いきなりで申し訳ないが、俺は不運だ。
思春期にありがちな悲劇のヒロイン演出で済めばいいと何度願っても俺は不運だ。
昔からじゃんけんのような勝負事では絶対に負けているし何か行動を起こすたびにそれは全て悪い方向に進んでいく。
小学校の頃の遠足で山に登った時もそうだった。頂上で昼食を取る時に俺は弁当をひっくり返してしまった。先生は気を利かせてみんなのおかずを一品ずつ集めてくれたが、その具は昆布や椎茸やピーマンなど明らかに個人的に嫌いなものを俺に押し付けたといっても過言ではないものだった。
テストの時に答えがわからない選択問題に当てずっぽうで答えても二択の問題すらはずしている。
高校受験の時も本命高校の受験日に「だけ」高熱を出し翌日には快復していた。
滑り止めで受かった今の高校の入学式でも配られた教科書の全てに乱丁または落丁があった。
誤解が原因で好きな子に嫌われた。流行ったカードゲームではレアカードは引けなかった。靴を履いたら中にゴキブリがいた。突然の雨の日は必ず傘を盗まれた。バレンタインにもらった市販の義理チョコに蛾が入っていた。振ってもいない炭酸飲料は必ず開栓と同時に噴出した。
今日もまた散々なもので、家を出て自転車に乗ろうとした矢先鳥がサドルに糞を落とし、それを拭いてさぁ乗ろうと鍵を開けようとした矢先鍵を排水溝に落とし、合鍵で鍵を開けてさぁ出発と飛び出した矢先ちょっとした歩道の段差でタイヤから空気の漏れる音がして何だと見てみたらパンクであった。
今までの十六年間、生きてきて運がよかった事は本当に何もなかった。小さい事ですらなかった。
それでも俺は「不幸」ではなくて「不運」だった。
どんなに不運が重なってもこうして普通に日常生活を送っている俺は、まだ幸せなんだろう。
人間万事塞翁が馬とはよく言ったもので、結局は確率なのだ。
成功を収めた人間の中には確実に運がよくて成功した人間もいる。
成功のために努力した人間の中にも運が悪くて失敗した人間もたくさんいる。
才能や努力は凄く重要なファクターでも、結局最後は運に左右されるんだ。
そして連続して幸運に恵まれる人間も、連続して不運に憑かれる人間も、確率の偏りによって必ず存在するのだ。
だから俺は毎日頭を悩ませていた。
将来のために努力をした結果運が悪くて台無しになるのが怖かった。
どうせ最後は運だからと全てを天に任せた結果不運な結末になるのが怖かった。
何しろずっと不運による失敗に囲まれて生きてきた人間だ。成功するビジョンが全く浮かばないのだ。
俺はそんな人生を左右する問題も「学生」という人生のモラトリアムを理由に考えるのを先延ばしにして不運な人生を幸せに生きていた。
某テレビ番組で抽選で百名様にプレゼントのストラップが当たったと喜んでいる友人椎名も、金のエンジェルが出たと喜んでいる友人吉田も、銀のエンジェルが五枚貯まったと喜んでいる友人荻野も、みんな「こちら側の世界」にいないが大切な「友人」だった。
しかし俺は出会ってしまったのだ。
「こちら側の世界」にいる「仲間」と。
朝から連続の不運に見舞われた俺はすっかり学校へ行く気力を無くして近くの公園へサボりに行った。
そもそも学校へ行く気なんかなかったのかもしれない。
ここ三日間確実に連続した不運と朝を迎えては公園でサボっている。
ただあの公園へ行きたかっただけなのかもしれない。
三日前に初めて公園で出会った同い年の彼女と話がしたいだけで。
公園に着くと、彼女は既に入り口からまっすぐいった所にある木陰のベンチに座っていた。
「あ、おはよう。今日も来たんだ。」
笑いかけてくる彼女に挨拶を返して隣に座った。ほぼ同時に俺の制服の肩に芋虫が落ちてきた。これも三日連続の事なのでさっと手ではらった。
「また朝から不運の連続でさ。どうせ今から行っても遅刻だしな。」
「大変だったね。私は今日はまだ、何もないなぁ。」
そう返した彼女の私服の肩に毛虫が落ちてきた。これも三日連続の事なので彼女もさっと手ではらった。初日はかなり怖がっていたが。
「いてて、指刺されちゃった。」
「それも三日連続だろ。なんか物使って払えばいいのに。」
俺達は顔を見合わせて笑った。
彼女はこちら側の世界の人間だ。だが俺とは種類が違い、不運ではないが不幸だった。
