Neetel Inside ニートノベル
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『欠』能力者バトル
コレクト 第一章

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「は、ははは。ほんとにできちゃったよ」

 私は私の立つ地面から生える草花をこの手で触れながら実感する。この
ゲームは世界を変えると。









 皆みな様、ごきげんよう。私、新野 都美(にいの さとみ)です。

「おい、都美!!」

 あれ? 今誰か呼ばれたような……。気のせいか。

「起きろ、ごらあ!!」
「きゃあ!!」

―ドシーーーーーーン

 臀部への衝撃。あれ? 私今寝てたのかしら。痛むお尻をさすりながら
起き上る私の目の前にいたのはもう春だというのに茶色のセーターを身に
着けている少々こわもての男性……って。

「チーフ!? なんでこんな時間に」

 驚く私。それもそのはず、時刻はとうに午後10時を回り私を除いた社員
たちはとっくの昔に帰宅しているはずの時間であった。私がなぜこんな
時間まで会社にいるのかということはプライバシーの侵害にあたるので
ふせさせてもらう。

「それはこちらのセリフだ。任せた仕事まだ終わっていないのか。ただ
文字列を置換するだけの作業だ。あの量なら1時間あれば終わるだろ」

 いやーーーー! 今情報伏せてたばかりなのにチーフが言っちゃったら
意味ないじゃん! まあ隠すことでもないんですけどね。それよりも、

「チーフこそ、なんでこんな時間に会社に」
「ああ、そうだった。まさか会社に人がいるとは思わなくて要件を忘れる
ところだったよ。みんなに連絡しようと思ったんだが、あいにく携帯電話
の充電が切れてしまってね。けれども早くみんなに伝えたいから会社の
PCから連絡しようかと思って」

 こんな遅くに伝えたいこと、いったいなんだろう。チーフの表情を見る
限り悪い知らせでは、ないのかな? チーフは私の横をすり抜けて自分の
デスクの方へと歩いていく。当然チーフの言う連絡の内容が気になる私は
自分のPCに作業中のデータを保存するとチーフの後ろへと回り込む。チー
フの頭、薄くなったなあ。ストレスたまってるんだろうな、とか考えつつ
チーフの頭越しに立ち上がったばかりのPCの画面を覗きこむ。

「チーフ、こんな夜遅くに皆さんに連絡ってよっぽどのことですよね。
いったい何があったんですか」

 この位置からチーフのPCを覗くとどうしてもチーフの頭が目に入って
しまう。笑っちゃいけないのはわかってるんだけどどうしても、ね。チー
フは立ち上がる最中のPCから目を離してこちらを向き直る。

「ふふふふふ、できたんだよ」
「できたって……お子さんですか?」
「違うよ! なんでこの年になって俺が赤ちゃん産まなきゃならないんだよ」

 あんたが生むわけないでしょ! 年関係なくあんた男性でしょ!! 奥さん
のこと聞いたにきまってるじゃない。でも違うのか。だとしたら

「もしかして……」
「そう、できたんだよ。『コレクト』が!」

 コレクト、どこかで聞いたような?

「おい、なんだよその反応。薄すぎるだろ!」

 それはあんたの頭だろ……って、コレクト!?

「あっ!?」
「うぼあっ!?」

 チーフが変な声出して飛び上がっちゃったけど……思い出した!! コレク
トって私たちの会社が開発中のゲームのタイトルじゃん! それができたか
らチーフはこれだけ喜んでいるのね。
 私は椅子から転げ落ちたチーフを助け起こすと自分のデスクから椅子を
持ってきてチーフのデスクにつける。

「痛たた、君ねー。急に大きな声出したら」
「チーフ!! 完成したんですよね、見せてくださいよ!!」
「耳元で叫ぶな!!」


:Now loading……


 チーフがカバンからSDメモリーカードを取り出しパソコンに差し込むと
データの読み込み画面が現れる。

「初プレイは皆がそろってからにしようと思っていたがまあいいだろう。
君も一緒にやるか?」
「もちろんですよ!!」

 読み込みが終わりゲームのタイトル画面が現れる。

「おお」
「まだ読み込みが終わっただけだろ。感慨に浸るならこれを付けてから言
え」

 そういってチーフがカバンから取り出したのはレンズの部分が大きめの
サングラスのようなもの。そのサングラスからはこーどが伸びておりすで
にPCに接続されていた。

「これはオンラインゲームなんだがまだ正式にサービスが開始されたわけ
じゃないからな。できるのはまだオフラインのチュートリアルだけなんだ」
「それでこのサングラスみたいなのをつけてゲームをするわけですね」
 私はチーフから半ばもぎ取るようにそのサングラス様のものを受け取る
と早速それをかける。

 脳が引き伸ばされ景色が揺らぐ。次の瞬間には私は、草原の中に立って
いた。

       

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