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8-bitを語る
「ゼルダ」の衝撃<1>

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2017年3月3日。
任天堂の血脈の一部で、ゲーム史に燦然と輝く「ゼルダの伝説」の完全新作、
「ブレスオブザワイルド」が発売された。

その革新的なゲームデザインは、
一部のユーザーから懸念された不安を一掃し、
メタスコアでは98点という驚異的な点数を叩き出した。

ーこの偉業は、如何なる方法で生み出されたのか?

時は2015年まで遡る。
そもそもこのゲームは、2015年に発売される予定であった。
更なるブラッシュアップの為に発売日を延期するという話であったが、
2015年6月、世界的なゲームイベント「E3」で発表された内容は、
ゲームファンのみならず、任天堂ファンを少なからず落胆させるものだった。

「ゼルダ」の新作映像を期待していたユーザーは、完全に肩透かしを食らった。
携帯ゲーム機用のトライフォース三銃士と、「ゼルダ無双」の2作品。
任天堂にとっては重要なマスターピースに違いないが、
ゼルダの正当な血脈を継ぐものではなく、いわば「スピンオフ」と呼ぶべきものである。

しかしそこは天下の任天堂、
そうは言っても、最後に新作の映像を用意しているのでは?と期待してかかったユーザーもいただろう。
だが発表の終盤に待っていたのはファンが演奏するマリオブラザーズの動画であり、
ともすれば「尺埋め」とも取られかねない冗長な時間であった。
このE3の発表を見た後、ゲームファンの間で、一抹の不安が広がった。

―もしかして任天堂には、もうAAAタイトルのゲームを作る力が無いのでは?

他のメーカーが膨大な資本と期間を投じて製作したAAAタイトルのゲームに、
任天堂のゲームは、明らかに「劣っている」とは言わないまでも、
ビジュアル的な希求力に欠けていた。
フォトリアルでゴージャスなグラフィックを追い求める他のゲームメーカーに目もくれず、
任天堂は相変わらずキャッチーでポップな、誰が見てもわかりやすいゲームを追及していた。

浮かび上がってくるのは、任天堂の一貫したクリエイティビティの精神である。

つまり「本当に面白いものを作る」。

花札メーカーからのし上がって世界的な企業に座する今でも、
任天堂の「遊び」に対する精神は一貫しており、
クオリティや物量で勝負するようなゲームとは、常に一線を画し続けてきた。

初めて買ったおもちゃに触れた時の喜び、新しい創造性。
技術やビジュアルに捉われるのではなく、本当の「遊び」を追求すること。

それこそが任天堂の精神であり、魂であった。
「マリオ」を生み出したゲーム界のカリスマ、宮本茂氏は、そのフォーミュラを一貫し続けてきた。
だがその「遊び」の精神は、もはや時代遅れのもので、
任天堂は「古びたおもちゃ」を作るロートルに成り下がってしまったのでは?
という懸念が、一部のユーザーの間で蔓延し始めていた。
ハイ・クオリティを求める時代を読み違え、海外メーカーとの技術競争に負けてしまったのだろうか?

実際「フォールアウト4」の発表でも、マリオを模したようなミニゲームが紹介され、
もはや任天堂のゲームは時代遅れで子供向けだ、とでも言わんばかりの
ブラックジョークが飛び出してくる始末であった。

だが任天堂は、決して信念を曲げなかった。
そしてそれは「意地」ではなく確信に満ちたものだったのだ。

時を越え2017年3月、任天堂は自らそれを証明することになる。

       

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