Neetel Inside ニートノベル
表紙

昇天の拳
心、体、天にぴょんぴょん

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男達の熱気溢れる地下闘技場。そのなかのあるステージでは汗の匂いにまじって海産物のような、雄の臭いが漂っていた。
「タオサー・プリン戦闘不能!勝者!指扇ぃぃぃぃぃぃ……紫電!!!!!!!」
「ヒィィ……んあ~~!あぁぁぁぁ……」
切なさの混じった嘆息を吐きながら目の前の女性は快楽に溺れている。
さて、なぜこのようになってしまったのか?簡単に言えば色々あったのである。そう、色々……
「いよいよ決勝戦だ。それにしてもあんた、良い腕してるなぁ。それに客入りも良くなったよ!まさに万々歳って奴だ」
「だが、本当に来るんだろうな。奴は……」
「なに、心配するな。この闘技場のボスは必ず来る」
人相の悪い受付のオヤジとの会話。程なくしてアナウンスが流れる。
「決勝戦は、指扇紫電vsサウザンド!両名は至急闘技場までお越しください」
「やはり来たか……サウザンド……ククク」
嬉しそうに笑うオヤジ。指扇は横目でそれを確認する。
「言っちゃあ悪いが、あの"サウザンド"に挑んで帰って来た奴を俺は知らねぇ。なんせ、奴が出た大会の優勝と賞金は必ず奴が持っていく。命ごとな……」
「なら、その筋書を変えるのが俺の役目のようだな」
「そう言って死んでいったやつを俺は何度も見たぜ。ただ……」
次はまっすぐ指扇を見つめる。先程のニヤケ面は一切ない。
「あんたには期待してるぜ。この閉塞感、決められた運命をぶち破る力がある。これはいろんな人間を見てきた俺の直感……てやつさ」
オヤジに背を向け、会場に向かう指扇。
「そのセリフ……何回目だ?」
オヤジは目を閉じ静かに答える。
「お前で初めてだよ……」

「さあ!いよいよ決勝戦!今回は一味違った闘いが見れそうです。なにより今回は満員御礼!立ち見客まで出てしまっています!!!」
溢れんばかりの人の数。どれだけの人間が、この地下闘技場の存在を知っているのだろうか?結構多いぞ。これ。
「まずは!今大会初参加、幾多の試合では我々に"魅せて"くれました。しかし今回は通用するのでしょうか!対する決勝の相手は~~」
証明が一気に落ち、辺りは暗闇に包まれる……
「数々の猛者を葬り去った謎の戦士。我々が知るのはその強さと名前だけ……サウザンド~~……カーフゥーーーーー!!!!!」
照明が戻り、目の前にはサウザンドと思われる人間が立っていた。観衆の歓声と下品な叫び声が聞こえてくる。絶対勝て!殺せ! 楽しませろ!犯せ!
「無事に見つけることができて安心したぞサウザンド……」
自分よりも頭2つ小さく、全身をフード付きのコートで覆い正体を隠す彼、サウザンドに良い放つ。しかしサウザンド。これが聞こえているのかいないのか反応しない。
闘技場と観客席とでは空気がかなり違っていた。「静と動」「陰と陽」1つの空間に2つの世界。
「では、両者見会って……スタート!!!」
開幕と同時にサウザンドの袖から幾千ものナイフが自分に向かって飛んでくる。指扇、これを横っ飛びで避ける!
「うおー!流石だぜ!大体これで死ぬ奴が多いからなあ!」
飛んでくる観客の声。耳を貸す暇はない。距離を詰めなければこちらは闘いにならないのだ……しかし!
「ガハッ!」
左腕に突き刺さる衝撃。特注の、丈夫なジャケットをあっさり引き裂く鞭が指扇を襲う。
「おいおい、一方的だぜ」
「無理もねぇ。あの兄ちゃんは武器を持っていない。肉弾戦は……おっとすまねぇトイレにいってくる」
このままでは埒があかない。指扇も動く!
「昇天術殺人奥義……斬刀破刃!」
生きた毒蛇の如く襲い掛かる鞭を手刀で引き裂いていく。これに動揺したサウザンド、使い物にならなくなった鞭を投げ捨て指扇から更に距離をとる。
「どうしたサウザンド、聞いたほどでもないな」
安い挑発であったが、サウザンドはそれに乗った。
「おいおい!これはヤバイんじゃねえか!」
彼女のコートのしたから大量に這い出る蛇、そして……
「で、でた……クレイジーラビット!サウザンド、あいつ本気だ!」
「まさか……奴の本気がまた見れるとはな……!」
サウザンド……彼の本気を知るものは語る。サウザンド自体も一流の戦闘能力を持つが、更に恐ろしいのが相棒の存在である。まずは毒蛇。彼らの毒は神経系に作用する毒を持つ。主に媚薬と同じ成分だ。そしてクレイジーラビット。世界に数百しかいないという個体。なぜクレイジーと呼ばれるのか?それは、この種は異常なまでに性への執着が強いのである。
常に発情し雄は豪槍とよばれる陰茎を持ち、クレイジーラビットだけでなく多種も犯し回る。実際ジャングルでクレイジーラビットに犯せれ死亡する男女の報告が後をたたない。そして雌。これが一番厄介である。
満足しなければ性行為を中断しないのである。とにかく絞り尽くされる。
そして指扇の目の前に現れた雌のクレイジーラビット、発情臭を漂わせている。
「お前の奥の手はこんなものか……」
落胆の入った声。指扇は胸から小瓶を取りだし床に叩きつける。
爽やかなシトラスの匂い。するとどうか!クレイジーラビットたちは一様におとなしくなる。
「罪のない生き物を殺しに利用する貴様を俺は許さない。サウザンド!ここで散れ!」
明らかにサウザンドは動揺していた。その隙を指扇は見逃さない。
「!!!……??!!」
「な、なんだなんだ!?なにが起こったんだ!」
まさに一瞬。闘技場内の蛇とクレイジーラビットを吹き飛ばし、サウザンドの首根っこを掴み持ち上げる。
「~~~~~~!!!」
宙に浮かされ、足バタバタさせてもがくサウザンド。自分の両腕で、首を締め付けている指扇の腕を離そうとするがその細腕ではなんともならない。
「い、いいぞ!兄ちゃん!やっちまえ!」
「バカ野郎サウザンド!てめぇにいくら賭けたと思ってるんだ!」
「サウザンド……せっかくだからお前の招待を暴かせて貰うぞ!」
空いた腕でフードをつかみ乱暴に剥ぎ取ると同時に身体を地面に叩きつける。
「ガハ!」
「な、なんということだ!これは……これは!!!」

