Neetel Inside ベータマガジン
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★10周年記念・文芸チーム感想企画★
コニーその2/じゃこばん

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新都社10周年おめでとうございます!

普段はコミックニートの末席を汚しております私じゃこばんですが、本日は文芸感想チームの一員ということで、以下の7作品について感想を書かせていただきます。

・ふたり。
・グリーンフィンガーガール
・月夜見
・私とお酒の日々
・HOT BLOOD
・こちら電算部
・Hello,Mr.Rightside.

私めのような漫画もどきを描いているものが感想を書くのは本来なら恐れ多いのですが、新都社10周年のお祭りということで許してやってつかぁさい。

さて、はじめに今回の感想のスタンスですが……以前ハルノ先生が「ちゃんと読んでみて面白くない漫画なんてない」とおっしゃってたのですよ。今回未読のものもいくつかあったのですが、私も読んでみて同じことを強く感じました。ということで、今回は「未読の方に作品の面白さを伝える」ということを第一目的とさせていただきます。

では、前置きはそのくらいにして、はじまりはじまり~



「ふたり。」
http://hutarineet.web.fc2.com/

胃袋マシン先生の作品です。
ジャンルは「百合もどき」ということで、女子高生の百合物語ですが、TOP絵からしてシリアスな雰囲気ですね。

さて、感想の前に……「百合」と「レズ」の違いについてですが、同性愛の大家、藍田レモン先生は以下のように述べていらっしゃいます。
「スケベ行為が出てくればレズ、イチャイチャするだけならば百合だよ!」(ほもほも外伝・第3話より)
う~ん、至言ですね。たしかに百合という言葉には、肉体的つながりよりも精神的なつながり、もっと言えば結ばれることのできない許されざる愛に苦しむイメージがあります。さて、この「ふたり。」はどうなのでしょうか……?

まず、ストーリーですが、二人の女子高生、南と静穂の百合関係が中心に据えられています。第一話を見ますと、積極的な南に対して静穂は引き気味であり、南の一方的な百合感情かと思われたのですが、第二話の冒頭では過去に静穂の方から積極的に南の唇を奪ったということが示されます。しかし、その後、静穂の方から「友達でいよう」と提示され、今に至るようです。

これは南にしてみるとツライですね。男女におきかえるとわかりますが、女の子の方からチューをしておいて「友達でいよう」なんていわれたら、もうおじさんだったらビンビンになって困ってしまうわけですよ(ナニが?) 静穂ちゃんには是非責任を取ってもらわなくてはなりません。

と思ったら、最新の12話で新情報が示されました。実は静穂は早くに父親を亡くしており、父の死の間際に「静穂はどんな母親になったんだろうなあ……」と告げられたことが足枷になってるようですね。たしかに百合では子供が産めませんので、父親の最期の言葉で母親になることを期待されてしまうと、軽々しくは百合関係には踏み込めなくなってしまうでしょうね(私の愛読書、ガチレズ大井BOTによるとIPS細胞を使えば女同士でも子供が産めるようですが)

現在12話まで進んでいますが、何か決定的な事件が起きるわけでもなく、個人的には展開が若干遅いような気もします。しかし、こういった結ばれそうで結ばれない二人の関係にヤキモキするのが百合漫画の王道的な楽しみ方であり、このヤキモキ感が好きな人にはたまらないでしょうね。何はともあれ、二人の今後の関係に注目です!



「グリーンフィンガーガール」
http://akeboru.digi2.jp/

アケボーノ・ボルケーノ先生の作品です。
ジャンルは「百合チック園芸漫画」ということで、期せずして百合漫画が二つ並びました。私的には「エロはヤング」「ホモはきぼん」という認識(偏見)があるのですが、百合漫画業界では「百合はコニー」ということになってるんでしょうか……?

ということで始まりました百合ダービー、終始シリアスな展開であった「ふたり。」に比べ、こちらは随分とコメディタッチな雰囲気です。第一話で主人公の鳳姫子が園芸部に入部しますが、そこでさっそく5人の部員たちが出てきます。全員女です。全員かわいいです。漫画のセオリー的には「読者がついてこれないから、一話であまり多く登場人物を出さない方がいい」ということになっているようなのですが、そんなことは気にせずフルスロットルです。「理屈じゃねぇ!女の子がたくさん描きたいんだ!」という魂の叫びが聞こえるようです(ちなみにこの学校は共学ですが、男子生徒はモブ程度にしか出てきません)

