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★文芸・ニノベ作品感想5★
6月26日文芸感想

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★6月26日更新文芸作品感想

第六回の更新作品数は3でした。
前回ニノベの感想について、私がタラタラしていたことに非があると思いますが、感想をageる前に「非正規英雄(アルバイトヒーロー)」が再度更新されたので、ルールに乗っ取り感想回避と見做しました。
今回も先にサイコロを振ってしまいます。

■初回感想対象日
サイコロ (3,1)
日付 2017年7月3日
雑誌 ニノベ

よろしくお願いいたします。

以下の作品感想を書きます。

「ミシュガルド戦記」
「黒兎物語」
「私の親友について私に何が言えるというんだ」

     

「ミシュガルド戦記」
後藤健二
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18210

 前回の文芸でも感想を書かせていただいたミシュガルド戦記。ゲオルク編を読み終えていたので、ヤングゲオルク編を読んでいきたいと思います。

【ヤングゲオルク編】 9話 甲皇国の闇

 フローリアでの戦闘を終えアルフヘイムのセントヴェリアに帰還したゲオルク。しかし、ラギルゥ一族は、ゲオルク達はフローリアのために戦ったのであり、金の支払いを拒みます。5話であれだけの啖呵を切っておいて戦果さえあればなんとかなると思っていたゲオルクも、甲皇軍がセントヴェリアの目と鼻の先に迫っている現状で戦力を捨てるラギルゥ一族も、人々の生活を背負うにはあまりに浅はかすぎる気がします。甲皇国についての詳細はあまり知りませんが、いずれにせよアルフヘイムは滅亡の道を歩んでいくのではないかと思います。
 ゲオルクは若かりし頃、甲皇国の傭兵だったことが明かされ、物語はその頃に飛びます。ヤングゲオルクというわけです。前回今回と読んで、ミシュガルドに対する慣れというか、ミシュガルド戦記に対する慣れが出てきたように思います。本作から入ったことにより、他のミシュガルドも読んでいけるような気持ちになっています。
 甲皇国は甲皇国で気候的なハンディキャップがあるようで、これが戦争が決着しない理由の一つなのでしょうか。若きゲオルクは凶暴で、それを思うと現在のゲオルクはだいぶ落ち着いたほうなのですね。

10話 ミシュガルド計画

 皇帝の演説にて、真実か否かはともかく古代ミシュガルド文明の存在が示唆されます。ただ一方で国民はそんな大義名分を信じて戦争をしているわけでなく、戦争により豊かになる道を信じているようです。
 甲皇国は階級社会のようで、甲乙丙という三つの貴族家と丁という平民にわけられるそうで、さらに丁民の中にも階級があり、ゲオルクはその中でも下層民出身だそうです。ただ、現在は破格の出世をして騎士の身分ではあるようで、この後王になるのであれば、華麗なる立身出世の道を歩むようです。途中で出てくるゲオルクの強さが圧倒的で、平手打ち一発で目玉は飛び出るは顎も外れます。恐ろしい。そしてそれを発端としてゲオルクは丙家と乙家の争いに巻き込まれていきます。そして、補足によって古代ミシュガルド文明の実在が明かされるという衝撃の展開。ミシュガルド界隈では古代ミシュガルド文明の実在は共通認識なのでしょうか。紹介漫画は読んだのですが、忘れました。

11話 マッド・ボルトリック

 新たな登場人物として現れるボルトリック。本話では亜人食いが行われます。あるいはボルトリックに言わせれば魔物食いなのでしょうか。私たちも間接的にとは言え何かを殺して食べているわけですが、何を食べて何を食べないのかに関して、倫理的あるいは自らの精神的健康のために、味以外の線引きを考えたことはあるかと思います。ボルトリックはその線引きを知性としているようです。ゲオルクはそれを聞いてボルトリックの知性を感じます。こういう遊びが入ってくると、筆が乗ってきているのだろうなあと思います。とりあえずボルトリックは知性があれば亜人、なければ魔物という線引きをしているようなので、物語のどこかで知性ある魔物が出てきた時に彼の価値観がどう変わっていくのか、なんて話も読んでみたいなと思いました。

12話 天空の城アルドバラン

 ゲオルクとボルトリックはダンジョンの下層へと向かっていきます。思ったより早く知性ある魔物が出てきます。特に言及がないので、知性ない亜人を魔物扱いしているだけだったようで、知性ある魔物ももちろん魔物だという考え方のようです。話中にハーピーのささみ肉がでてきますが、素直な解釈でいくと胸肉なので、ハーピーの形状を考えると最早人間ではないかと思ってしまいます。どこか鳥の部分に、笹の形をした別の肉があったことを祈ります。

