じんせいってなんですか？
小児科シュガー

小児科シュガー


イメージを持つのならば、花火です。
私が火をつけると鮮やかに大爆発をしてしまう。その光景は私にとっては至高なのです。いやもしかしたら、光景よりも行為に昂りを覚えているのかもしれませんが。
そうですね。初めは、気紛れでした。
どんな人でもそんな事を言うでしょう？　私もその一人です。やはりほんの気紛れから行為に及ぶのです。
帰り道に一匹の野良猫をよく見かけたのです。にゃぁなんて甘い声を出しながら歩いていく。鬱陶しいなんていう嫌悪はありません。ただ、興味心。それに尽きてしまいます。
理科の実験でアルコールランプに火を付けて――ってこと、貴方はしましたか？　その時どう思いましたか？　火は怖いって思いましたか？　それが一般論だと思います。
私は燃えていくのを見て、ただ美しいと感じました。……野良猫は汚かったのです。美しくしてあげようと思ったのかもしれません。
ライターで野良猫がいる草叢に火を付けました。ぱちぱちと火花が飛んでいき、猫の声が段々掠れていって……。火は抗いもせず燃え盛ります。街灯もあまりない村ですから、火はとても明るかった。小さな虫たちは火の中に飛び込んで一瞬で消え果ててしまいました。
まるでその様子は、花火でした。
真っ赤に空を彩ってしまうのです。貴方にも是非見てほしかった。とっても綺麗でしたから。
――暫く経った後、私は火を消しました。そこには何もなかったのです。甘い香りだけが鼻をつくのです。野良猫も何もかも火は喰らい尽くしました。おぞましくも美しさが有り触れている火に私はうっとりしました。本当に綺麗でしたから。……私が草叢を燃やした事は幸い誰も知りませんでした。この村は長閑ですから。
誰もこの村の住民が野良猫を殺しただなんて思いません。ましてやこの私が殺しただなんて……。
だからこそ私はバレないと確信をしてしまいました。このまま続けてもいいと。…この村起きた火災、ボヤ騒ぎは全て私がやりました。バレないと思っていましたが、バレてしまいました。反省はしていません。

イメージをするのなら……。
いや君に同意を求めるわけじゃない。ただ一つの提案と取ってくれても構わない。その程度だから。
イメージは、まぁ、ブランコの浮遊感。フワフワしてるのが俺大好きなの。漕いでたらどこにでも飛んでいけそうじゃん？ ま、どこでもと言っても限りあるし……結局落ちるんだけどさ。
……話、話を変えよう。
あの子はずっと一人だった。白い肌で細い体。孤高の姫と言わんばかりの清さ。真っ白な純粋。空から飛んでいる時も……。あー、なぁ、あの子、死ねなかったんだろう？ 可哀想に。死ねたらまだ楽だったのに。中途半端に生きたせいで生き地獄だ。早く殺してあげた方がいいんじゃないか？ ま、俺とはもう会うことはないから別にいいんだけどさ。
……二年前の冬？ 俺が一期生だった頃……あー、狭い町で死体が２つ見つかったっていうの？ それ、怖い話だよなぁ。平和にいつも通り暮らしている裏側で自殺した人間の死体がさ迷っているだなんて。
死体、全部、跡形も無かったんだっけ。人身、飛び降り……。
ま、この２人はさっき話してたヤツみたいじゃなく潔く死ねたからいいじゃん。俺はそう思うけど。
ここから出たら何がしたいって？ そりゃぁもう、飛び降りて死のうかーと思ってる。死ぬなんていうこと、一度しか経験できないからさ。
取って置きの幸福だ。