さて、物語は5人の部員の一人佳織と姫子の百合関係を中心に進むのですが、やはりシリアスというかコメディタッチですね。二話で佳織が姫子に渡す本の名前が「レズでもわかる観葉植物」ですしw 最新話で敵らしい女の子が出てきますが、あくまでシリアス展開にはならず、次々に出てくるかわいい女の子の異常行動(褒め言葉)を楽しむのがこの作品の楽しみ方といえるでしょう。

ちなみになぜかパラレルワールドになっていて、姫子が他の登場人物と付き合うルートもあるようです。別ルートは現在のところひとつだけですが、他にも増える(他の登場人物と百合る)可能性もあるんでしょうかね……? ちなみに私は登場人物の中ではドラクエ2の首狩り族のように常に鎌をぶらさげている宇沙子が好きですね。ゆるふわ漫画の中に一人だけ「ひぐらし」の登場人物が混じったような感じでw

最後に一つだけお願いです。この作品は読みながら園芸にも詳しくなる、というのを売りにしていて(?)毎回解説がついているのですが、私のようなド素人にとっては難しすぎるようです。「知らない分野のことが学びながら楽しめる」系の漫画は大好物なのですが(そのジャンルの頂点は「のだめカンタービレ」だと思います)、もうちょっと初心者でも入りやすくしていただけるとありがたいです。もし、この感想をお読みいただけるのであれば、善処いただけると幸いです。



「月夜見」
http://thukiyomi.web.fc2.com/index.html

出ました! わらべ先生の描くファンタジー巨編「月夜見」です!
ジャンルは「和風ファンタジー」ですが、日本そのものではなく、日本っぽい異世界を舞台にした壮大なファンタジー絵巻となっています。

さて、コニラーを名乗る者ならおそらく誰しもが読んでいるであろうこの月夜見ですが、万が一未読の方がいるといけませんので、まずは簡単に舞台設定を説明させていただきます。

今から400年ほど前に人類にとっての「敵」があらわれたこの世界では、二人の神のうち「ヨミ様」が自らを結界とし、閉じられた空間の内側に人類を守っています。残されたもう一人の神である「ツキ様」はその結界を管理する任にあたっていますが、人間の中でも「守護」(三家)と「御家」(三十家)と呼ばれる一種の超能力者である支配層が神を守っているというのが、この世界の概要となります。

ストーリーは現在4編目の「開花」編の途中まで進行中。ざっと駆け足でこれまでの4編を振り返ってみたいと思います。

「序」
御家序列二十五位(但し実力は一番下)の藍河家の三男坊である点睛は、藍河家立て直しのため当主になることを目指すが、現当主である父や兄が関与した違法薬物(「夢語」)の製造事件に巻き込まれ、後継ぎとしての資格を失い藍河家から追放されてしまう。
「財ノ木」
点睛は、守護のうちのひとつである財ノ木の当主の夫である要によって拾われ、財ノ木家の使用人となる。術の才能がないながらも知でそれを補ってきた点睛は、財ノ木の一員であるのに術が使えないため引きこもりになっている次女鈴莉の家庭教師となる。
「邂逅」
御家序列一位の西成家の従者たちが町の外に住む妖怪たちによって捕まり、救出に向かった財ノ木の従者である妙子も妖怪たちに捕縛されてしまう。点睛は財ノ木の同僚たちと一緒に妙子の救出に向かうが……
「開花」
邂逅編の事件で己の弱さを知った点睛は、武術を習得することによって弱さを克服しようとする。また、その裏では「夢語」製造の黒幕が財ノ木の分家である是満と古参妖怪の一人である山姫であったことが判明する。

連載開始から3年を迎え、話数も通算で100話を越し、ネームド・キャラだけでも数十人を数えるこの壮大な月夜見ワールドを、これで説明しつくせたとは思っていませんが、全部説明しようとすると、おそらくこの企画の容量10MB全てを使い切ってしまいますw
(ちなみに、第3編・邂逅編の終わりに、なんと序編~邂逅編と続く3編で第1章が構成されることが示されました……。全4章の予定とのことなので、現在は全体の8分の1強といったところでしょうか……。単純計算だとあと20年かかりますね……)