     

  審判を中心に広がる動揺。
「あ、あれはヤバイだろ……」
「いや、でもこれって」
「おい!変なこと考えんな!流石に不味いよ!」
  正体を暴かれたサウザンド。伸びっぱなしの髪。指扇を睨むジト目。だが、そんなことは些細なことである。彼……いや!彼女の容姿で一番問題なのは……
「サウザンド……いや!千野花風(ちのかふう)、18年という短い生涯でどれだけの命を奪ったか……ここでお前を打ち倒す!!!」
  糞の役にも立たない希望が舞い降りた!
「おい!今聞いたか!18だよ!じゅ・う・は・ち!エイティーンだよ!」
「いや、でもこれ見た目的にヤバイよ!どっからどうみても中学生にしかみえないよ!」
「ええー!審判の私からも宣言いたします!サウザンドの年齢は18歳です!そのプロフィールに嘘、偽りはありません!この作品に出てくる少女の年齢は全員18歳以上です!!!」
「もうなんでもいいよ!トイレ行ってくる!」
「まて!早まるな!」
  場内はパニックである。すでに下着を脱ぎ出す者。ティッシュを奪い合うもの。法外な値段で売りに出されるポケットティッシュ。すっきりした顔で場内を後にする漢。
「千野花風……昇天拳であの世に送られること、光栄に思うが良い!」
「……絶対……嫌です」
  応戦態勢に入る千野。だが、戦闘能力の差はあきらかだ。距離を取ろうとした瞬間再び捩じ伏せられる。必死にもがくが見てて痛々しい。
「やめて!離して!嫌だ……嫌だ……!!!」
  涙を溜めて必死の反抗。本来は、彼女の幼い容姿もあって心を痛める場面ではあるのだが……
「うおー!やってしまえ!」
「やれ!やっちまえ!指扇ぃ!!!」
  残念。良心よりも性欲が上回っている。
「ふん、無駄な抵抗を……ならこれの出番だな」
  千野を再び地面に組伏せ、膝を背骨に押し付ける。同時に両腕をめいいっぱい後方に引く。
「ぐ、ぬぬぬぬぬぬ……」
  しかし千野、それに抵抗する。
「お、おい。指扇のやつ。そのままサウザンドの腕を再起不能にするんじゃないか?」
「……いや、違う!ま、まさか……あれは……PNFだ!違いない!なんて奴だ!」
「おい!お前!なにか知っているのか!」
  盛り上がる観客席。眼鏡をかけた若年の男がずれた眼鏡をクイッと直す。
「PNF……正式名称はProprioceptive  Neuromuscular  Facilitation……日本語で言うと固有受容性神経筋促通法のことだ」
「……ごめんわかりやすくいって 」
「つ、つまりだな、パートナーが必要なストレッチのことさ。柔軟性だけじゃない。脳や脊髄等の中枢神経疾患や、骨折、脱臼をしたときの筋力低下や、身体を思うように動かせないと言った症状を防ぐことができるんだ!」
  しかし!目の前で行われているのはストレッチではなくプロレス技に近い。
「んぎ!んぐぐぐぐぅ」
  歯を食い縛ってなんとか抜け出そうとしている千野。力を入れ続ける指扇。
「サウザンド、あいつは指扇の術中にはまってる」
「なんでそう言い切れるんだ?」
「あぁ、PNFストレッチの特性は強い力の発揮を促すことで、より脱力した状態で筋肉を伸ばすことにあるんだ。その時一方的な負荷だけでなく反発する力も必要になってくる……」
「もっと力を入れるぞ」
「ぐぬぅ!」
  眼鏡の男の解説を聞いていた客は額の汗を拭き疑問をぶつける。
「でもなんで指扇はストレッチなんてやってるんだ?」
  眼鏡の男レンズが光で反射する。意味深にクククと笑い眼鏡の弦を押さえる。
「知らん」

