Neetel Inside 文芸新都
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地底へGO!
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「山下君。明日から冒険に出るぞ」
 突然青山教授が言い放ったその一言を受け取りきるのに山下にとっては少々時間が必要なものであった。
「えっと・・・一帯何を言い出すんですか?」
 青山教授は一応教授核にあるお人だ。そして山下はその一番弟子。教授に弟子って言うのもなんか変ではあるが、とにかくそういうものだ。
「だから冒険だよ。」
「冒険ってどこにですかまったく。ヒマラヤですか?マリアナですか?」
 だがあおやまはそんなところなんて丸で小さい小さいというかのようにいった。
「山下君。今回は地底旅行だよ。地底。」
 うわぁ・・・何いっちゃってるんだこの人・・・地底旅行?
「お言葉ですが青山さん。一応あなたは地学者ですよ?そんなあなたが何いっちゃってるんですか?」
「一応って何だ?立派な地学者だよまったく。その点ちゃんとわきまえて欲しいものだなぁ。」
 いきなり今度は地底旅行なんていってるあんたには言われたくねぇよ・・・
 青山は言った
「大丈夫。今回はあらかじめ掘ってある穴を通っていくから。」
 ん?なんかそれって・・・
「地下鉄でも乗り回すんですか?」
「むぅ。そんなくだらないことするわけ無いだろう。しかもそんなの冒険って言ってたらかなり痛いと思うのだがね。」
「地学者のくせに地底旅行って言ってるお方よりはましかと・・・」
「むぅ。君もなかなかひどいことを言うね。それじゃぁ何だ?学者は夢を見ちゃいけないって言うのかい?」
「いえ・・・そういうわけじゃ。で、その穴ってのはどこにあるんですか?」
「うん。それなんだが、富士のふもとに・・・」
 うわ!うそくせぇ!
「待ってください。それってもろもろ地底旅行のパクリですよね?」
「あぁそうだな。だが、あるかもしれないだろ!」
 わわわ。なぜ逆切れ?しかも確かめてないのかよ!
「待ってください。もし富士にその穴が無かったらどうするんですか?」
「そりゃあきらめるしかないっしょ。」
 なんて適当!この人実は富士山に遊びに行きたいだけなんじゃ・・・
「わかりました。行きましょう。どうせ無いとは思いますがね。」
「よし行ってくれるか!じゃあ日にちはあさってにしよう!明日は準備だ!」
「わかりました。持ち物は・・・」
「自分で考えな。」
 即答かよ・・・まぁいいや。どうせただの富士散策なんだから、軽い携帯食料と懐中電灯・ラジオ・・・あとは・・・まぁあとで考えるか。
「じゃあ今日はもう帰っていいよ。」
「ありがとうございます。じゃあまた明日。」
「うん。ご苦労さん。」
 この研究所と呼べるか呼べないかという施設は、西武線沿線地帯にある。車を持っていない山下なんかは電車でここまで来ているのだが、松戸にある彼の家までは1時間半近くかかってしまうときもある。果たしてこんな研究所に通う必要なんてあるのだろうか?とは何度も思ったものだが。給料もちゃんと出るしまぁいいだろう。
 JRの改札を出て住宅が密集する地帯に歩いていく。ここ最近はこの辺でも犯罪といったことは無く、いたって平和である。
「ただいまぁ。」
 とは言うものの、山下はその家で一人暮らし。答えてくれる人は誰もいない。実家の両親もそろそろ結婚しろだの何だのいろいろ心配してくれている。やかましいことにはやかましいのだが、まぁそれでも見捨てられるよりはましだ。
 リビングに入ると、携帯が電波を受信したことを知らせてきた。
「はいもしもし?」
 電話の向こうからは女性の声が
「あ。山下君?あさって暇?」
 声の主は中川。研究所の同僚だ。さては話を盗み聞きしていたな?
「あさってかぁ。無理なんだ。」
「なんかあるの?」
 向こうから探りをかけている。向こうは話を知っているに違いない。
「・・・話聞いてたの?」
「話?」
 そういって聞き出す手か。まぁいいだろう
「いや。いいんだ。とにかくあさっては用事があって・・・研究所にも顔出さないから。」
「えー。なになに?何があるの?」
「何も無い。いいだろ別に。」
「デート?そうなの?」
 ん?こいつ・・・本当に知らないのか?だとしたら最悪この考えを引きずられのちのち面倒なことに・・・
「そんなんじゃない。研究だ。」
「あぁそういうことね。じゃあ私も連れてってよ。」
「え・・・」
 うーんどうする?教授に相談するべきなのだろうが、今は疲れるからかかわりたくない。あの人と話をするのは常人と話をする2倍も3倍も疲れる・・・だがどうせ富士散策で終わるんだろうし、別につれてってもいいか。
「分かった。たぶん教授もいいって言ってくれるよ。」
「ホント?ありがとう!」
「でも本当は何する気だったの?」
「えーべつにいいじゃん。」
 
