【雑誌】コミックニート
【作品タイトル】ファラトリア・ストーリー・フォークロア
【作者名】ツングー正法
【作品URL】http://falatoriastoryfalklore.web.fc2.com/
【正統派古典的ファンタジー】
フォークロアとは、古く伝わる風習・伝承などを言うらしい。
本作は神聖ファラトリア王国を舞台として、とても古典的な「指輪物語」のようなエルフやドワーフがいるファンタジーだ。
ダガー、メイス、レイピア、ロングボウなどなど。
そうした中世的な武具が細かく解説され、ジョブによるパラメータなども設定され…。
ああ、ファラトリアキャラを使ってウィザードリィーをやってみたくなる!
ファンタジーもので「史実に忠実」という言い回しは適切ではないかもしれないが、大元のモデルである中世ヨーロッパの文化を鑑みて、史実に忠実であろうとしている。
軟弱な量産型異世界ファンタジーが溢れるこの時代、なんと正統派で骨太な古き良きファンタジーだろうか。
そういう意味では、私が最も新都社で好きな漫画と言っている「白の魔術師」に近いところがある。
麗しのキノコさん(ボアティケア)のように魅力的。
実に私好みの作品だ。
玄界灘先生が本作を見て「ブルトンの金獅子」をもっと中世の資料あさって練り直したいとか言っていたが…。
私も同感。こんな凄い中世感ある作品見せられたら、ファンタジー小説書くのにあたってもっと頑張らねばと思ってしまう。
お会いしたことはないが、ツングー正法先生とはうまい酒が飲めそうだ。
【血沸き肉躍り、説得力のある戦闘】
シェイパー(獣人)のシーフであるラスライイが躍動し、ドワーフのガーディアンのボアティケアが突進し、エルフのアルケミストのアルゼイドがエルフガードする。
ヒューマンのソードマスターであるアトレイが華麗に突き、闇のギルド・ブルーディアのアーチャーであるチンゲルが狡猾に立ち回る。
そして後にはゴブリン軍団の流血山河が築かれる…。
この絵的な迫力と説得力が秀逸。
物語の視点は、ギルド員3人と新人のアトレイ、ゴブリン将軍、チンゲルとそれぞれ移り変わる。
ゆえに、登場人物すべてに感情移入ができて、彼らの戦いと死に慟哭し、痛みを感じられる。
読者の感情を奮い起こさせ、胸躍らせる戦闘描写だった。
特に、コメント欄でも悪役のチンゲルが大人気だが、彼が見せたソロのアーチャーの獅子奮迅ぶりが素晴らしかった。
接近されればウォーリアー顔負けの怪力でアトレイの腕を雑巾絞りにする。
複数矢同時撃ち、シーフのナイフ投擲を意に介さず、ガーディアンの盾を矢で貫き吹き飛ばす。
恐らく高レベルなギルド員3人半がかりで挑んだのに互角の戦いを見せる。
アトレイの戦いもまた素晴らしく、矢をマントで回避したり、片腕が使い物にならなくなれば柄頭を握って左手でレイピアを振るう。
武器や職業の特性をよくよく捉えて活写されていて、実に説得力がある。
実際の中世の武具やその使い方がどうだったかは、現代人の我々には伝聞だけで、実際に見たことがないのではっきりとは分からない。
でも漫画としては「実際こうだったんじゃないか?」と感じさせる説得力があればそれでオーケーだろう。
【今後の展開】
ゴブリン砦での戦いが長かったが、物語的にはまだまだ序盤といったところである。(CHAPTER1のまま)
ただここまででもう20話分ぐらいのボリュームがあった。
手堅い進め方で、これがCHAPTER10ぐらいいったら超大作となりそう。
今後の展開だが、チンゲル1人にあれほどまでに苦戦したのだ。
闇のギルド・ブルーディアとはいったいいかなる組織なのだろうか。
光のギルド・レイエムリンについても、ギルド員3人以外の人物の掘り下げも余りされていない。
そして、ゴブリン将軍クリストファーとチンゲルのやり取りにあったように、本当に恐ろしいのは人間なのだろう。
ギルド同士の抗争にもなっていくのかもしれない。
または明らかに侍言葉なアトレイは、イントネーションがファラ語とは異なり、漂流した外国人という描写もある。
そのアトレイを中心として、ファラトリア王国周辺の国々の様子を掘り下げたりもできそう。
ツイッターでアップしていた世界地図を見て心底ワクワクさせられた。
まだまだこれからの漫画で、色んな展開が予想される。
実に楽しみである。
【3/20追記】
最新更新分、豚のジェシカを救出するべくって…。
いや、丁寧だけど早くゴブリン狩りは終えて欲しい。
ゴブリン・ストーリー・フォークロアになってしまう。
チンゲルが最弱といかいってるブルーティアらしき人物のシルエットが。
これはフラグだ。きっとチンゲルより弱い。
番外編とか特にそうだけど、ツングー先生流のギャグって独特のセンスがあって面白い。
アトレイあたりは常にそれに翻弄されてしまう気がする…かわいそうに…。
ツングーに呪いあれ!って言い回し好き。