「今解放してやる。力を抜け」
  と同時に指扇はパッと手を離す。それにあわせて千野は態勢を立て直し、指扇から距離を取る。
  両肩をぐるぐる回す千野。自分の体の変化に気付き不適な笑みを浮かべる。
「なぜだかわかりませんが体が軽くなったようです。あなたの仕業ですか?」
「……」
「黙り……ですか。舐められたのは屈辱ですが、すぐに後悔させてあげます」
「は……早い!」
  驚愕する観衆!疾風迅雷とはこのことか!千野の動きは常人の目では捉えられない!しかしそれよりも驚くべき光景が目の前で起きているのだ。今まさに心臓を貫かんとしたナイフが獲物の胸の前でピタリと止まりそれを操る腕が押さえられている。
「ヒッ!」
  目に涙を溜め、怯える少女。無理もない。必殺の一撃。それを呆気なく止められたのだから。
「おい、いつになったら後悔させてくれるんだ」
「いー、痛い!痛い!助けて!」
    再び身体を捩じ伏せられる千野。腕を後ろに引かれ、あまりの痛みでナイフを落とす。そこで再び指扇は千野を解放する。
  情けない声をあげながらレフェリーの位置まで這いずりしがみつく千野。涙で顔がぐちゃぐちゃである。
「無理です!勝てません。降参……降参です!」
  しかし首を振ってそれを拒否するレフェリー。当然である。
「それは私が決めることではありません。決勝での降参を認めるのは……指扇紫電様にあります」
  そう!少女が命乞いすべき相手は彼!今目を閉じ、全神経を集中、瞑想しているこの男!指扇紫電である。腰が抜けているのだろうよたよたとフィールドを這いずり指扇に近づく千野。その様子は幼い容姿も相まって少女のようである。
「さ、指扇さん……お願いです。降参します。私の負けを……認めてください」
  すっと目を開ける指扇。その豪腕で千野の頭をよしよしする。
「駄目だな」
  絶望する千野。指扇は続ける。
「今からお前にビジョンを送る」
「あ、あああああ!!!変態!変態!」
  顔を赤くして泣き叫ぶ千野。だが指扇は一切表情を変えない。どよめく会場でそれに向かって指扇は叫ぶ。

  指扇の叫びは会場全員の魂を揺さぶった。上辺だけではない!魂の叫び!それに答える男たち。彼らの心はひとつだった。
  ヤリたい!犯したい!おっぱいが見たい!会場にいる全員の思惑と欲望が合致した。
「ありがとうみんな。そしてサウザンド。貴様には快楽地獄を与えてやる。先程のPNFストレッチによってお前の体はより感じやすくなっている」
  昇天術秘奥義「千魂一手術」人々の思いがなければ、そしてひとつの目標に歩みを進めなければ出せない技。
「く、くそ!てやぁぁぁぁ!」
  一全全一、それはひとつの意思。己の意思は一騎当千である。かの有名な術師はそう言っていた。
「ヒッ……くそぉ!」
  ただし己の意思だけではやはり限界がある。だからこそ回りで支える仲間、応援してくれる人が必要なのではないだろうか?
「こ、こうげきが聞かない……」
「それまでだな。行くぞ、サウザンド!」
  1人では龍を、巨大な敵を倒すことができない。大勢で行けば多くの犠牲を出してしまう。ならば、それを1人が背負えばいい。人々は彼に思いを託した。
「食らえサウザンドォォォォ!!!」
  彼が千野に触れた瞬間。会場に居た全員の意思が奇跡を起こさせる!
  千野の身につけていたものは全て吹き飛び生まれた時の姿に変える。時間はゆっくり進み、千野は少しづつ表情を変えていく。驚きから恥じ、悦びを感じるまでの一挙動作を目に焼き付けた男たち。未発達のおっぱい、ツルペタの割れ目。そこから溢れる黄金聖水。絵にしたら刑務所まっしぐらの光景を男たちは脳内のハードディスクドライブに保存する。
「あ……あ……」
  快楽に溺れながらも、わずかな理性をもって胸と股間を隠そうとした千野。それは叶わなかった。
「まじだ……おっぱいだ……ロリおっぱいに……ロリマ〇コだ」
「こんなの……どんなに金を出しても見れないぞ!」
「いいぞ!指扇!」
「みんな!もっと声援を送るんだ!」
  野太い声が会場に響く。
  オーピーアイ!O・ P・I!大きな声でおっぱい、ワッショイ!
「とどめだサウザンド!あの世へ昇れ」
  あえてここではなにが起きたかは書かないでおこう。ただ、ひとつ言えることは会場内がものすごくイカ臭くなったということだけだ。

       

表紙

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Neetsha