さて、そんなそんな月夜見の魅力ですが、まずは、この月夜見ワールドの「世界観」自体にあると思います。全くの架空の世界(国家や社会制度など)を一から作り出したということでは、新都社の中でも随一ではないでしょうか? さらに読者に開示されているのは世界のほんの一部で、この「世界」自体にもさまざまな謎が秘められています。ざっと思いつくだけでも……
・神(ツキ様)とは何か?
・神(ツキ様)は本当に存在するのか?(守護家の女子にしか見えない)
・「敵」とは何か?
・結界の外はどうなっているのか?
・「夢語」事件の背後にいる覆面の男の正体そして目的は?
と、まだまだ混迷を極める月夜見ワールドですが、こういった謎を推理しながら読むのも一つの楽しみ方といえるでしょう。

そして、月夜見ワールドの中で行動する登場人物たちも皆それぞれに魅力的です。主要人物以外にも「御家」の総家ではない分家のメンバーや、妖怪に与するアウトロー組織である「千里眼」など、複雑に絡まった人間関係がキャラ個人の魅力をさらに強めています。しかし、やっぱり一番魅力的なキャラは主役の点睛君ですね。術の才能は全くないのですが、邂逅編でのバトルを見るにやはり頭脳戦はお手の物といった感じです。特に集団戦ではその頭脳を生かして、今後も軍師としての活躍してくれそうです(現在は剣道特訓中ですが……) ところで藍河家の固有スキルである「御柱尊」が「でかい柱を出す」だけってのは、さすがにちょっとかわいそうすぎませんかねw

私のつたない文章で月夜見の魅力を伝えきれたとは到底思えませんが、未読の方はこの機会に是非!月夜見ワールドに参加していただきたいと思います!! すでに100話を越えていませんので、ちょっと尻込みしてしまうかもしれませんが大丈夫です!! また序盤なんですw!!

それでは、新都社20周年でも月夜見の感想がかけることを祈りつつ、この辺でしめさせていただきたいと思います。



「私とお酒の日々」
http://kinobatake.web.fc2.com/wataosa/wataosa-top.html

原作:ひょうたん先生、作画:K.I先生の作品です。
ひょうたん先生が2010年に文藝新都で連載していました小説をK.I先生が漫画化したとのことです。ジャンルは「酒ブログ漫画」です。

で、ストーリーなのですが……説明するのはちょっと厳しいですねw 基本的には一人暮らしのOL千世子さん(ハンドルネーム:ちょこ)が、自分の飲んだ酒と肴の話をブログに書くだけです。たまに千世子のコイバナなども入ってちょっと事件もあるのですが……現在のところ八割方、あれを飲んだ、これを食べたという話がメインです。

しかしですよ! この飲んでいるお酒と食べているツマミがすげぇうまそうなんですよ! これは原作のひょうたん先生のチョイスによるものか、作画のK.I先生の画力によるものか、きっと双方によるものなのでしょうが、見ているとよだれが出てきます。マジで! 実は、私は一切お酒を飲まないんですが、酒の肴は何でも好きだ(ゴロ並感)。ではなくてですね、一切お酒を飲まないんですが、それでもこの作品に出てくるお酒を飲んでみたくなりますね~。そういった意味では、OLとお酒版の「孤独のグルメ」といえるのではないでしょうか?

さて、上の方でちらっと触れましたコイバナなんですが……実は千世子さんは酒屋さんの店長の赤桐さんにホの字だったんですが、結果的に振られてしまうんですね~。カワイソス。で、コイバナは終わりかと思ったのですが、文藝版の目次を見ますと終盤の方にもうひと波乱ありそうな感じです。漫画を読む前に情報を知りたくないので文藝の方は我慢して中身まで読んでいないのですが、千世子さんの恋の行方とお酒との日々に今後も期待大です!

しかし、普段は何とも思わないんですがこの作品を読むとお酒が飲めないのが本当に残念な気持ちになります……俺ってつくづく酒の飲めない日本人だな……



「HOT BLOOD」
http://sweetshrimp.web.fc2.com/

甘えび先生の野球漫画HOT BLOOD、通称熱血です(で、でたーwww HOT BLOODを熱血と省略奴wwwwww)
連載開始から1年半、100話を越えてもはやコニーの看板といっても差支えないでしょう。ジャンルは「架空プロ野球」ということになっていますが、どう見ても実在プロ野球ですw
(ところでさらっと書いてしまいましたが、連載開始から1年半で100話超ってめちゃくちゃなハイペースですね。この感想を書いているうちに3/16にまた更新が来てしまいましたし……。大きなお世話ですが、甘えび先生のリアルが心配になってしまいます)

