「お嬢さん踊りませんか?」
仮面を付けた一見優男風な男(顔は見えないのだが)
が話しかけてきた。
私はそれに会釈を返し、またホールの隅で一人たっていた。
ここは仮面舞踏会、誰もが仮面を付け
人に自分を見せずに誰かを誘い、一緒に踊る
ただそれだけの場所。
わたしももちろん仮面を付けている
ずっと付け慣れている仮面。
下がどうなっているかだなんてとうに忘れたけれども。
「お嬢さん、一人でいるのは勿体無い。」
また話しかけてくる人がいた
当然仮面をかぶっている
私も仮面を被っているのだから大きなコトはいえないが
せめて女を誘う時ぐらい、素のままを見せればどうなのだ。
やんわりと断ると
男は人の流れの中へと消えていった。
やんわりと断った私もまた、ホントの気持ちを出せていない
同じだね、私も、あの男の人も
誰かにホントの姿を見せずにいて、それがラクだから
傷つかないから。仮面のせいにできるから。
ここは仮面舞踏会。
社会の縮図。