Neetel Inside 文芸新都
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Arkяound 城塞都市の冒険者
33 掃除の日~帝都の盗賊ギルド

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   33 掃除の日~帝都の盗賊ギルド

「ちょっと! 何殺されかけてんだい!」アニーが激昂して言う。
「アニー・スティグマ、貴様こそ何してんだ!」アッシュが反論する。「みすみす俺を攫わせといてあと少しで灰になるところだったぞ。カネは払ってんだ。そこの吸血鬼、ジャズっつったか、お前もだぞ」
「あんたを助けるためにわざわざ太陽光の中に飛び込んでけってか? たわけたことを言うんじゃない。あとでいくらでも言い訳できたんだからな? 逃亡の恐怖でノエル・アッシュは発狂し日光浴によって自害したとか」
「クソ、やはりろくでもねえなこの大陸は。怠慢野郎が跋扈してんな」これについては同意したかった。善人のように思えても、やはりアニーもジャズもモラルが怪しい。
「良ければさわりだけ話してもらえないですか?」俺は言った。「どうやら面倒ごとらしいし、ことによっちゃ協力できる。すでにだいたい分かったけど」
「分かってねぇだろ、帝都のウィリアム・ヴァーレイン。お前はなんにも知らないだろ。帝都出身だが、帝都の盗賊ギルドの実態すら知るまい」
「話は聞いたことがあるよ。建国当初から存在するやつらだって」
「そうだ」苦々しい顔で彼は話し始めた。「八百年前、アンゼリカ一世に協力したならず者がいたんだ。途中で騎士団が寄った城塞での武器の調達、軍資金・食料の確保。汚い手も使いながら、初代皇帝が竜を倒すのに一役買ったという話だ。そいつは帝国ができた後も表に出ない仕事を続けて、国を保持していく契約を皇帝と交わしたわけだ。そいつの子孫が今でも帝都を支配している。悪党と怠惰な馬鹿ばっかの帝国がここまでもっているのはギルドが裏から脅威を消し続けているからだ。〈夜警隊〉、〈寡婦の手〉、教団の〈第四兵課〉、亜大陸の〈ノイル=フュル〉、都市同盟のお前たち盗賊ギルド、全てに一枚かんでいる」
 〈夜警隊〉は帝国の対外諜報部とされる組織だ。表に出てくることはないから、なにをしているのかも分からない。〈ノイル=フュル〉も同じく、カルムフォルドの密偵団だ。恐ろしい暗殺者すら擁する、秘密警察だという。〈寡婦の手〉にいたってはザザの殺し屋企業で、貴族、政府高官、皇帝に至るまで暗殺したことがあると噂される。
「それで? その恐ろしいギルド様がなにをしようってんだい?」アニーが先を促す。
「帝都における反乱未遂事件を覚えているだろ? 〈化石竜師団〉の過激派が先走ったんだ。あれは本来、もっと長期的プランに基づいた作戦だったが、暴発したのさ。だからあっさり鎮圧された。師団の幹部たちは過激派を切って捨てようって考えらしいな。次回の作戦もぶち壊されちゃかなわんだろう。やつらは内部抗争で、どんどん危険になっていくんだ。
 そこで帝国は今後、さらに軍備を強化しようって構えさ。これからは機械の時代だ。帝国、ひいてはこの都市同盟じゅうから技術者を収集し、新しい機械兵器の開発を急いでいる。当然、〈黄金時代〉の遺産の確保もこれまで以上に独占的に行っていく――邪魔者はぶっ殺してでも掻っ攫おうって感じだろなぁ。
 本題はここからだ。帝国は竜の力すら手に入れようと躍起になっているが、そのうちのいくつかがどこに現存するかって情報も含めて、われ先に確保しようという諜報合戦が、師団含む各団体と帝国の間で繰り広げられてる。例えばこの前ストームキープであった竜骸発掘とかにもからんでる」
「ああ、それは知ってるよ」俺は言う。「竜の死骸を屍術師が復活させようとしたっていう」シャーロットの活躍した件だ。
「そうだ。だがそれはどこぞの冒険者によって阻止されたと聞いている。そして、それとは別の手がかりがエンゼルストンで発見された。竜を兵器として動かす方法が書かれた〈経典〉の存在だ。ダイアナとギルド長は俺がそれに関わっていると考えたようだが、俺はヤバいものには近寄らん主義でな。発掘隊と護衛を斡旋したにすぎねぇ。直接従事したやつらはとっくの昔に街を出てる。既に拘束されたか、死んでるかしてなきゃいいがな――やつらが俺にも手を伸ばしてきたんでこっちに逃げてきたが、逆に南へいくべきだったかもしれねぇな」
「さっきの女は何なんだ? ダイアナとか言っていたが」ジャズが聞いた。
「帝都の盗賊ギルドの幹部だ。〈陽炎〉の魔女と呼ばれてるな。確かもとは冒険者で、仲間に裏切られて銃弾を五発だか六発ぶち込まれたが、くたばる寸前に悪魔が傷口から入り込んで魔女になったとさ。
 あいつは光の中を突っ走ってどこへでも行けるんだ。帝都からここまででもあっという間に来れるって話だ。やつに狙われたらどうしようもない。帝国の盗っ人にとっては衛兵よりおっかねぇ女だよ」
「あの女。かなり悪魔との適合が進んでる。ぴかぴか光る太陽じみた感じがしたよ。戦いたくないねぇ。だけど、もうあんたにゃ用なしだろ。アッシュ、これからどうするんだい?」
 ため息をついて彼は言う、「引き続きとんずらするさ。今度は〈化石竜師団〉のほうが来るかも知れんしな。お前たちより役に立つ護衛を探して、消えるだけだ」

 夕刻、〈掃除〉は終わりアッシュは去った。再認識したことがある。悪辣な団体がたくさんあって危険な人々が、よくわからないことを続けている。世界は不可解だが、正すには疲れすぎる。

       

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