太陽光に熱せられたアスファルトが、積もった花びらを熱して桜の匂いを漂わせた。
住宅地に挟まれた通学路を歩く僕の前を、女子生徒が二人並んで歩いている。
入学式当日に腕を絡ませながらぴょんぴょんと飛び跳ねて歩く二人は、中学時代からの仲良し二人組に見える。
「わたしたち一心同体だよね」
なんて言いながら、一緒の高校に入るために二人で受験勉強に励んだに違いない。
彼女たちの制服は身体にぴったりと合っていて、少し大きめの制服を着ている僕とは違って見える。
女の子は高校生になった途端に、僕たち男の子を置いて完成してしまうように思えた。
僕は高校一年生に居た。
周りを見渡すと、クラスメイトになるかもしれない新入生達が、前の人を追い越さないように気を使いながら、等間隔を空けて歩いていく。
皺ひとつない制服を着て通学路を歩く集団には、期待や不安や緊張や意地や未来が詰まっているように見える。
だけど、僕はそうじゃなかった。
目や耳や鼻や舌が肌が感じるすべてが、胸を届かずに肌の五㎜ほど下をなぞるように滑っていくだけだった。
僕の中はからっぽだった。
身体の芯から溶けてしまいそうな懐かしさだけを除いて。