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担当、甲皇国研究者No.5
対象、オリエント遺跡から発掘された埋蔵物。
それでは、はじめる。
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各国共同の発掘調査隊と提携し、我々が推し進めてきたプロジェクト。
「プロジェクト:アルドバラン」は完成を目前とした。
いや、もう実行に移すだけでほぼ完成といっても差し支えないだろう。
「プロジェクト:アルドバラン」
戦火を逃れ生き延びてきた者たちで形成されたSHW商業連合。
その前身は何だろうか。そして我々が流れ着いた大陸はなんなのか。
ミシュガルド大陸を囲うように形成された各大陸。
なぜ甲皇国とアルフヘイムは戦時中ですらこの大陸に目もくれず
ミシュガルド大陸の取り合いに発展していったのか。
まるでなにかに仕組まれたように。マリオネットのようにただ役割を果たすようだ。
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研究者
「オリエント遺跡から発掘されたものは全部で4つ。」
「通信技術の可視化を表現したようなプレートが3枚。」
「そして脳と内臓に当たる部分が水色の溶液に満たされた人形。」
「どれも材質は同じもののようで。金属とも石油製品とも違うようだ。」
「今回、調査作業中の護衛として用意した者たちと似た材質を持つ者たちを呼んでみた。」
AS-002PIXY(ピクシー)、丙式乙女三体、エリザ・アンド・マキナが順に紹介される。
研究者
「各人、録画録音を開始してくれ。私語は慎むように。」
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魔法と科学の垣根はなんだろうか。一言で言うならばアプローチの方法ではないか。
魔法でいうところのゾンビ、科学による人造人間。彼らに違いはあるのだろうか。
我々はSHWの財力、集客力を利用してそういった生ける亡霊たちを再び甦らそうとしているのだ。
戦火に見舞われた各大陸、禁断魔法が放たれたことによりとても恐ろしいことが起こった。
みな、その死を自覚できないまま生きているのだ。
ある者はいがみ合い、ある者は愛し合い。いずれもマリオネットのように仕組まれて動いている。
我々はこのアルドバランから見下ろしている。すでに地上からこちらへ上がって来た者たちも多い。
今地上で宣っているものたちから見れば、このアルドバランは朽ち捨てられた廃墟のように見えるだろう。
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研究者
「問題が起こった。発掘した人形が動き出した。」
「それと同時に護衛役の計5名が短い時間、痙攣を起こした後その場に崩れ落ちた。」
「彼女ら5名は一斉に歌を口ずさみ始めた。同時に人形も同じ歌を口ずさみ始めた。」
「人形が丙式乙女のうち一体に触れると、人形が丙式乙女と全く同じ姿を取った。」
「触れられたものはその場から跡形もなくなってしまった。」
「どこからともなく同じように人形がやって来て、我々は全員触られてしまった。消えてしまう。」
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以前、胸に紋章を持つ赤毛の青年を見た。
ある側面では身分を変え、名を変え、幸せに暮らしている。
ある側面では木乃伊のような状態でカプセルの中に納まっている。
彼は死んだのだろうか、狭義的にはそう言っても問題ないだろう。
ここからみる地上はある側面では戦争をし、ある側面では平和に動いてる。
またある側面では時間の止まった世界も数多くある。
アルドバランから見る地上はまるで多岐にわたる物語のようだ。
だが裏を返せばここアルドバランが地上の者たちの終点となる。
我々は一度物語を終わらせ、魂を回収し、再び種を撒く準備を始めた。
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研究者
「こんなものでいいだろうか。」
「上手くテープを拾わせて、我々は上でのんびりするとしよう。」
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水平線から見るこの世界は四方を大陸が囲うだけのだだっ広い海。
そして天蓋から釣り降ろされたアルドバランという名のシャンデリア。
もう一度、キチンと最終兵器を起動してこの世界を作り直そう。準備は出来た。
さぁ、外宇宙から創造者を迎え入れる準備を始めよう。
アルドバラン完結