13話 浮上

 洗脳されたエルフの剣士シャムとゲオルクの戦いが描かれます。緊迫した戦いの中、決着のきっかけとなるのはある意外なものでした。タイトルの通り天空の城アルドバランは浮上していくわけですが、こんなものを手に入れたのに、ゲオルクは小国の王にしかなれないのでしょうか。なかなか世知辛い世の中のようです。

14話 帰還

 さて、前話の疑問はさっそく本話で解決されます。うまく手のひらの上で転がされています。アルドバランは姿を消してしまったようです。甲皇国が古代ミシュガルド文明に興味を示していたのは、近代的な兵器だと思われていた甲皇国の兵器がどうやら古代ミシュガルドに端を発するかのようなのです。謎が少しずつですが明らかになってきて、こちらで勝手に妄想を始められそうな量になってきました。さて、ゲオルクがそんなことをしているうちに、甲皇国にいるエレオノーラに事件が起きていたことが明らかにされて本話は終わります。

15話 絶望

 エレオノーラを失ったゲオルクはそれだけでなく、ミシュガルドの秘密を知りたい貴族からの拷問を受けます。巻き込まれた乙丙両家の政治的な争いから結局抜け出せないままです。そして、彼が助けだされるのもまた別の国の政治的な理由という皮肉。絶望の中、「……だが、まだやることがある」と言うゲオルクが目指す先はどこなのでしょうか。

16話 傭兵王

 ゲオルクはどうやら天空の城の件で有名になったことを利用され、SHWの傀儡国家の王として傭兵王になる様子。しかし彼のやるべきこととはそんなことではなく、エレオノーラを助けにいくこと。アスタローペの宝玉を持っていると自動機械兵には襲われないそうなのですが、アルドバランを追い出された時はなぜ襲われたのでしょうか。三人いたうちの持っていない二人だけが狙われていたのか、ロボット兵は自動機械兵とは違う仕組みなのか、いずれ謎解きがあるのでしょう。拷問で体力を失っていたゲオルクはなかなかエレオノーラのもとに辿りつけませんが、とある指輪によって大事件が起きて無事侵入できます。そして甲皇国の食糧問題まである程度解決をみるあたりが恐ろしい。なんとゲオルクは皇帝とエレオノーラの寝室にまでたどり着きます。愛を確かめ合う二人。そして求婚するゲオルク。拒絶される。と綺麗にコンボが決まっていきます。エレオノーラはエレオノーラで貴族の娘としての誇りがあるようです。「私はあなたの子を産むでしょう」とエレオノーラ。不妊に悩む世の夫婦にぶん殴られそうですが、物語ではそういうものなのでしょう。そしてゲオルクは傭兵王への道を歩んでいきます。
 設定から少し外れたことに対しての説明が余談として添えられています。キャラクター登録所を見てみると、それぞれのキャラクターに対して愛ある設定が細かに描かれています。設定改変可の文字が至るところに踊ってはいますが、どこまで登録者の設定を尊重するのかはなかなか難しい問題となりそうですね。
 今回はここまでにします。

     

「黒兎物語」
バーボンハイム(文鳥)
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18317

 きぼん連載アサシーノスで有名バーボンハイム(文鳥)先生による本作。もう114話まで進んでいるようです。ミシュガルド戦記に続きこちらもミシュガルド作品の様子。ミシュガルド戦記において、アルフヘイムの北方戦線で黒兎人は登場済みなので、楽に読み始められるかなあと期待しております。

登場人物紹介

 かわいいドット絵で登場人物紹介がなされます。これだけでも一見の価値ありですね。上から3人目のディオゴさんが気になります。アサシーノスのディエゴさんとは関係ないのでしょうか。バーボンハイム(文鳥)先生は妹と兄という関係がお好きなんですかね。

4 亜国大戦編 前編 アルフヘイムの深淵

 4から始まるのですが、これから読んでいいのでしょうか。分からないのでとりあえず読んでいきます。ミシュガルド戦記でも読んだ白兎人族と黒兎人族の軋轢が描かれていきます。むしろこちらが先なのでしょうか。本企画により偶然ミシュガルド戦記を先に読んだ身としては、詳しく説明してもらって二度美味しい気分です。

2 ダニィとモニーク

 本作の主人公、ダニィとモニーク。二人の微妙な距離感が描かれます。そこに愛があるのに何もできないと言うのは本人たちからすればとても辛いことなのでしょうが、個人的にはとても美しく感じてしまいます。愛が利己的か利他的か私は答えを持ちえませんが、お互い辛い愛というのはどこかにその本質を蓄えているように思えてしまいます。

