【雑誌】ベータマガジン
【作品名】ミシュガルド聖典 竜人録
【作者名】マルチスケイル
【作品URL】http://webcomicyou.web.fc2.com/misyu/index.html
【竜人族から見た戦争】
「レドフィン」や「アーリナズ」といった竜人族のキャラクターを産みだしたマルチスケイル先生による竜人族主役の漫画。
竜人族についての細かい設定が知りたい時は本作を読めば問題ないだろう。
このミシュガルドという企画は、多様なキャラクターと設定があるゆえに、1つの作品ですべてをカバーすることは難しい。
小説なら戦記物を書くのにそう時間がかかったりはしないが、漫画だとかなりの作画カロリーを要する。
ゆえに現在のところ、ミシュガルドワールドでかつてあった戦争時代を描いた漫画は数少ない。
本作はそんな中でもかなり頑張って戦争時代のことも網羅している。
ありがたいことに、私の小説「ミシュガルド戦記」をかなり意識して描かれている。
小説を読むのは面倒臭いが、ミシュガルドの戦争時代のことを知りたいという方には、うってつけの作品だろう。
現在のところ、戦争の一側面の竜人族にまつわる話のみに留まっているが、様々な作品の設定を網羅している。
スズカという甲皇国の女軍人キャラがいるが、彼女は色んな作品に出ることが多いが、その設定を全部あったことにしていたのは結構笑った。とんでもなく波乱万丈な人生になっている。
こうやって他作品との絡みが増えると、他作品を読んでいないと話が分からないのではないか?と思うかもしれないがそんなことはない。
その分、ちょっと説明台詞が増えてしまっているが、自然に本作のみで話は理解できる。
そして何より、他作品と絡んでいるおかげで、個人的には「ミシュガルド戦記」のFCを描いてもらっている気分になる。
私だけでなく、多くのミシュガルド作者がそういう気分になるだろう。
シェアワールドを誰よりも楽しんでいるなぁと感じる作品だ。
【戦闘描写が面白い】
ミシュガルドキャラクターは漫画として動かすことを意識されているのかどうか、結構複雑なデザインをしているものも多い。
レドフィン、アーリナズ、フランなども一枚絵ならともかく、漫画として動かすにはかなりめんどくさそうなデザインだ。尻尾とか羽とか。
にも関わらず、本作ではしっかり描かかれている。
アーリナズとフランは可愛いし、レドフィンや丙武は凶暴で、ちゃんとキャラクターの特徴を捉えている。
レドフィンの甲皇国襲撃事件(「竜の牙」という事件名はミシュガルド戦記での後付け)を描いた3・4話。アーリナズとフランの戦いを描いた5話。このあたりは非常に見ごたえがある。
小説でも書けるかもしれないが、やはり漫画になってみると見栄えするものだ。
作画は大変だと思うが続きも楽しみである。
【他の人は余り気にせずに】
漫画を見ての感想ではないが、マルチスケイル先生はツイッターで「竜人録をどう進めたらいいか?」ということを良くアンケートを取ったりして呟いている。
ミシュガルドは他人が作ったキャラクターを借りることになるので、その方たちの意見も気になるのかもしれない。
でもミシュガルド企画をまとめている猿先生・ととここ先生も「パラレルはOK」と言っていることだし…。
自分が思うように、好きに進めれば良いだろう。
でなければ、いちいちミシュガルド作品すべてに目を通し、すべてに配慮し、すべてに矛盾しないよう描かなければならなくなる。
それはいくら何でも無茶である。
マルチスケイル先生が考えるミシュガルドで良いのではないかと思う。
頑張ってくださいとは言わない。
楽しんでください。