 翌日

 つまり旅行前日。今日は必要なものをかわなくてはならない。研究所から抜け出し、買い物に出る。なぜか教授は今日はきていなかった。
「ところで買い物に来たのはいいけどさ、一帯何買うの?」
 いっしょについてきた中川はまだ地底旅行のことを知らない。
「うん。じつは俺もまだよくわから無いんだよね。」
「え・・・じゃなに買っとけばいいか、わから無いじゃない。」
 その意見後もっともだ
「あぁ。だからその・・携帯食料とか持っていけばいいんじゃないかな。多分。」
「本当?まるで遠足に行くみたいじゃない。」
「そうだね。俺もそう思ってるさ。だけど、まぁ大体のことはそれで片がつくじゃない。大丈夫。大体必要なものはあの人が持ってきてくれるよ。」
「そうね。そういえばなんで教授今日来なかったのかしら?」
「さぁ。多分買出しじゃない?」
「そうね。」

 そしてあっさりと当日を迎えてしまった。昨日夜にファックスで集合場所を指定されたのでそこへ向かうことに。
 朝8時に東京駅東海道線7.8番線ホーム一番前にて
「おそいよ3分も遅刻してるじゃないか!」
 青山はまだスーツ姿のサラリーマンであふれるホームの上ただ一人大荷物の上に腰掛けていた。その姿はあまりにも異様で浮いていた。
「すいません。電車に乗り遅れて・・・」
「あぁ。まぁいいよ。乗る予定の電車が発車するのはまだ時間あるから。だが」
 教授は中川の存在に気づいた
「なぜ中川君までいるのかね?」
 そうだ。教授には結局言ってなかったんだ
「いえ。その・・・僕が呼んだんです!」
 だが青山はまじめなかおでこう言い放った
「これからするたびが、どんな危険なたびか分かってるのか?」
 それを聞いた中川は
「大丈夫です。覚悟はできてますから。」
 とまじめに言い放った。当然こうでも言わないと追い返されるのが落ちだと分かってていったのだ。
「ふん。まぁいいだろう。だがついてきても後悔するなよ?」
「大丈夫です。」
 中川は山下に小声で話しかけた。
「ねぇ。そんな危険なの?」
「さぁ。でも大丈夫。ただのハイキングさ。」
 そして一向は富士へ向かうために列車に乗り込んだ。

「やっぱり旅はボックスシートじゃなきゃ!」
 青山は列車の旅を満喫しているようだった。
「青山さん。なぜ新幹線じゃないんですか?」
「決まってるじゃん。高いからだよ。」
 そこに中川がフォローを入れる
「まぁでもこういうのも楽しいですよ。」
「そうでしょ?でも楽しいのもここまでだよ。これからは過酷なたびが待ってるんだ。」
 山下が中川に小声で言う
「1日中富士のふもとを歩き回るからね。」

 一行は昼前に富士に到着。バスで富士山のふもとへ。
「青山さん。ここまで来たのはいいですが、どこにあるんです?」
「うん。こっから北東に4キロ・・・」
「ずいぶんと近いんですね。」
「あぁ。私も火口から入るものだと思っていたのだが。」
「それじゃあもう完全に地底旅行のパクリになっちゃいますよ・・・」
 中川は知らなかった
「地底旅行って何ですか?」
 まぁ本を読まない人は日本に多くいるものだ

