そう、彼が宇宙のおにぎり屋さん。
滅んだ星の生命の残滓を固め成すことが出来る。
彼は星に降り立つと本当に何気なく手を重ね合わせた。すると呼応するように星の表層が淡く光り始め、幾筋かの光が宇宙服を這い上がるようにして掌の隙間に吸い込まれていった。
いまだ物理では解明出来ない不思議で、非常に美しい現象であった。
星の輝きが落ち着き始めると、指の隙間からこぼれる光は一層強くなる。
そして長い長い一握が解かれた。
彼の胸元には球状の光が浮いていた。おぼろげに背に羽を付けた小人のような姿を見て取ることが出来る。誰の目にも妖精を思わせた。
何度となく繰り返された彼の奇跡の証明であったが、今度も宇宙服のモニター越しに多くの人がため息を漏らす。
それほどに美しく神々しい光景であった。
どういうわけか固め成される生命はいずれも妖精の形をしている。
理由はまだ分かっていないとされている。
新しく生まれたこの無垢な命もTKSN研究所に送られ、生命の神秘解明の一助となることだろう。
ああ、真理に到達するその日のなんて待ち遠しいことか!