オナホに恋した女の子
黒瀬愛奈の危機
「ただいま……」
私は部活を休み、直帰して家に帰った。
現在四時三十分
兄は高校生なのだが、高校が終わる時間が大体四時なのだが、部活に行ってから電車に乗って家に帰るので大体六時から六時三十分ごろに帰ってくる。つまり、約一時間半の余裕があるということになる。
それだけの時間があれば、兄の部屋に忍び込み、オナホを盗み出して自室に戻りじっくりと愛でるぐらいの余裕はあるだろう。
「…………」
今晩は愛しのオナホとOne Night love だ
濡れるッ!!!
もうすっかり発情してしまっている。
私はギリギリ理性を保ちながら、廊下を進むと兄の部屋の前に立つ。
頭の中で何度も思い描いたように動く。
何の躊躇もなく腕を伸ばすと、ドアノブをしっかりと握りこみ、ゆっくりと回す。そして一気に開くと兄の部屋を開放する。すると、健全(?)な男子の部屋特有の汗その他が混じったムワッとした空気が流れ出てくる。
私はそれを全身に受けつつも、躊躇することなく一歩前に踏み出す。
あの部屋は思いのほか片付いている。
ベッドと本棚、そして箪笥と学習机と椅子があるだけ、そこまで広い部屋ではない。
それゆえ、オナホを隠せる場所も限定されている。
連日にわたる覗きの結果、私は隠し場所を特定していた。
箪笥の一番下の段、そこに詰まっている下着の下に隠しているはずだ。
私はまっすぐそこに向かって行くと、膝をつき、箪笥に手をかける。
心臓がバクバクなっている。緊張のあまり心臓が口から飛び出てしまう気がする。だが、そんなこと現実にあり得るはずがない。私は、ゆっくりと、それでもしっかりと箪笥を開こうとする。
あともう一歩
あともう一歩なのだ。
もうすぐ念願の彼に会える。
そう思った瞬間
「愛奈、何をしている?」
「―――ッ!?」
兄の、藤二の声
私は首が吹き飛ぶんじゃないかと思えるぐらいの勢いで振り返ると、声のした方を見る
すると、信じがたいことだが、扉に手をかけてこっちを見ている全裸の兄の姿が飛び込んできた。
もう一度
全裸の
兄だ。
私は困惑する。
どれぐらい困惑しているか例えて言うと、比較的まともな小説ばかり書いていた三流新都社文芸作家が、第十一回目の感想企画にして突然オナホを題材にした純愛小説をぶち込んできたのを見た某鹽竈先生ぐらいのモノだった。
何を言っているのか分からないでしょう
私も理解ができない。
そんな私をよそに、兄は真顔から突然嫌な笑みを浮かべると言った。
「そうか、愛奈も俺のことが好きなのか」
「え?」
愛奈「も」?
余計に混乱する。
一気に体中の熱が冷めていき、冷静になっていく。
私はなんとか口を開くと、たった一つの疑問を尋ねる。
「ど、どうして。家に……」
「体調が悪くて早退したんだ、で、汗かいたから風呂に入ろうと思ったところに愛奈が帰って来たのさ」
「――ッ!?」
予想外だった。
完全に固まった私をよそに兄は小さく嘆息するとこう言った。
「なんだ愛奈、そんなに俺の下着が欲しいなら直接言えばいいのに」
「え!? ちが……」
「いや、みなまで言わなくていい」
そう言いながら、
兄は一歩前に出ると非正規英雄の石動堅悟もびっくりな腰のエクスカリバーを屹立させると言った。あれがオナホに収まっている間は多少なりともいとおしいと思えたが、今ではただの凶悪な肉棒だ。
私は怯え、座り込んだ姿勢のまま後退る。
そんなか弱い小動物のような私を、狩りをする肉食動物のように追い立てながら、兄はこう言った。
「さぁ、愛奈、やらないか」
何を、とか
それは違う、とか
突っ込みどころはいくらでもあったが突っ込むことができなかった。
というか、このままでは一方的に突っ込まれてしまう。
私は
産まれて初めて貞操の危機にさらされていた。
To be continued、、、、、、