Neetel Inside ニートノベル
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白の部屋
ローズハニー

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やっと出会えた、
でもずっと一緒に居た気がするのだけれど、
ちっとも思い出せないの。




白の部屋  第二話

「ローズハニー」




「リコ!」

扉がめいっぱい開くと、光がいっぱい入って眩しいくらいでした。
扉を通ると、周りは前の空間と変わらないように感じました。
もっともっと風景の変化を期待していただけに、
すこし、がっくりしてしまいました。
ため息をつこうとしたところ、突然リコは同じくらいの身長の、
少年少女にに抱きとめられました。
リコは驚きながら、でもとってもうれしくなりました。


「リコ!やっと会えたね!」
「・・・やっと、あえたね・・・」

初めにリコを目覚めさせた明るくて、鈴を転がしたような声。
かわいらしい少女のほうは、バラ色の外ハネしたセミロングの髪から、
やさしいオールドローズの香りがします。
少しびっくりしたのは、白目が無い事。
真っ黒で大きな瞳がニコニコと嬉しそうにリコを見つめます。
つんと鋭い耳と、アンテナの様に立った触角、トンボの様な羽があるところをみると、
どうやら妖精の様です。
もうひとつ驚いたのは、彼女が服を着ていないこと。
おへその下にはお花の飾りがあって、
太ももくらいの丈の靴下をはいている以外は、
何も身につけていませんでした。

もう一人の少年は、、金髪と黒髪のまじったツーブロックの髪型、
首元はフワフワとしたまっ白なファー、
かぼちゃパンツをはいていて、黄色と黒の縞々です。
上半身や腕、足は色を塗ったように真っ黒で、
関節球体人形のような関節が特徴でした。
とてもきつい目の形、目つきが悪く、きらきらした金色の瞳が印象的です。
足や手の指がとても短く、四本しかありません。
羽もついていて、見た目からして「蜂」。
蜂の少年は、すぐにむすっと不機嫌そうな顔をして、
エンサーに向き直りました。


「・・・そいつ、だれ?」
「ぼ、ぼくはエンサー。」
「あ、あのね、迷子になってたから、一緒に来たの。」

リコはエンサーをかばうように寄り添います。
バラ色の妖精はすぐにパッと明るい顔をして、
ひょひょいとエンサーの目の前に立ちます。
顔を不思議そうにのぞきこむと、またニコニコと笑顔になって、
右手をパッと差し出します。

「あたい、ロゼ。よろしくねエンサー!」

エンサーは少し戸惑いましたが、すぐに左手を出します。
ロゼは首をかしげながら、出した右手を引っ込めて
左手で握手をしました。

「・・・へんなやつだなあ。」

蜂の少年はエンサーをにらみます。
エンサーはすくみあがって、すこし後ずさってしまいました。

「バッチー、そう言う事言わないの。こっちはバッチーっていうの。
ちょっと無愛想だけど、人見知りなだけだから気にしないで。」
「けっ!いい大人がびびってやがんの。」

バッチーはエンサーをにらみつけて、ふんっ!とそっぽを向くのでした。
そんな中、リコはおずおずと、ロゼの耳元でそっと尋ねました。

「・・・ね、ロゼはどうして裸なの?」

ロゼは、耳をぴこりと動かすと、
不思議そうな顔をしてから、

「だって、リコが無くしちゃったんじゃないか!」

と、笑うのでした。
リコは何の話か、全く判りませんでしたが、

「そう、だったかな。」

なんて、ロゼと一緒に笑いあいました。
なんだか初めての事なのに、
とっても懐かしくてたまらない気持ちでリコはいっぱいになりました。

「おし、じゃあさっさと行くぞ。」
「どこへ、どこへいくの?」

バッチーはずんずんと大股で歩きはじめると、
追いつこうと小走りでリコが問いかけます。
バッチーはリコに向き直ると、さも当たり前のように

「白の部屋さ!」

とさらりと言ってのけるのでした。
リコの隣に立ったエンサーは、不思議そうに尋ねます。

「そこへ行くと、なにがあるの?」
「なにって、全部さ!」
「ぜ、ぜんぶって、どういう事?」

バッチーはだんだんとイライラしてきて、

「ぜんぶったらぜんぶだよ!
行ったらわかるからついてこいよ!」

と、リコとエンサーに怒鳴るのでした。
すっかり二人はおびえてしまって、黙ってバッチーについて行きます。

「もう、バッチーったら。ほんとは二人に会えて、とっても嬉しいくせに。
ごめんね二人とも、でも今はまだ詳しく言えないんだけど・・・」
「行ったらわかる?」
「うん!もしかしたら、行く途中で分かるかも。楽しみにしてて。」
「ふふ、楽しみにしてる。」

ロゼは皆をなごませてくれます。
しょんぼりとしていた二人が、あっというまに笑顔になって、
三人で楽しくおしゃべりをはじめると、
バッチーは口をとがらせて、先を進みながらこちらをちょっとだけ見ます。


「心配するなよ、おれがついてるんだから。」

三人はすこしきょとんとしてから、
ふふふ、と声をあげて笑いました。
先頭を歩く少年に、リコが言いました。


「ありがとうバッチー、たよりにしてる!」

なんだか楽しく目的地まで到着できそう!
リコはわくわくしながら歩きます。
楽しくて仕方がありません。
四人でいれば、どこへだって行ける気がしました。
相変わらず、周りは不気味な模様や気味の悪い大きな虫が這っています。
ひんやりした風が追いかけてきます。
でも、今はもう気になりません。
ひゅう、とふく風がエンサーの頬をなでます。
・・・エンサーは、何か嫌な感じがしました。
少し立ち止まって、さっき自分が開いた扉を見つめます。