「で・・・」
 3人は樹海の奥に入り込んでいた。確かにその位置は木々が生えるのを避けている。明らかになんかある。そう感じさせたのだが、穴みたいなものは一向に見つからなかった。
「おかしいなぁ。ここらへんにあるはずなのに・・・」
「確かにここにはなんかあったようです。木がよけてますから。だけど本当に穴なんて・・・」
 みんなは周りを探し回った。どのくらいの時間がたっただろう?中川がなにか発見したようだ。
「あ。これ・・・」
 そこには段差になった地形にある横穴があった。
「そうだ!これに違いない!」
「これって・・・あの場所から200メートルはありますよ。」
「イインだ。見つかったんだから。」
「気になってたんですが、その地図ってどっから?」
「これか?これはなぁ、近くの図書館にあったんだよ。岩石図鑑を開いたら中に挟まってた。」
「え・・・その展開ってまさしく地底旅行なんじゃ・・・」
 青山はその言葉が気に食わなかったらしい
「君は地底旅行地底旅行うるさいなぁ!いっしょじゃいけないのか?別にいいじゃないか!」
 山下はその気迫と呆れから従うしかなかった。
「いえ。あの・・・すいませんつい・・・」
「分かればいいんだ。」
「ところでその地底旅行って誰の本ですか?」
 さっきから気づいてい無かったのか?とにかく青山が驚いたように言った
「知らないの!?日本人なら誰でも知ってるあの有名な本を!」
「え・・・そんなに有名なんですか?」
「青山さん・・・大げさすぎですよ。別に誰でもってわけじゃ・・・」
「え?私は見たことが無いがね?地底旅行を知らない人を。」
「青山さんの尺度で見ないでください!中川。地底旅行はジュールベルヌだよ。海底二万マイルの。」
 中川は驚いたように言った
「え?そうだったんですか?全然知らなかった・・・」
「いいさ。良かったら今度貸してあげるよ。」
「ありがとう山下君。そういえば、前から思ってたんですが海底二万マイルって深すぎですよね?32000キロって。地球の直径が12000キロ位なのに。」
「・・・まぁそんなもんだよ。」

 一行は穴に到達した。その穴に懐中電灯をともし入っていく。
「君たち。ここからが真の地底旅行の始まりだ。覚悟してかかれ。」
 教授は圧力計を左手に。電灯を右手に持ち、リュックの中の物をカチカチ言わせながら進んでいく。一体何が入ってるんだろう?
「あれ?こっからは一体・・・」
 一行は壁に突き当たった。
「地底旅行だとここで竪穴ですね。まぁ順番逆ですが。」
「あ。なんかおいてありますよ。」
 壁の隅っこに缶の箱が置いてあった。
「これは一体・・・」
 青山があけてみると、その中には青山が持っていた地図と同じ地図。そして一枚の手紙が

『ここまで来たあなた。よくがんばりました。しかしこれからは夢ばっかり見てないで現実を見ましょう。』

 青山は完全にだまされていたのだ・・・というより単に馬鹿だったのだ。普通に考えて分からんのか!
「・・・まぁ残念ですが、しょうがないですよ。これからはこういうものには・・・」
「許せん・・・人の心をもてあそびやがって・・・こいつ。見つけたら完全に殺す!」
「えーっと・・・とにかく戻りましょう。」
 結局だまされ終わった今回の旅行。当然だろ!
「畜生めが!これが本当だったら・・・」
 教授は駅前の食堂でずっとぶつぶつ言っていた。いまどきこんなことにだまされる地学者がいるかぁ?
「しょうがないですよ。今日はハイキングだったって事で。ね?」
「あぁ。だが本当の地底旅行はこれからだ。」
「え?今なんと?」
「地底旅行はまだ始まってもいねぇ。これからなんだよ。」
 またなんかにだまされたのか・・・もう勘弁してよ~

 結局その意味がよく分からないままみなでその日中に帰路に着いた。だが青山さん曰く、これが地底旅行の幕開け・・・らしい

       

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