【雑誌】週刊ヤングVIP
【作品タイトル】椿の花の雪
【作者名】ふた
【作品URL】http://karaageclover.web.fc2.com/tsubaki/index.html
【ホラーゲーム風作品】
ふた先生の絵柄はとても可愛らしい。
最近、本作とは別に「青いうさぎと黄色いねずみ」というポケモン漫画を描いているが、そちらはもう可愛い女の子たちが可愛いことをするだけで、実にぷげららしい内容となっている。
それに対しこのヤング連載作は、可愛い女の子たちがヤングなことをする内容となっている。
雑誌に合わせて作風はまったく異なるが、絵柄だけは一貫して可愛いので若干そこがシュールに感じられる。
でもこれをゲームとして作ろうとしていたというので納得。
「ゆめにっき」もふた先生はお好きなようだが、本作はそれを目指した内容のようだ。
(※「ゆめにっき」とは、マザー風の可愛らしいドット絵のキャラクターが怖いことをやらかすフリーゲームである)
【伏線色々】
ホラーゲームの筋書きを漫画として描いたものなので、読者に展開を予想させるような推理漫画的な内容となっている。
天候不順に見舞われ、謎の洋館に迷い込む兄・浩二と妹・牡丹。
そこで出会う不思議な少女。
洋館では不気味なことが起きて…。
……という、本当にありがちというか、オーソドックスな展開。
だが実は第1話から結構な伏線が張られており、主人公の牡丹の「ちょっと太った」「吐き気」がそういう意味だったのかと驚かされる。
「罰」が首つり死体の絵、「罪」が母子像の絵。
この罪と罰の意味は11話で明らかになっていた。
やはりきーちゃんの正体に絡んでいたようだ。
適度に情報を小出ししていて、ページを読み進めたくなる仕掛け。
大体予想はついてしまうが、まだ結末がどうなるかははっきりとは分からない。
このあたりの構成力とバランスは中々に見事なものだと思う。
【可愛い×ホラー】
「ゆめにっき」と同様の内容の漫画を新都社でやろうとなったら、ふた先生ほど適任者はいないと思う。(※「web漫画版ゆめにっき」の阿刀田阿子先生を除く)
可愛いとホラーを両立させるのは中々難しいと思うのだ。
それが成功している。素晴らしい。
衝撃的だった牡丹の過去などが秀逸で、コマの随所にお星さまマークのトーンが散りばめられており、それがまたホラー。
ふた先生でないとこの頭のネジが2~3本ぶっとんだ牡丹というキャラクターは描けなかったと思う。(さすがふみかちゃんの娘…)
「灯台から見てた」のふみかちゃんの時は笑って見られたが、牡丹は怖い。
可愛い絵柄で怖いことをやるのはシュールだが面白い。
唐突に出てきたハンマーのくだりは中々笑わされた。まさにゲームアイテムという感じで、女の子が持つには余りに大きすぎる鉄塊…! ベルセルクのガッツでもないとそれは持てないぞ。
【結末は…】
てっきりきーちゃんは産まれる前の牡丹の子供だと思っていたが、牡丹の母がかつて流産して「椿」と名付けるはずだった娘のようである。つまり牡丹の姉。
牡丹と浩二が車で洋館を後にしようとした時、きーちゃんが「置いていかれると思った」と言っていたのもそのことを暗喩していたんだな…。
「罰」とは浩二が母を階段から転げさせてしまって流産させて妹(椿)を死なせてしまったことへの罰。
「罪」とは牡丹が望まれない子供を妊娠したことへの罪。
……で、合ってるかな?
それにしても「灯台から見てた」のふみかちゃんと宮本君の子供たちがこんなことになってしまうとは。まぁ、はっきり明言された訳じゃないからパラレルという形なのかもしれないが。ふみかちゃんも初恋の宮本君と結ばれた上に小説家で成功する夢を叶えたというのに悲しすぎるな……。
いやいや、まだ諦めてはいけない。
たぶん最後は牡丹が自殺を思いとどまり、椿の生まれ変わりを産んでハッピーエンドだろう(棒)
というのが11話まで読んだ感想だった。
【3/15追記】
本当にそうなった。
最終回の12話が更新される。
ふみかちゃんの孫の種は、どこの誰とも知らない買春おじさんになってしまったのだ…。
エピローグの2ページは牡丹が見た淡い雪のような夢幻で、本当は牡丹も浩二もあの洋館で死んでるとかじゃないだろうな…?
水仙が自分の子種を宿した訳でもない牡丹を受け入れるとか、ちょっと強引すぎるような…。
だが、好きな浩二の側にいたいから、敢えて特に好きでもない妹の方と結婚したのだろうか? 無理にSEXしなくても形式上は自分の子供を持てるものなー。
やはりホモの闇は深い。
浩二も牡丹もそれで本当にいいのか!?
牡丹の売春して妊娠した過去も、水仙のホモ設定も、ハッピーエンドにつなげるための布石だったのだ。
釈然としないが、これがふたワールドなのである。