さて、野球漫画には古来より二つの大きな潮流があると思います。ひとつは「巨人の星」や「MAJOR」のように一人の選手の成長を追っていく系、もうひとつは「野球狂の詩」や「グラゼニ」のようにあるチームにまつわる様々な出来事を描いた群像劇系です。このHOT BLOODにはフルタイムナックルボーラー・桜沢さくら(サクサク)という主人公がいますが、基本的には後者の群像劇ものに位置すると思います。
(ちなみにフルタイムナックルボーラー系女子というと、ナックル姫こと石川ミリオンストーンズの吉田えり選手を彷彿とさせますが、私のようなおっさんは「魔球使いの女子高生がプロ球界で無双」というと、やはり「野球狂の詩」の水原勇気を思い出しますね)

さて、ストーリーですが、熊本第三高校の女子高生野球部員・桜沢さくらがスカウトを受けて地元球団「熊本カブス」に入団することから始まります。この熊本カブス、設立以来の万年Bクラスというパ・リーグのお荷物球団で、選手の間にもどんよりとした空気が漂っていたのですが、新たにオーナー代行に就任した若狭由恵の改革の下、優勝を目指して奮起する……というところだったのですが、1シーズン目は善戦及ばず最下位に沈みます。オフシーズンを経て、ちょうど100話から2シーズン目の開幕戦がはじまったところです。

普通ならここで感想に入るのですが、かくいう私も野球ファンでね(合田一人並感) せっかくなので熊本カブスの戦力分析をしてみたいと思います。
物語開始以来のカブスの補強戦術は以下の通りです。
・投手
 入団:桜沢、神成、竜飛岡、鷹匠
 先発⇒リリーフへ転向:八ノ州
・捕手
 入団:鳩村
 退団:鴻巣(ジャスティスへ移籍)
・野手
 入団:戎、出門、麦芽、クインビー

こうして見るとかなりの補強を行っていますが、そう喜んでばかりもいられないと思います。特に痛いのは鴻巣の移籍ですね。球団改革のためやむをえないとはいえ打率280・本塁打15本をうてる(26話より)スラッガーでもあった鴻巣を切ったことで、打撃面(特に長打力)は相当弱くなったのではないでしょうか? えべっさんは昨シーズン本塁打2本(選手名鑑より)と長打力はそこまでありませんし、腰に爆弾を抱える出門さんはシーズンフル出場は無理そうですしおすし……

また、投手陣ですが、こちらは昨シーズン途中から八ノ州をリリーフに回しましたが、先発陣はその分手薄になったと思います。サクサクは8勝10敗(選手名鑑より)と一年目にしては十分すぎるほどの活躍をしていますが、2シーズン目となる今期は各球団とも対策を打ってくるのではないでしょうか? 竜飛岡は中継ぎのようですし、神成は今のところまだ覚醒待ちでしょうか……?

と思ったところに、大型補強ですよ。投手では大学球界のスター・鷹匠、打撃では長身の女性外野手・クインビーが今シーズンより加入です。いや~これは素晴らしい補強ですね。さすが若狭オーナー!よくわかっていらっしゃる!おっぱい揉ませろ!

ということで、つい長々と戦力分析してしまいましたが、このHOT BLOODには野球ファンをそうさせるだけのリアリティがあるのです。他の球団の選手は実在の選手をモデルにしているのですが、全員クリソツですw また、ネーミングも春覚徳監督、大谷翔平平、釈迦本などと実在の選手をもじった謎のネーミングセンス爆発ですw もちろん似顔絵だけではなくて野球描写もピカイチですね。見てください、93話の竜飛岡のアンダースローを! サブマリンがこんなにうまく書ける人は商業でもそうはいないんじゃないかなぁ……?

ということで、このHOT BLOODの魅力を語ってまいりましたが、もうちょっと語らせてください。私は基本的に「完璧超人」の出る漫画は嫌いなんですよ(キン肉マンが嫌いと言ってるわけではない) そう言う意味では、この漫画には一人も完璧超人は出ていないと思いますね。やり手ウーマンの若狭さんも心に傷がありますし、出門さんも腰に爆弾を抱えいつ選手生命が終わるかわからない状態です。唯一完璧超人と思われた鳩村ニキ(それゆえ私は以前はあまり好きではなかった)も、最下位脱出をかけたジャスティス3連戦で自分の弱点から3連敗を喫し、しかも宿敵の鴻巣にdisられるという有様……。しかし、こういった人間的弱点を皆が抱えていることが、HOT BLOODを人間ドラマとしても楽しめるものにしているのではないでしょうか? 是非、野球を知らない人にも読んでほしい大傑作です!

そして最後に甘えび先生にお願いです。実は私はマリーンズ・ファンなので、100話から103話まではサクサクの見た夢ということにしてください!



