「おい、糞兄貴」
「なんだい、我が弟よ」
ここは某神奈川県にある小汚い一軒家の一室
そこに一人の男と、その弟が対峙していた。
弟は指をピシっと伸ばすと、それを男の眼前に突きつけてこういった。
「今日は物申したいことがある」
「何かね?」
「ズバリ!! 誤字脱字を直せ!!」
「なぁーにぃっーーー!!!」
死刑宣告か!?
男は胡坐をかいてのんびりと座っていたが、勢いよくがたりと立ち上がると、弟に向けて叫んだ。
「何故そんなことを言う!?」
「うるさい!! 分からんのか!! お前もう半年も新都社で書いてるんだろう!! いい加減直せよ!!」
「ええい!! こちらの気も知れず、何を言うか!!」
「馬鹿野郎!! 読者様第一主義だろう!!!」
バチコーンという鈍い音がする。
弟が男の頬を平手打ちしたのだ。
男はそれを受け、ヨヨヨと床に横たわると、涙目でこう言った。
「よくもぶったな!! 親父にも……
「昨日殴られてただろ!!」
「そういえばそうだな!!」
気を取り直した
弟は正座した兄を前に、説教を始める。
「はっきり言おう、お前が誤字脱字を直さない理由は聞いた。納得こそしていないが、何を言いたいかだけは分かった」
「それなら」
「しかーし!! さすがに我慢の限界だ!!」
「――ッ!!」
「全部綺麗に直せとか!! 古いのを全部修正しろとは言わん!! だがな!! せめて、これからの分だけでも多少マシになるようにしろ!!」
「クッ!!」
それを受け、悔し気に歯ぎしりする男
ここではあえて誤字脱字を放置する理由は載せないが、はっきり言って個人的なものが八割を占めているし、弟が言うように言いたいことは分かるが到底納得できるようなものではないのだ。
弟は優しい顔をして肩をポンポンと叩きながらこういった。
「いいか、ゆっくり治していこうじゃないか。幸いなことに短編の方はそこまで誤字脱字が多くない、更新分だけでも読みなおして、おかしなところを直していこうじゃないか、俺も手伝ってやるよ」
「で、でも……」
「書きだめ分は結構あるんだろう? なら余裕があるはずだ」
「で、でも、見直してもミスがあったら……」
「最初から完璧など望んじゃいない、ゆっくりだ、ゆっくり治そう」
「…………」
逡巡する男
何を悩んでいるのかこのくそ野郎は
だが、その時間はあまり長くなかった。
五分もしないうちに男は顔を上げると言い放った。
「分かった!!」
「何が!?」
「勝負だ!!」
「なにぃッ!!」
「俺にも掃いて捨てるようなものだがプライドがある!!」
「じゃあ捨てろよ」
「シャドウバースのルームマッチで勝負だ!! いいな!!」
「フンッ!! いいだろう、勝ったら俺の言うことを聞けよ」
「後悔するなよ、我が弟よ」
「そっちこそな、じゃあPCを起動してくる、十分後、勝負だ」
「望むところ!!」
こうして二人は一旦を分かれた。
俺は愛用のコントロールロイヤルのデッキ編成を見直して、ルームマッチに弟を招待したのだ。
―――十分後―――
「クソッ!! 惨敗だ!!」
悔しがる男
彼の目の前に再び弟が現れると、こう言い放った。
「馬鹿め!! 貴様のデッキパターンは全て把握しているのだよ!!」
「クッ!! 超越ウィッチに勝てるわけないだろ!!」
「ハハハハハハ、陽光サタンとランプドラゴン、そしてコントロールロイヤルしか持たない貴さま如きに負けるか!!!」
相性が悪すぎる。
短期決戦デッキがない今、超越に勝てるはずなどなかった。
「さていうことを聞いてもらおう」
「クッ!! 殺せ!!」
「男のクッ殺などどこにも需要はない、いいな、誤字脱字を直せ」
「――――ッ!! わ、わかった……」
「聞こえない!! もっと大きな声で!!」
「分かったよッ!!」
こうしてくそ野郎の誤字脱字を直す旅が始まったのだ…………
直せると良いなぁ………
※注
この物語は四割フィクションです。