Neetel Inside 文芸新都
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僕の狂ったエネルギー
ランニング走者

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20代。
この若さが永遠に続くんだ。
それが幻想だと気付いたのは鏡の前だった。
出た腹、うつろな目、イブニングシャドー。
なんとかこの現状を打開できる策を練らなければ。
俺は考えた。一日中、そればっかり。それしかやることが無いやつみたいに。
俺は一つの答えにたどり着いた。
ランニング…有酸素運動だ。
そう思った俺のつま先は、すでにニューバランスのランニング・シューズの中に収まっていた。


走り始めた時、俺は誰か別人になってた。
リンジー・ローハンみたいに息切れしていた。
とかなんとか。
走り出したら青春映画の主人公みたいになれるかと思ったけど、違った。


あぶらっぽい汗でドロドロだし
ボサボサの髪は目にかかって邪魔だし
ランニング・ウェアはダサいし
犬を散歩させてるおばさんに追い抜かれるし
西日がまぶしくてうつむいてるし
自転車とぶつかりそうになるし
うんこ踏みそうになるし
喉は乾くし
しんどいし
排気ガスは臭いし
ハトは限界まで逃げなくて邪魔だし
浮浪者が新聞越しに見てくるし
知り合いを見かけて見てないフリを強いられるし
「川をきれいに」って看板はなぜか河童が溺れてる絵でダサいし
道路脇の焼き鳥屋が煙たいし
信号にひっかかるし
足はひねって靭帯プランプランになるし
変な歌謡曲うたってるおっさんはいるし
肌は乾燥するし
腕時計に肉が挟まって痛いし
バカみたいな子供が指さしてくるし
坂道は急だし
アスファルトは修繕されずに荒れたままだし
男子高校生はTシャツの英字を読み上げてくるし
雨降ってきて寒いし


とか愚痴をこぼしている内に、俺は目標としていた距離を走破した。
その距離、キロに換算するところによれば3キロ。
体感では、バスコ・ダ・ガマよりも冒険的で壮絶な旅をしていたような
気がしなくもない。
これなら毎日続けられそうだな。
それが幻想だと教えてくれたのは
翌朝筋肉痛になっていた俺の両太ももだった。
ランニング・シューズは今、ファラオ王よりも長い眠りについてるらしい。


       

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