むしろ運はいい方であるらしいが、それでも俺なんて全く及ばない程壮絶な人生を送っていた。
幼少時代、隣の県に住んでいた彼女は父親から暴力を受けていた。運よく大きな怪我はなかった。大好きだったお婆ちゃんもお爺ちゃんもこの頃に亡くなってしまったらしい。
小学校に入ってすぐ、両親は離婚して彼女は母の方へついていった。ここから少し離れた所に引っ越した。離婚した親は別れた元夫の遺伝子を含む子供に憎悪を抱くケースがあるというが、運よく彼女はそのケースには当てはまらなかった。
小学校の高学年になった時、彼女の母は別の男と再婚した。再婚してすぐ、彼女は男から性的暴行を日常的に受けた。母に相談しても全く信じてくれなかった。運よく男は痛みを伴うような事はしてこなかった。
中学校に入ってすぐ、男は友人を連れてきて性的暴行に加担させた。男は友人から見返りに金を集め、パチンコ屋に浸っていた。運よく男はパチンコで勝ち続け金に余裕があったようで、性的暴行の頻度は減っていた。
中学の卒業直前、母は賭博癖の悪い男との仲が悪化して離婚。卒業式を迎える前にこの近辺に引っ越してきた。運よくすぐ近くの県立高校が偏差値的にもぴったりでそこに入学する事が出来た。
高校に入学してすぐ、今から約一年前だ。親友とも呼べる中の友達が二人出来る。いわくこの頃が幸運の絶頂だったらしい。
しかしその数ヶ月後、親友の一人は亡くなった。夏休みのUターンラッシュ中に高速道路で事故、一家全員亡くなった。
もう一人の友人はその死にショックを受けて徐々に精神に異常を来し、学校に通う事すら、会って友達として過ごす事すら困難になってしまった。
それから彼女は学校で孤立した。運よくその学校は図書室が充実していて、元来本を読むのが好きな彼女は図書委員になってまで図書室に篭る事でなけなしの幸せを感じる事が出来た。
そして今から二ヶ月前、放課後の図書室で一人で本棚の整理をしていたところを、図書委員の担当教師にまで性的暴行を加えられそうになった。
過去のトラウマを思い出した彼女は思わず反撃してしまった。運よく教師はよろめいて本棚にぶつかり、本棚が倒れて大きな音が響いて人が集まってきたのだ。
翌日彼女が学校へ行くと校長室へ呼び出された。そして校長直々に退学処分を告知された。昨日の事について彼女は何も聞かれていないのに、加害教師の言い訳だけがまかり通り彼女が悪い事になってしまったらしい。
そして友達も居場所も失った彼女は今後どうするか悩みながらもこの公園へぶらりと散歩に来たのだ。
それから毎日通っているうち、三日前に俺と出会ったのだ。
出会ってから二日間公園のベンチで話をしただけでここまで隠さずに話してくれた彼女は、俺の事を同類として見て腹を割ってくれているのだろうか。それともどうせ長い仲にはならないから隠す必要もないと思っているのだろうか。
「なんかなぁ、どうしてこうも確率って偏るんだろうな。」
「どうしたの?何か思う所でもあったのかな。色々私の話聞いてくれたから、何でも聞くよ。」
「いやさ、これからどうなるのかなって思って。『生きていればいい事ある』なんて言う人がいるけど、ここ十六年間不運にまみれて生きてきたわけで、という事はこれから先十六年間も不運である確率がゼロとは言えないわけで……。まぁ俺みたいな幸せに生きてる人間がこんな事言っても君にしてみれば可愛いもんなのかもしれないけど。」
「可愛いもんなんかじゃないよ。私は運はいいもん。確率半々なら七割は勝てるよ。不運が連続したらどうなるか全く想像出来ないし、キミの事はキミの事で、重大な事だと思ってるよ。」
「ありがとう。ポジティブに考えようとしても何もビジョンが見えなくて、少しでもネガティブになると前例がありすぎる分ドツボにはまっちゃってさ……。これから生きていくのが辛いっていうか。」
「うん、凄いわかるよ。あんまり言っちゃいけない事かもしれないけど死にたいって思う事はたくさんあるし、『幸せな生活』のイメージは出来てもそこに私がいるイメージは全然出来ないんだ。」
「本当に死のうと思った事は?」
