Neetel Inside ニートノベル
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短編集「sfの穴」
#7地雷について

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 私は小学4年生の時、夏休みの自由研究で「地雷について」というタイトルで研究をまとめ、クラスの皆に発表した事がある。

 「地雷」をテーマにしたのは別段深く考えた末の事ではなく、たまたま朝刊のテレビ欄で見つけたBSの特集番組を丸々パクれば、自由研究ごときパパッとすんでしまうのではないかという発想からである。
 
 しかし、番組をVHS録画して自由研究としてまとめる為に何度か観てみると、これが私を虜にした。
 地雷というものの歴史や地雷がこの世の中にどのような影響を与えたのか、というような事を実際の映像を交えての解説を観ていると私にはある思いが生まれだした。
 私はこの宿題をもっとちゃんとまとめて、よりよいものにして皆の前で発表したいと思ったのだ。

 そこから小4の私にとっての大冒険がはじまった。

 当時、インターネットはまだそれほど普及していなかった時分、私は私の行動範囲の限界ギリギリの図書館という図書館を周り参考になる書籍を借り、本屋という本屋で地雷について書かれている本を買いまくった。もっとも買った本の代金は父親が負担してくれたからそこの所で威張る事ではないが……とにかくその夏休み、私は地雷の虫となった。

 地雷と一口にいっても踏むと重量が信管に伝わり起爆する感圧起爆方式や足にかかったワイヤーがピンを引くと起爆する引張方式などの様々な種類の地雷がある事。かつてベトナム戦争ではゲリラ戦においては地雷設置に時間が割けない為に上空から戦場に撒く散布型地雷が使用された事。現在でも戦争が集結した地区に埋設した対人地雷が多くの一般市民の人命を奪っている事…。

 調べれば調べるほど私は地雷に熱中していき、遂には自分でも地雷を作りたくなった。
 夏休みの自由研究レベルとはいえ地雷について多くの知識を得た私はちょっとした地雷博士。地雷を手作りする事は当時小4の私としても案外簡単な事ではないかと思えたのだ。
 目を付けたのは前述した古典的な感圧起爆方式。随分前の事だから詳しい事は忘れたが、外見をそれっぽくするためにアルミのお弁当箱を図化工作で使う絵具で深緑色に塗り、ロケット花火の火薬をほぐし弁当箱いっぱいにぎゅうぎゅうに詰めて、殺傷能力も上がるように細かい金属片も入れた事は覚えている。そして上面には自分でもほれぼれするような仕組みの感圧装置も取り付けたという記憶がある。……ただ自由研究をクラスで発表する前に担任の先生に『地雷の作り方』という項目を検閲されたので、今ではどういう仕組みだったかは実家の机の奥の自由研究ノートをひも解いても確かめようはないが……。

 その感圧装置の仕組みを確かめたいとすれば方法は一つだけある。私が通っていた小学校の体育倉庫の裏を掘りかえす事だ。

 小4の頃の私は担任の先生に自由研究の項目を検閲された事の腹立ち半分、その時先生に地雷の作り方を発表しようとしただけで小一時間叱られたうえに実際に地雷を作った事が判明したらどんなに怒鳴られるだろうかという恐怖半分で、私はその手作り地雷を体育館倉庫の裏に埋めたのだ。

 小学校を卒業して10年以上経つが、私の知る限りでは母校から対人地雷が掘り起こされた話、またその地雷によって被害者が出たという話はない。
 もしかしたら私が自信満々に取り付けた感圧装置は失敗作だったのかもしれない。それか手作り地雷に詰めた火薬が早い段階で湿気てしまって起爆しなくなってしまったのかもしれない。あるいは体育倉庫の裏の一画に埋めた為10年以上誰にも踏み抜かれいないだけで、今もあの地雷は誰かに踏まれる事をただじっと待ち続けているのかもしれない……。



 そんな事を私はテレビのバラエティー番組で、大人になった“まいんちゃん”が若手芸人にいじられながらも終始笑顔で受け答えしているのを観ながら、今も考えている。



       

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