魔法少女 The Side story
史上最悪の絶望少女戦―結成
あれから数日が経った。
咲夜はフレイヤと同居して、傷をいやしていた。
今日は休日で、久美と詩音もやってきていた。フレイヤの部屋は彩芽も含めた五人が集まってきてて、結構な人口密度となっていた。
そんな中、困ったような声が一つ
「えーと、安藤さん?」
「久美でいいわよ、咲夜ちゃん」
「……何をしているんですか?」
「可愛いかと思って」
「はぁ……」
困惑する咲夜
なぜなら、久美に猫耳をつけられて、何やら愛でられているのだ。彼女は「あげたいものがある」と言って、何種類もの動物の耳を袋に入れて持ってきたのだ。銀鈴は最初、何が何だか分からなかった。
その隙を狙われたのだ。
抵抗する間もなく抑え込まれると、何やら白くてモフモフの猫耳をつけられた。
何でこんなことをするんですか? と尋ねたら、こんな答えが返って来た。
「私、猫派なの」
「…………」
どうしろというのか
困惑する咲夜
フレイヤはその様子を見てニコニコと笑顔を崩すことなく言葉を紡いだ。
「久美はそういうところがあるのよ」
「…え、えぇぇ?」
「似合っているよ」
「…………ま、いいか」
諦めた。
一方の彩芽は壁によりかかった姿勢のまま、ジッと咲夜のことを観察していた。実は沙織という魔法少女と面識がなく、フレイヤがどうしてその魔法少女のことを知っているのかなど色々と知りたかったのだ。
だが観察しているだけではろくなことは分からない。
悪い奴ではなさそうだったが、それ以上はどうにもならない。
そっけない声を上げると、質問をぶつけることにした。
「ねぇ、あなたぁ」
「あ、はい。なんですか?」
「あなたは魔法少女なのよねぇ」
「そうですけど」
「どんな能力を持っているのぉ?」
「私の能力、ですか」
一拍置いてから答える咲夜
本当はあまり答えたくないのだが、信頼を得るためには教えた方が得策だと判断したのだ。
「私は物を増やす能力を持っています」
「物をぉ……増やすぅ……?」
「はい、自分が手にしたものを二つ三つと増やすことができます。鏡が武器だった沙織さんに、私は自分の固有武器を増やして渡していました」
「へぇ……強いのねぇ……」
「ただ……弱点も多いんです」
「それはなにぃ?」
「例えば増やした物の元が壊れると、増えた物も消滅してしまうんです。あと、私の意識が途切れても駄目です」
「そうなのねぇ……、でもぉ、強そうじゃないぃ」
「はい、実際強いです」
「…………」
なんかうざかった。
そんな何気ない話をしていると、フレイヤのパソコンからピンポーンという甲高い音が鳴る。それと同時に部屋中の人間が黙り込み、一気にシーンとなる。何となくであるが全員察しがついていた。
由良からの連絡だ。
フレイヤはゆっくりとパソコンの前に座ると、パカッと開く。
そして画面をのぞき込む。
するとそこには暗い顔をした由良の姿が映っていた。
彼女はフレイヤの顔を確認すると同時に、小さな声で呟いた。
『フレイヤさん。悪い知らせだ』
「何かしら?」
『こっちの目、鼻、口、全員が敗走してきた』
「え?」
『事態を軽く見過ぎていた。どうやら、あの絶望少女は、マジでやばいみたいだな』
「…………そうなの?
『朱鷺、薔薇、彼岸、全員が手も足も出ないなんても持ってもいなかったよ』
「…………」
こんな落ち込んでいる由良は初めて見る。
どうやらそれだけ問題の重要性に気が付いたらしい。
しばらくの間、まるで葬式のような空気が周囲を支配する。咲夜に至っては目元に涙をためて、今にも号泣しそうだった。いつもなら茶化す彩芽と詩音も何も言わない。フレイヤも眉をひそめている。
由良はゆっくりと口を開くとこういった。
『と、いう訳で魔法少女に連ら気をつけておいた』
「あら、仕事が早いわね」
『こちらの朱鷺達三人と、フレイヤ達五人、それに魔法少女十人、全員協力してくれるそうよ』
「……意外ね、そんなに集まるなんて」
『フレイヤさんがそれだけ有名ってことの証明だよ』
「嬉しいわね」
『ボクはそっちに行けないけど、全員柳葉町に集合できるよう伝達しておいた。早い奴はもうすぐそっちに集まるんじゃないか?』
「フフフ、楽しみね」
『じゃ、こっちはこっちで準備があるから今日はここで』
「そうね、さようなら」
『さよなら』
ここで通信が途絶える。
フレイヤは暗い画面を見ながらニッと笑うと小さく呟いた。
「魔法少女連合、結成ね」
魔法少女連合リスト
・フレイヤ
・安藤久美
・枝垂彩芽
・東雲詩音
・銀鈴咲夜
・一寸木朱鷺
・赤井薔薇
・川向彼岸
・遠藤燈子
・葉波友理奈
・佐々木要
・浅野雲雀
・霧江菜穂
・新井木実
・一ノ瀬胡桃
・阿薫
・サン
・ルナ