「こちら電算部」
http://www7b.biglobe.ne.jp/~nito_12i_bin/densan_index.html

十二位敏先生の作品です。ジャンルは「一太郎dash」
私が担当した中では一番古く、なんと2008年からの連載です。ところが2010年から休載に入り、2014年に4年ぶりでいきなり復活という、新都社魂を形にしたような作品です。こういうことがあるから新都はやめられねぇぜ……!

で、私が新都社を読み始める前から休載されていましたので、正直未読でした。この機会に読んでみましたが……予想を超えておもしろかったです!

物語は主人公の高石君が化学の女教師・岬先生に勧誘されて電算部という部に入部するところから始まります。ちなみに勧誘された理由はあとで判明しますが、大阪南部の地名を揃えていただけらしいw(他の部員は泉、佐野、大津)。電算部というのは聞きなれない部活ですが、パソコン部とは違い、生徒会の資料や学食の献立をワードやエクセルで作ったりする極めて真面目な部のようです。ジャンルは一太郎なのに、ワードで作るんですねw なお、この部には十分な予算が与えられておらず、パソコンはずいぶん古いものだけを使っているようです。

ここで勘のいい方ならお分かりの通り、物語の序盤はレトロパソコンあるあるをネタとして進行します。Win95とかMSXとか5"FDとか、ある年齢以上の人なら懐かしい響きのものばかりではないでしょうか? 最近の若い読者は信じられないかもしれませんが、Win95が出たときは一大ニュースになってのう……家にパソコンがない人までOSを買いにアキバに行列したもんじゃよ……

でも、この作品の楽しみ方はそれだけではありません。パソコンあるあるの中に突如挟まれる高石君の陸上部の話や部長のピアノの話は、青春の蹉跌っていうんでしょうか、私のようなおっさんになってから読むとジーンとくるものばかりです。特に第14話から第19話の過去編「岬のみぞ知るセカイ」はそこだけ取り出してもひとつの短編になりそうな感動秘話です……と思ったんですが、この過去編の途中で4年間休載したの!? いい加減にしろ!! これがまさに新都社なんだなぁ…w

さて、最後に絵柄ですが、どう見ても今風の萌え絵には見えませんが、読んでいるうちに岬先生も部長も次第にかわいく見えてくるから不思議です。特に岬先生は今25歳くらいでしょうか?、こんな美人の先生がいたら自分の高校時代も楽しかっただろうなぁなどと妄想してしまいます。最新話で佐野君が岬先生の従兄弟だったことがわかり、佐野君の家に岬先生が家に遊びに来てたとかいってますが、今までなんの特徴もなかった佐野君が急に羨ましく思えてきたゾ!!



「Hello,Mr.Rightside.」
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17429

右手先生の作品です。ジャンルは「異世界探訪」
漫画というよりは絵本といった方がいいかもしれません。「電算部」とは逆に私の担当内で一番新しい作品です。私は存じ上げなかったのですが、右手先生は2007年から文芸で活動されていたそうで、我々の大先輩ですね。漫画は今回初挑戦のようです。

ストーリーですが、これは「私とお酒の日々」とは違った意味で書きにくいです。おこってていることは単純なのですが……何とも文学的といいますか、基本的にはコメ欄でも指摘されていますが、カフカの「変身」と「審判」を下敷きにしているのではないでしょうか…? ある男が急に右手に変化してしまい、裁判にかけられたり、おかしな仕事をさせられたりするというものです。途中で右心房と左心房のくっついたキャラが出てきたり、右手と左手が議論していたりと、「右と左」をテーマにした不条理文学といったジャンルになるのではないか?と思います……思いますと歯切れが悪いのは、正直ちょっと文学的すぎて私には難解だったからです……スミマセン……

というようなことを思いながら、経歴アンソロジーを見ていたら右手先生は左利きのようですね。やはり左利きだと右利きの人以上に「右」か「左」かを気にするものなんでしょうか……? 最後の方で「共有者」という重要そうなオブジェが出てきますが、このオブジェは重要そうな割に「右」「左」の概念の影響を受けていないようなので、この世界の鍵となるのではないでしょうか……?

ということで、歯切れの悪い感想になってしまいましたが、文章は簡潔で読みやすく、挿絵も独特の絵柄ながら見やすいので、読むのは全く苦痛ではありません。「俺がこの世界の謎を解いてやるゼ」という気概にあふれた読者の方は是非チャレンジしていただけるとよろしいのではないでしょうか?

       

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