Neetel Inside ニートノベル
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短編集「sfの穴」
#4磁場にゃん

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 昼過ぎ。
「もう、また猫なんて拾ってきて!元いた所に返してきなさい!!」
 とおかあさんは言う。
「でも捨てられてたんだよ。ホラこの箱に入れられててさぁ・・・。可哀想だよぉ・・・」
 とぼくは右手のみかん箱と左手の子猫をおかあさんにみせつけて同情を誘う。

 が失敗。

「可哀想だけど・・・また誰か他の人が拾ってくれるからなぁ・・・それまでのしんぼうだからなぁ・・・」
 ぼくは子猫が元いた薄暗い路地裏に箱ごと置き去りにし、子猫と目を合わせないようにダッシュする。



 家に帰りテレビをつける。ペット番組の再放送がやっている。
「ねこなぁ・・・可愛いよなぁ・・・飼いたいよなぁ・・・」



 テレビで髪の長い女の科学者が言っている。
『この実験でもわかるようにネコには帰巣本能があるのですが・・・・・・』

「ほらぁ・・・ねこかしこいんだよ・・・」
 とぼくはひとりごとをおかあさんに聞こえるように言ってみる。

 が失敗。おかあさんは聞こえないふりのまま、ようちえんのれんらくノートを書いている。

『・・・・・・しかし実験した猫の中でも強力な磁石を装着した猫だけが家路を辿れなかった事から、猫を初めとする高度な帰巣能力をもった動物は周辺の磁場を認知する事で帰巣しているのではないかと考えらています。ほら最近そういう話よく聞くでしょ?我々の業界ではこれを“磁場にゃん”って・・・・・・』

 がりがりがりがり。

 庭で網戸をがりがり引っ掻いてるヤツがいる。さっき捨ててきたねこだ。

「あっダメだって網戸引っ掻いたら!!」


 ぼくはネコを抱えてとぼとぼ道を歩く。

「ダメなんだ・・・。テレビでもいってたじゃないか・・・。もっと遠くに捨てに行かなきゃ・・・」



 迷子。


 ときは夕方。
「迷った・・・」


「お前のせいだからな・・・」
 ぼくはねこを見つめる。
 ねこはぷいとソッポを向いて歩きだした。

「おい」

 歩くねこ。
 無策のぼくはしゃあなしでねこについていく。

 日が暮れてあたりが薄暗くなってきた。
「なぁ・・・お前のせいで迷子になったんだからなぁ・・・責任感じてくれよなぁ・・・」

 歩くねこ。
 ついていくぼく。


「着いた。」
 わが家だ。
「ねこ・・・あなどりがたし」



「どこ行ってのー!心配したんだからぁー!!」
 とおかあさん。

「ねこ捨てに行って、迷子になったんだけど、ねこが導いてくれたんだ」
 とぼく。

 日はとっぷりと落ち、居間でぼくはねことじゃれあう。おかあさんはようやっとねこの賢さに気づきねこは家で飼ってもよいことになったのだ。
「お前やるよなぁー。そうだ名前付けなきゃなそうだ。え~と・・・ホーミングミサイルなんてどう?」

 ねこは聞いてないみたいであくびをした。

       

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