「おい、どうする?」
「いや、そんなこと言われてもね」
「…」
「うーん」
猫達は地下に向かうハシゴを前に、手をこまねいていた。
「だって俺らさ、人間じゃないじゃん」
「そらそうだけど、ここまで来て引き下がれるか?」
「……」
「じゃあお前が行けよ」
彼等が苦労して、蓋の鍵を開けたのが数刻前。嬉々として、宝の埋められている地下へと向かおうとした矢先、気づいてしまったのだ。
「俺達にハシゴを降りるのは無理だろ」
「いや、でもさ、ここまで来て引き下がれるか?」
「もし手を滑らせたらよぉ」
「……」
彼らは猫である。議論には向いていない。
先程から同じ所をぐるぐる回っていた。
「じゃあさ、じゃんけんで決めよう」
「もうそれでよくね?」
「でも俺ら猫じゃん」
「どうやってじゃんけんすんの?」
「確かに」
「……」
「てかお前は何か喋れよ」
「……」
ずっと黙っていた猫は、重々しく口を開いた。
「俺にいい案がある」
「!?」
「……今は3時だ。家に戻って煮干を食べよう」
猫は互いの目を見る。
「ああ。そうしよう」
猫達は至極満足そうに微笑み合い、その場を離れた。