「ないよ。死ぬのはやっぱり怖いなぁ。未遂だろうと自殺行為が出来る人が勇敢だと尊敬出来るくらい怖がりな自分を恨めしく思う時はあるけど、結局まだ生きていたいって思ってるんだと思う。」
「生きていたい、か……。俺もそうなんだろうな。色々な自殺方法とか考えてみたけど、実行しようなんて思った事はないし。」
「でも頭の中はそう上手く回ってくれないんだよね。ふっと死にたいって気持ちが頭に過ぎっちゃうんだよね。死なないのに。」
「そうなんだよな。何かこれがあるから生きていきたいっていうのがわかれば克服出来るのかな。」
「私の場合は運がいいことなのかなぁ。色々あったけどいい事はたくさんあるし。」
「じゃあ俺は幸せな事なのかな?悪い事しかないけど大きな問題は起こらないし。あ、でももしかして『アレ』っていい事だったのかな。経験した事ないからわからないけど。」
「お、何かあったの?」
「まだわからないから、わかったら教えるよ。」
「えー、何よー。まぁ、私も似たような感じなんだけどね。幸せってああいう事なのかなってふと思ったよ。私もまだわからないけどね。」
「結果がどうだろうと、早いうちにわかるといいな。」
「うん、そうだね。私もわかったら教えてあげる。」
「『生きる意味を探すために生きてる』って言葉はこういう事なのかな。」
「うーん、私はその言葉は違うと思うんだけどね。産まれたから生きていなきゃいけないんだよ。やりたい事があったら生きていればいいけど、やりたい事がなくても生きていなくちゃいけないんだ。働いてる人達だって、やりたい事があるから働いてる人ばっかりじゃないと思うよ。つまりね、生きたくなくても生きていかなくちゃいけないんだ。」
「そっか、そうだよな。周りの人の感情のためかもしれないし、本当にその内いいことがあるからかもしれないけど、自殺はいけないことだっていう風潮はつまる所そういう事だよな。」
「凄くネガティブっぽいけど、私達みたいな人間からしたらプラスマイナスゼロの平坦な答えだよね。」
「うん。生きたくなくても生きていなくちゃいけない、か。凄くしっくり来るほど共感出来るよ。」
「ありがとう。……私ね、怖かったんだ。生きてきて散々踏んだり蹴ったりにされて、誰も共感出来ない程人間性が曲がっちゃったんじゃないかって。もしかしたら世間からしたら十分曲がってるのかもしれないけど、一人でも共感出来る人がいたのは凄くうれしいよ。うん、私は、キミに会えて嬉しいんだ。こんなに心が開けて嬉しいんだ。これも、運がよかったのかな。」
「……あーもう!!」
俺は大声を上げながら立ち上がった。
「え?え?どうしたの?私何か気に障った?」
彼女はもちろん驚いていた。でもそんなんじゃない。
「わかったんだよ!」
「な、何が?」
「さっき言ってた『アレ』だよ!俺は……。」
大きく息を吸った。
「俺は運が良かったんだよ!大きな問題なんて何もない幸せな人生を送っているのに、君に会えたのは凄く運がよかったんだ!今までどんな仲がよかった友達とも違う、今まで好きになったどんな女とも違う、だからどういう感情なのかよくわかんねーんだけど、そんな君に会えたのは考えた事もないくらいの幸運だったんだ!」
数秒の静寂の後、彼女は口を開いた。
「そ、そんな……。」
声が震えている。
「そんな事いきなり言われても……。すっごい恥ずかしいんだけど、なんか……。」
そうだよなぁ。あぁ、何いきなり口走ってんだろ俺。俺も恥ずかしい。
「……あーもう!!」
先程俺が挙げた寄声を彼女も挙げて立ち上がった。俺は驚いて体を振わせて振り向いた。
「私だって……。」
見紛う程に顔を赤らめた彼女は突如公園の入り口に向かって走り出した。その距離およそ十メートル、公園前の歩道から彼女はこちらに向かって叫んだ。
「私だってわかったんだから!私は……キミに会えてすっごく、すっごくしあわ――」
彼女の声は突如響いた轟音によってかき消されてしまった。
何て言ったんだろう。
彼女は今一体どんな気持ちなんだろう。
そして――
――これは何の音なんだろう。
轟音から数秒後。
俺は未だに信じられなかった。
あれはきっとあの轟音の主であろう。
大きなトラックが公園の前の電柱に衝突していた。
彼女の姿が見当たらない。
彼女は一体何処へいったのだろう。
