Neetel Inside 文芸新都
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びーふぉーひばり
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ぼくが学校に着いたのは朝7時過ぎだった。こんなに早く来るからには部活なりなんなりの活動をしていて然るべきなのだがぼくは部活なんてやっていない。ではなぜ7時過ぎなんかに登校したのかといえば単に家に居づらいからだ。毎朝繰り広げられる両親の罵り合いによって形成されるギスギスした空気に耐えられないからだ。父が出勤した後も怒りの収まらない母の相手をするのがうんざりだからだ。

それじゃあ学校に来れば万事オーケーノープロブレムなのかというとそうでもない。なぜならぼくは軽いいじめにあっているからだ。なぜか早く登校しているチンピラとその彼女に罵られるのがお決まりになっているからだ。机にむかっておとなしく外国文学を読みふけるぼくを見るにつけ「キモイ」だの「学校こなけりゃいいのに」だのと教室の後ろから言葉が降ってくる。ふつうなら不登校にでもなるような状況だ。しかしぼくは一度も学校を休んだことはない。

「おーす日下!」
本を読む僕の肩をバンと叩いてあいさつとするのが日課であるこの男
「肩たたくのやめてくれよ、、、白井、、、」
そう、この白井ともうひとり
「その本もうそこまで読んだんですかぁ?さすが読むの早いですねえ日下さぁん」
なぜか敬語で、しかもカマっぽい話し方をする木下。
この二人が来ればもうチンピラに暴言を吐かれることもない。二人ともなぜかクラスのイニシアティブを握るグループに属しているからだ。ぼくのようなひ弱な人間に暴言を吐けてもクラスでそれなりの地位を得ている彼らに下手をうてないのはチンピラの習性だ。どうしてぼくがこの二人と友達でいられるのかといえば小学生のころから同じ塾に通った仲だからで、幼馴染だからだ。

今は5月。クラス替えの後のあわただしい空気もマイルドになってゲームなり漫画なり、それぞれの話題で盛り上がってもおかしくはないころだ。しかし次第に人数の増えていくクラス内にはどこか憂鬱な空気が感じられた。

「よお日下、お前来月の模試一緒に受けにいこうぜ!」
またもぼくの背中をバンと叩いて言うのは白井だ。ぼくたちは今、高校三年生。来年に受験をひかえた高校三年生なんだ。

物語はこうしてはじまる。高校三年生、受験、ぼくをめぐるこもごも。

       

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