ではなく、そして皮肉めいた涼しい声で語りかけてきた。
「■■■・■■■■・■■女史へ本官は到達するという地点。即ち当該世界におけるパズルのピースがこんにちは」「こんにちは」「本官が到達するに当たってパズルのピースが当てはまった。書記殿、当方は■■■■グランギニョールです。衛星図書館への登用前の睡眠を強くお薦めします」「貴方は誰」「本官は忘却線監視官である■■・■・■■・■です」この人は貴族だった。號が組み込まれ鍵名が略されたその名前はかなりの特権を持つことを意味する。省略は偉大がゆえに読みきれない・恐れ多くすべての語を発音できないことを意味するからだ。そして■■の號は竜か太陽に該当するものだった。発音は金属の竜が叫ぶような強さだが私には煩過ぎた。
「寝かせたシチューを食べたいと本官は思索する。反転後の大陸北部式の。書記殿は健康ですか。悩みはありませんか。金属板を脳に埋め込まれて寂寥感を倍増する症状はでていませんか。あの春の日に味わった
ノスタルジー」「私を捕縛しに来たのだと思ったけれど」「そういうことを総統閣下は考えておりません。そして今や本官は■■■■グランギニョールの規則に基づいて行動しています。潜行しています、脈々と」
 光の反射の関係か、内面の変化との連動か、彼女の両目は灰色だったり茶色だったり鴇色だったりした。
 彼女は肝心なところで話を打ち切ってしまった。彼女の言う総統とは私のことなのか? という疑問、彼女がどこへいくつもりだったのかは分からない。
 きっと私よりあとに党へ入ったのだろうと思ったが、彼女が参加したのは八十年ほど前だという話だった。

       

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