最悪の事態は考え付かなかった。考えたくなかっただけだったのかもしれない。
驚いて飛び退いた彼女が近くで倒れているかもしれない。もしかしたらそのまま尻餅でも打ったか腰でも抜かしたかして立ち上がれないのかもしれない。
そう信じたかった。
でも、見渡しても、彼女はいなかった。まるで彼女は俺の幻覚か想像上の存在か、はたまた幽霊であったかのように、彼女はいなくなっていた。
頭が真っ白になって思考が安定しない。立っているのも辛い。俺はその場に座り込んだ。
「い、いたた……。びっくりしたぁ……。」
――なんて声が聞こえてくればよかったのに。
でも彼女の影も形もないのだ。
という事はやはり彼女は存在しなかったのだろうか。
いや、そんなはずはない。
三日連続で俺は見ていたんだ。彼女の肩に毛虫が落ちるのを。彼女は存在するはずなんだ。
そう思った時、ふと前を見て俺は気づいてしまったんだ。
ぐしゃぐしゃにひしゃげてフロントガラスも割れて散らばったトラック。
真っ赤に染まった電柱。
その間から覗く
彼女が着ていた服に
気づいてしまったんだ。
「うわあああっ!」
ふと気付くとそこは自分の部屋のベッドの上だった。
息が荒く、心拍も早く、冷や汗で体中が冷たい。
今のは夢だったのか?
だとしたら何処までが夢?
あのおぞましい事故の日が夢?
彼女と会ったあの日からが夢?
不運だった人生が全部夢?
垂れてきた冷や汗が目に入りそうだったのを左手でぬぐうと、俺はその手に何か違和感を感じた。
見てみると俺の左手は真っ赤に染まっていた。乾いているが、汗に溶けて指でこするとぬるりとする感覚。
まさかと思って右手を見てみても同じである。
両手が真っ赤に染まっている。
何だよこれ?
少し考えてみると段々と荒れていた呼吸が落ち着き始めた。
それから、両手が痛み始めた。
よく見ると赤の中にガラスで切ったような切傷がいくつも開いている。
ということはこの赤い液体は俺の血なんだろうか。
しかし、それにしては小さな傷の多い指先にまでべっとりとついている。
明らかに俺の手の傷だけでこの量の血は出るはずがない。
そこまで考えて、それからは考えるのをやめた。
ただ目から涙が流れてきたから、泣いた。
声が漏れてきてしまうから、声を挙げて泣いた。
俺はやっぱり不運だった。
不測の事態だったが、俺が彼女にあの台詞を言うのが五分遅ければこんな事にはなっていなかったんだ。
彼女はやっぱり不幸だった。
顔が真っ赤になるほどの台詞を勇気を出して言ってくれたのに、肝心の俺が最期の言葉を聞き逃していたんだ。
何も考えるつもりはなかったけれど、泣いている中で彼女の言葉が頭の中で何度もこだましていた。
「生きたくなくても、生きていかなくちゃいけないんだ。」
絶望ミキサー
不運な彼と不幸な彼女
――あとがき
皆様、おはようございます、こんにちは、こんばんは。
はじめまして。愛原梨香です。私は非常に暗い人間です。私の心の聖書の創世記で神は光を作らなかったのです。一章第二節で終わっています。きっと私が無神論者だからでしょう。真っ暗なだけで心の病を患わなかったのは唯一の救いです。
さてとりあえず最初の作品のあとがきということで、まずは絶望ミキサーについて簡単な説明からさせていただきます。
作者コメントの通り、色んな物を色んな形で書いて、色んな物をぐちゃぐちゃにかきまぜちゃうからミキサーです。
また、今のところ浮かんでいる構想がたくさんありますがそれらのほとんどが絶望を糧に出来ているので絶望ミキサーです。(それらが全部暗い話なわけではありません。)
私には小説を書く才能がありません。それでも書かなければいけないのです。
私は絶望が辛いのでよく胸が痛くなります。元々文章を書くのは好きで、無駄に一人で心の中で何かを長々と論じてみたりしていました。だから私は文章を考える事で痛みを忘れるのです。蚊に刺された場所に爪で×印をつけるような物なのです。
数ある文章の中でも、小説は書くのが一番簡単でありますから小説を選んだのです。
もし小説を書いてみたいけど書き方がわからない、なんて思っている方がいたらとりあえず短編でも書いてみてください。何か不満があったら言葉を言い換えてみたり追加したりしてみてください。
