Neetel Inside ニートノベル
表紙

女心なんて俺が知るはずないじゃないですか
改めて新婚生活しましょうぞ

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朝6時。

「にぃーっ」
鏡の前で目と口を横に広げ笑顔の練習。

頬をベシっと叩き気合注入。

「よっしゃぁ。」

先日真希から言われた
「いーい?朝を制するものが一日を制するの。
 恥ずかしいからってツンツンするでもなし、怒るもなしよ?女は笑顔に笑顔を重ねてなんぼのもんじゃ!

男なんて想像以上に単純なんだから、あんたの天邪鬼じゃあ、傷ついちゃうわよ?

まずはあんたの理想、朝ごはんからアーン作戦から実行あるのみっ」


を、早速実践。


早起きは辛いけど、朝アーンのためならばっ!!!




グッ。







朝6:15。


「な‥なおくん。朝だよ。」



ー。貞代がいつもよりいつもより優しい声のような。

俺はまだ半分寝ながら、神谷と後原と話したことを思い出していた。



――――――――――――


「いいか直人、今までの経験、もとい過去のデートから、三次元でも二次元でも属性さえ分かれば基本は一緒のはずだ。女性はご飯の時、胃袋を満たす以上に一緒に食べる時間自体に重きを置く。」


後原もつづく、
「特に、手作りであれば、食べる前にマヨネーズなんて言語道断。すぐにbad endだぞ。まず作ってくれた労をねぎらい、感想はシンプルに、”うまい”で十分だ。ちなみに俺のヒムちゃんはど‥」
「あぁ、十分だ。感謝する。」


――――――――――――



「なおくん?」


俺だってダテにあまたの恋愛ゲーをクリアしてきたわけじゃない。
「貞代、」

グッと貞代の腰を引き寄せる。


「ちょおっ!!!?」



「おはよう、貞代。いい匂いがするな。朝ごはんの前に貞代を…」



「~~ーっ////////」

!!?ーーーっ。



「覚める前に朝ごはんをっ!!!!」


貞代にガバチョふを断られる。





でも、まぁ、今までの俺じゃない。


食卓には、気合の入った朝ごはんが並んでいた。

黄身には絶妙に火の通っていない目玉焼き、縮んでしまったベーコン、そしてシスコーンに香り豊かな納豆とポタージュスープ。飲み物は通にも渋めの緑茶ときたもんだ。


「…。」


「えへへ、気合いれちゃった。」
貞代が笑う。


     


うん、かわいいな。


箸を勢いよく手に取るっ、
「いただきます!」




先日、後原と神谷から具体的な策を得た。
だが、二人には盲点がひとつだけあった。

コレは、結婚生活であって、恋愛ゲームとは違うのだ。




朝食には3つの注意点がある。
恋愛という短期的な関係で終わる可能性がある間柄においては
彼女の手作りに「美味しい」だけでも正解だ。


だが、これは新婚生活に出てくる朝食だ。





今後の人生の味が決まると言っても良い。

苦手なものを、いかに好みのものへと修正させて行くか、




それも、嫁の機嫌を壊さずに、だ。

黄身は固め、ベーコンとは分離させずに出来れば一緒にくっついている形が好みだ。納豆とポタージュは一緒にさせてはいけない。シスコーンは美味しいけれど、出来ればフルーツ系の味派で緑茶は熱すぎて飲みにくいので、覚ましてからだして欲しい。

これだけの希望をいかにうまく伝えていくか。


…ゴクリ。


一口目を飲み込む。
選びに選んだ第一声を言わなければ



「どうかな?」

髪を束ね、まだエプロンのままの貞代が首を傾けながら聞く。



…、うん。かわいい。


「美味しいです。」








それから一週間、似た組み合わせの朝食が続くこととなった。



     

気合は入れてみた。

でも、なおくんが朝何派かなんて今更分からないなんて、、、




聞けない…




うん。諦めちゃダメよ貞代!

分からないなら、とりあえずいろいろ試すのみっ!!




なおくんが食いついたのが好みの朝食のはず。


まずは、
超半熟目玉焼きとベーコンセット。
シンプルにシスコーンも用意して、和食派の時用に納豆も出しておこう。
確か前に好きだって言ってたポタージュスープを置きにだしておいて、渋め派の自体にも備えて緑茶も用意っ!



さぁ、
なおくん、どれを食べる!?