「・・・しろのへや・・・」


ぽつりとつぶやくと、首を振って三人を追いました。

     

やっと出会えた、
でもずっと一緒に居た気がするのだけれど、
ちっとも思い出せないの。




白の部屋  第二話

「ローズハニー」



「ずっと、こんな風景が続くのかな。」

リコはぽつりとつぶやきました。
三人でいるのはとても心強くて、どんな困難でも乗り越えられそうな気持ちでしたが、
やっぱり、周りの不気味な模様や生き物は、不安にさせました。
相変わらず、ばっちーはずんずんと前を進みます。

「だ、だいじょうぶだよ・・・ロゼもバッチーもいるんだし。」

おずおずとエンサーが答えます。
優しく微笑んではいますが、彼もまた恐怖を感じているようでした。
長く、ウェーブのかかった髪がふわりふわりと揺れます。
リコは、エンサーがほほ笑んでくれると、不思議な安心感を覚えるのでした。

「そうそう!もうすぐ、灰色の空間に着くよ。」

にこにこと太陽のような笑顔のロゼがスキップをしながらリコの隣を進みます。
肌が白いせいなのか、妖精だからなのか、ロゼは淡く光を放って見えます。
「灰色の空間?」と分からない顔をするリコとエンサーに、
ばっちーがこちらに顔を向けてぶっきらぼうに答えます。

「今、ここは【黒の空間】っていうんだ。カンセルって悪い奴がリコを狙ってるんだって。」
「カンセル・・・?」
「カンセルにつかまると大変ことになっちゃうんだって。だからあたいたち、急いで会いに来たの。」
「大変な・・・こと?」
「具体的にどうなるかは、俺だって知らないよ。」

リコもエンサーもさっきよりも不安な顔をして寄り添います。
こんな気味の悪い空間で大変なことになるだなんて、想像もできません。
だって、この場所自体がもうすでに『大変』なのですから。
ぽわぽわと光を放つ赤い髪の妖精は、にっこりと二人に微笑みかけます。
彼女の笑顔は心があったかくなります。

「皆でいれば平気平気!でもね、そのカンセルについて行っちゃう人、多いんだって。」
「ええっ・・・こわいね・・・どんな姿をしてるんだろうね?・・・男性かな?女性かな?」

エンサーは怖がりながらも、まだ見ぬ敵を想像します。
他の三人も、うーん、と考えます。
あ!とロゼがひらめきます。

「すっごーくイケメンだったりして!」

その一言に、今度はばっちーがひらめきます。

「いやいやっ!やばい美女かもしんないぜ!」
「でもでもっものすごく悪い魔女かも・・・」
「わかんねーぞ、見たことないバケモノかもっ!」
「あははは・・・リコ?」

妖精たちは無邪気に盛り上がります。
エンサーがふとリコをみると、リコは何だかぼんやりとして元気が無いようでした。

「・・・え?」
「どうしたの?大丈夫?」
「うん・・・」

リコは何だか自分の体がだるくて、まぶたが重たく感じました。
エンサーが心配そうに顔を覗き込んで、彼女の頭をなでました。

「ねえ、ロゼ、ばっちー・・・リコ、つかれてるみたい・・・」
「ありゃ、大丈夫?」
「ええ?もうちょっと歩こうぜ!」

妖精たちはトコトコと集まってきました。
リコはなんだか心配をかけてしまって申し訳なくなりました。
自分で自分に、きっと気のせいだと言い聞かせます。

「まだまだ、歩けるから大丈夫。」
「無理しなくて大丈夫!ゆっくり行こう。」

ロゼがリコの手を握ると、なんだかあったかくって、
とってもうれしい気持ちになりました
元気が戻って来るようです。

「・・・ふふ、ロゼの手、あったかい。」
「そう?」
「何だか元気が出たから、まだまだいっぱい歩けるよ。」
「ほんと?大丈夫?」

何だか羽が生えたように軽くなりました。
自分が進んで前へと歩きはじめます。
エンサーはほっとして後に続きます。
ばっちーはなんだか、エンサーの右手が気になります。
じっと見てみましたが、何故か右手はコートに隠れて見えません。

「・・・ばっちー、どうしたの?」

その目線に気付いたエンサーは、ほほ笑んでばっちーに問いかけます。

「・・・いや、なんで右手だけ見えねえのかなっておもって。」
「ああ!右手はね、むかしむかしにものすごいやけどを負ってしまって・・・
ほら、手袋をしているんだ。うまく動かすことが出来ないから、
ほとんど左手で生活してるんだ。」

言われてみれば、なるほど、真っ黒な手袋をしていて、
手首のあたりから痛々しい火傷の跡がのぞいています。

「うわあ、痛そうだな。」
「うん、ちょっと不便だけど、もう慣れっこだよ!」
「そうかあ、おれも人と違う手だけど、全然不便じゃないよ・・・」

”人とちがう”ということは、はたから見れば恐ろしくても、
共通点になってしまえば話題となって、
二人は何だか楽しく会話をすることが出来ました。
四人は前へ進みます。
白の部屋に向かって真っすぐに。

でも、それを見ていて面白くないと思う、
何かの存在はずっと一緒でした。











       

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Neetsha