ストーリーが浮かばなければ四コマ漫画を文字に起こしてみる、とかでもいいと思います。
書くだけなら日本語を並べるだけなので簡単です。ただし面白い又は売れる小説を書くのは才能がいりますし凄く難しいです。
さぁ、第一作「不運な彼と不幸な彼女」です。いかがでしたでしょうか。
色んな形で書いてみるという実験的企画なのでこの作品はおおまかに分けて二つの場面があります。
「一切しゃべらない場面」と「しゃべりばかりの場面」です。
序盤の台詞のない場面は特に新しい事はしておらず、短編小説でどのようにしてどれだけのストーリーの導入が出来るかというちょっとした実験です。
メインとなる二人の会話では情景描写を完全に省く事で、二人とも本当にぼーっと座って何もせずに何も起こらずに淡々と会話が続いていく様子を表してみました。読み返して思いましたが、たぶん伝わってませんね。
この話は、ほんの少しだけ実話です。
私は彼ほどではありませんが不運で幸せです。
確率が半々であれば三割程度しか勝てません。いいことがあるのは比較的どうでもいいことばかりで、仕事や人間関係など重要な場面では全て悪い方向に傾いていました。
しっかりと記憶している良い事はもう九年程前になるでしょうか。それでも不幸といえるような問題もなく比較的幸せに生きています。
二人の会話は最近私が思ってる事です。死ぬのは怖いですし生きていたくはありません。ポジティブなビジョンも見えません。
「死にたい」という言葉は凄く不思議な言葉なのです。
実際に死ぬつもりは全くないのに、どう考えても、何ページ辞書をめくっても「死にたい」以外の言葉がないのです。
本心「死ぬのが怖い」のか、「ただ生きていたい」のか、どちらなのかは結局死んでみないとわからないのです。
どちらにしろ死ぬつもりは全くないのです。しかし死にたいのです。
例えるなら、ちょっとした色の違いで赤ではないある色があったとしても、人間の目がその違いを認識出来なければ人はそれを赤と呼ぶような事なのです。
周りの人々は私の事をただの死にたがりの構ってちゃんだと見るかもしれません。それでもいいのです。
理解されなくても、誤解されても、それでも私は言葉にしないとおかしくなってしまうのです。その気持ちが言葉になるのを見るだけでそれは強力な安定剤となるのです。
話がだいぶ反れました。
不運な彼は最後まで不運でした。不幸な彼女は最期まで不幸でした。
最後の一文は皆様の心にはどう映りましたでしょうか。
彼にとって幸運そのものであった彼女の言葉を胸に刻んで前向きに生きていくのか。
それでもまだ生きていかなくてはいけないという辛い現実に打ちひしがれて後ろ向きに生きていくのか。
物語はここで終わりなのでどちらが正式な展開、という事もありませんが、私が彼だったら間違いなく後者になるでしょう。
第一作にしていきなり暗いお話でしたが、後味の悪さを感じていただければ凄く嬉しいです。
私が好きなのはラーメンの豚骨醤油味、チップスターののりしお味、それと悪い後味です。
次回は甘酸っぱい青春ラブコメでも書いてみようかと思っています。
短編でラブコメとなるとヒロインへの愛着が湧きにくいので難しいですね。(予防線)
サラダデイズを読んで予習しておきます。
もしも何かご質問等がございましたら、コメント欄にお書きいただけましたら作品発表時のあとがきにて取り上げさせていただきます。
それでは、こんなところまで読んでくださった方々、ありがとうございました。
皆様、おはようございます、こんにちは、こんばんは。
はじめまして。愛原梨香です。私は非常に暗い人間です。私の心の聖書の創世記で神は光を作らなかったのです。一章第二節で終わっています。きっと私が無神論者だからでしょう。真っ暗なだけで心の病を患わなかったのは唯一の救いです。
さてとりあえず最初の作品のあとがきということで、まずは絶望ミキサーについて簡単な説明からさせていただきます。
作者コメントの通り、色んな物を色んな形で書いて、色んな物をぐちゃぐちゃにかきまぜちゃうからミキサーです。
また、今のところ浮かんでいる構想がたくさんありますがそれらのほとんどが絶望を糧に出来ているので絶望ミキサーです。(それらが全部暗い話なわけではありません。)