全部食べやがった。









全部美味しいばかりで、どれが好みか分からなかったし、
アーンする間なく全部食べちゃうなんて…。






一週間挑戦した結果…




朝を制する作戦、完全敗北。。。









     

第三回 緊急会議招集。


「はぇえええぇよっ!!?」
後原がツッコム。


「右に同じだ。ってか、お前どうした。」


ギュうぅぅうぅぅうぅうっ。。

一週間、バラエティ豊かな朝食をフルに食べたせいか、俺の腹が悲鳴をあげる。
「…気にしないでくれ。」





「あぁぁあぁぁああぁっ。何が今までの俺じゃない、だ!なんか美味しいって言って作ってくれた朝食食べるほど、貞代は落ち込んでるような気もするし!!俺、俺もうどうしていいか分からないぃぃいぃぃぃっ。」



「落ち着け、直人っ。何度も言うけど、お前俺たちに慰めてもらおうとするのちょっと、失礼だかんな!!?」

「まぁ、落ち着け後原っ。なっ?直人も冷静になれ。」



「うぅ。神谷、いや神ちゃん。俺をお前の嫁にしてくれよぉぉぉ、そしたら、俺嫁の気持ち分かるかな。俺もう一週間もガバチョフ断られているんですけどぉぉお!!?」



「なんだよ、ガバチョフってー!!?」

「とりあえず落ち着けーっ!」




小一時間ほど、ファストフード店での惨劇は繰り広げられたという。








     

「落ち着いたか?」


神谷を前に、俺と後原は 正座on the ソファーさせられていた。



「とにかく、美味しいと言ってお前の嫁さんが落ち込むところから分析する必要があるな。後原。」

「ほい来た!」

後原は神谷に呼ばれるやいなや、3、5DSを起動させる。


「美味しいと言って落ち込むということは、おそらくお前の嫁さんの目的は料理を食べてもらうことではない。料理は何かの手段と考える方が自然だろう。」

神谷が冷静に分析し始める。

「そして、本当の目的がなんなのか確かめるのに最も確かなのは、同性に聞くことだ。…後原、準備は出来たか?」


「もちろんだ。
 既にヒムちゃんがもう朝食を作ってスタンバってるぜ?よく見ておけ、直人。」


俺は3、5DSを覗き込む。

「なっ!!?」



ーーーーー画面の中ーーーー


ほむ:『こーちゃん、もうすぐで朝ごはんだよー?』

裸エプロンに身を包み、漆黒色のツインテールが揺れる。


こー:『すげー美味しそう。ちょっと味見。』
朝食用のウインナーを一つ摘む。

ほむ:『あーっ!?もぉ、盗み食いなんてしちゃダメでしょ!』

ほむほむは頬を膨らまし、少し怒っている。

こー:『ごめんって。笑。でも、すげーうまいよ?』

こーは、後ろからほむほむを抱きしめる。

ほむ:『…。』

少し黙る。どうやら小声で何か言っているようだ。

こー:『ん?』

ほむ:『それは、ほむがアーンして食べさせたかったのに…』



ーーーーーーーーー


「ほむちゃーーーーーーーーーーーーーーーん!!」
後原が海老反り120度の勢いで立ち上がる。


「二、三箇所突っ込みどころがあるが、これで決定だな」
神谷が冷静に俺をみる。


「…、まさか!!?」

「そうだ。この場合、後原が凄く不憫だが、お前の嫁は、リアルアーンが目的のようだな。さしずめ、アーンする間なくお前が全部食べてしまっているんだろう。」


悶絶中だった後原が後ろで落ち込みモードに切り替わっていた。



「話を聞く限り、お前の嫁はどうやらかなりのデレだな。だが、素直に自分の感情を表現することにも抵抗があるんだろう。お前がデレを上手く引き出してやれば、ガバチョふも断られないんじゃないのか?」


「/////////。」
いざ自分のことになるとよく分からなくなるもんだな・・・。



「とりあえず、ここの食事代と後原のメンタルケアはお前に任したぞ。」
神谷は帰る準備を始める。

「あぁ、ありがとう、神ちゃん。それにしても、神ちゃん女心分かりすぎじゃないか?」


「まぁ、ちょっと最近同じようなネタに出会ったのもあるからな。」



っ!?


「じゃあな。」







「なぁ、直人。」
後原がポツリと口を開く。
「なんか神谷から3次元臭を感じた気がしなかったか?」




「…。よく分からないが、好きなもの注文してくれ。」





その日、なにを注文してもしょっぱいと繰り返す後原だった。



     


朝、香ばしいパンの匂いがしてくる。

眠い。。。



もう、朝食でラブラブタイムを、なんて夢かな。
なんて思い始めた8日目。



なんだろう。
キッチンからいい匂いがしてくる気がする。


「貞代、おはよう。」


目が一気に覚める。
「なおくん?」


そこには、三角ナプキンを頭に巻き、私のお気に入り花柄エプロンに身を包んだなおくんが立っていた。

無駄に私より着こなしている感が否めない。




「貞代、朝ごはん出来てるよ。一緒に食べよう。」



「…。」
テーブルには、焼いたパンとジャム。ホットコーヒーだけのシンプルだけどあったかいご飯が用意されていた。



「ほい。」

なおくんがパンを差し出す。




私、ずっと一人で何やっていたんだろう。
どんなメニューだって、好きな人が用意してくれたなら何でも美味しく食べれるのに。



パクンっ。
なおくんが差し出すパンにそのままかぶりつく。



「…えへへ。美味しいね。」








一瞬、なおくんの顔がいつもより優しくなった気がした。




「貞代、俺にもアーンしてくれる?」










新婚生活3週目にして、ちょっぴり甘くなった田沼家。

恋愛に不器用な2人の生活が始まりました。









       

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