私には小説を書く才能がありません。それでも書かなければいけないのです。
私は絶望が辛いのでよく胸が痛くなります。元々文章を書くのは好きで、無駄に一人で心の中で何かを長々と論じてみたりしていました。だから私は文章を考える事で痛みを忘れるのです。蚊に刺された場所に爪で×印をつけるような物なのです。
数ある文章の中でも、小説は書くのが一番簡単でありますから小説を選んだのです。
もし小説を書いてみたいけど書き方がわからない、なんて思っている方がいたらとりあえず短編でも書いてみてください。何か不満があったら言葉を言い換えてみたり追加したりしてみてください。
ストーリーが浮かばなければ四コマ漫画を文字に起こしてみる、とかでもいいと思います。
書くだけなら日本語を並べるだけなので簡単です。ただし面白い又は売れる小説を書くのは才能がいりますし凄く難しいです。
さぁ、第一作「不運な彼と不幸な彼女」です。いかがでしたでしょうか。
色んな形で書いてみるという実験的企画なのでこの作品はおおまかに分けて二つの場面があります。
「一切しゃべらない場面」と「しゃべりばかりの場面」です。
序盤の台詞のない場面は特に新しい事はしておらず、短編小説でどのようにしてどれだけのストーリーの導入が出来るかというちょっとした実験です。
メインとなる二人の会話では情景描写を完全に省く事で、二人とも本当にぼーっと座って何もせずに何も起こらずに淡々と会話が続いていく様子を表してみました。読み返して思いましたが、たぶん伝わってませんね。
この話は、ほんの少しだけ実話です。
私は彼ほどではありませんが不運で幸せです。
確率が半々であれば三割程度しか勝てません。いいことがあるのは比較的どうでもいいことばかりで、仕事や人間関係など重要な場面では全て悪い方向に傾いていました。
しっかりと記憶している良い事はもう九年程前になるでしょうか。それでも不幸といえるような問題もなく比較的幸せに生きています。
二人の会話は最近私が思ってる事です。死ぬのは怖いですし生きていたくはありません。ポジティブなビジョンも見えません。
「死にたい」という言葉は凄く不思議な言葉なのです。
実際に死ぬつもりは全くないのに、どう考えても、何ページ辞書をめくっても「死にたい」以外の言葉がないのです。
本心「死ぬのが怖い」のか、「ただ生きていたい」のか、どちらなのかは結局死んでみないとわからないのです。
どちらにしろ死ぬつもりは全くないのです。しかし死にたいのです。
例えるなら、ちょっとした色の違いで赤ではないある色があったとしても、人間の目がその違いを認識出来なければ人はそれを赤と呼ぶような事なのです。
周りの人々は私の事をただの死にたがりの構ってちゃんだと見るかもしれません。それでもいいのです。
理解されなくても、誤解されても、それでも私は言葉にしないとおかしくなってしまうのです。その気持ちが言葉になるのを見るだけでそれは強力な安定剤となるのです。
話がだいぶ反れました。
不運な彼は最後まで不運でした。不幸な彼女は最期まで不幸でした。
最後の一文は皆様の心にはどう映りましたでしょうか。
彼にとって幸運そのものであった彼女の言葉を胸に刻んで前向きに生きていくのか。
それでもまだ生きていかなくてはいけないという辛い現実に打ちひしがれて後ろ向きに生きていくのか。
物語はここで終わりなのでどちらが正式な展開、という事もありませんが、私が彼だったら間違いなく後者になるでしょう。
第一作にしていきなり暗いお話でしたが、後味の悪さを感じていただければ凄く嬉しいです。
私が好きなのはラーメンの豚骨醤油味、チップスターののりしお味、それと悪い後味です。
次回は甘酸っぱい青春ラブコメでも書いてみようかと思っています。
短編でラブコメとなるとヒロインへの愛着が湧きにくいので難しいですね。(予防線)
サラダデイズを読んで予習しておきます。
もしも何かご質問等がございましたら、コメント欄にお書きいただけましたら作品発表時のあとがきにて取り上げさせていただきます。
それでは、こんなところまで読んでくださった方々、ありがとうございました。