3 ダニィとディオゴ

 3人目の主人公、ディオゴ。妹モニークの男性恐怖症は白兎人によるレイプにあり、その復讐のためレイプを繰り返す。ダニィはそんなディオゴを軽蔑し、もう3人の関係は元には戻らない。何が正しくて何が間違っているかなんて私は知りませんが、誰かのためと口にする人にあまり好意を抱けません。行動を正当化するために他者を持ち出すこともそうですが、そもそも自らの行動をわざわざ正当化しないと生きていけないのかと思ってしまいます。そしてそんな私は、新都社小説の役に立たねばと言って本企画を引き継いでいます。

4 神に望む幸せ

 ダニィが望む幸せは彼女に触れること。個人的には、中村中の友達の詩が思い浮かびます。いずれにしてもただ切ない。そしてアリストテレスが言ったようなカタルシスがここにあるなら。切なさに触れることで我々が精神の浄化を望んでいるのなら。他人の不幸によって自らの精神安定をはかるように設計された生物のようで、余計に切なくなります。

5 野蛮人のジレンマ

 ディオゴがレイプする自らに対し虚しさを感じてジレンマを感じているのでしょう。物語の読み方としてはディオゴに感情移入していくのが正解なのでしょうが、ディオゴの性格に始めから好意を抱けていないので、最低野郎がこの期に及んでまだ自己正当化を望んでいるんだなあとしか思えませんでした。事件前のディオゴに触れていれば違ったのでしょうか。同情の余地なしとはこういう感覚なのかもしれないと思いました。
 今回はここまでにします。

     

「私の親友について私に何が言えるというんだ」
一階堂 洋

 やっぱり私は掌編が好きなんだなあとしみじみ思いました。長編を何度も読むのは時間的に骨ですが、掌編は何度も読めます。科学用語が散乱したり精神障害者が登場したりするので、真実と妄想の間に物語が揺蕩っています。コメント欄に宇宙語ゴッコを喜々としてやる子供というのがあって言い得て妙だなと思いまして、私たちは自分が思いついた言葉や表現、あるいは真理への妄想みたいなものを誰かに見てもらいたいのかもしれません。もちろん私も。物語の種は案外そんなものなのかもしれません。

箱のうちの未知

 精神薬パキシルを飲む母を持つ語り手。母のことを名前にさん付けで呼んでいるなどある程度距離がありそうです。滅多にない母の実家への里帰り。そこで語り手は祖母と心を通わせていきます。ある種のテレパシーのように。猫は好かずハムスターを飼う祖母。里帰り最終日、急になにを考えているのか分からなくなった祖母に手を引いてつれていかれた先には。といった感じでしょうか。箱のうちの未知は結局我々読み手にとっても未知のままです。語り手も確かめようとはしません。あるいは彼女の中に答えはあるのでしょうか。未知はすこしずつ語り手の心を蝕んでいくようです。最後の一文がなぜなのかは私にはわからないままです。また時間があるときにでも読み直します。

今すぐに!

 文芸ニノベ短ページ漫画化企画で深爪先生により漫画化されていたこの作品。別企画の一枚絵文章企画2017以来、深爪先生の絵に心惹かれていたので羨ましいなあと思いました。
 狂った中年の東口さんとぼくのお話。怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよとどっかの誰かが言ってましたが、このお話の怪物は東口さんなのかぼくなのかどちらなのでしょうね。前話に続きパキシルが出てきます。作者にとって精神異常のステレオタイプ的な何かなのでしょうか。執着を感じます。

兵士たちは演習の一環として夜通し歩かされた

 科学用語の散乱する本作。正直読む気が多少失せますが、感想企画なので読んでいきます。親切に誰かが何でも説明してくれる昨今、分からないなら分からなくていいよという小説が書けるのは、新都社ならではですね。
 科学者でない市井の人間には興味の湧かない科学の大事件が冒頭で起こるわけですが、それに対して熱力学のみはほぼ同じ形で生き残る、ということになっています。作中でもエントロピー増大の法則については受け入れるという表明なのでしょう。きちんとした理解をして読んでいくのはしんどいので、時間が進めば進むほどエントロピーさんは増えていくんだ、という法則だと思って読んでいきます。冒頭の大事件によって、時間ってなんだっけ、となったので、逆にエントロピーさんがどれくらい増えたかで時間の進み具合を考えましょう、と。物語中に何度も孤立系とか閉じたとか出てきます。エントロピーさんが部屋から出ていけてしまうと、時間が進んでも部屋の中のエントロピーさんが増えるかどうか分かりません。時間が進めば進むほどエントロピーさんが増えるのは閉じた部屋の中だけの話なのでしょう。ところで私たちの宇宙って今この瞬間の宇宙から外に出て行けないんだっけ、という辺りから物語が膨らんでいきます。
 感想というより自分勝手な解釈みたいになってきてしまいましたが、結局僕はなぜ兵士だったのでしょうね。科学的決定論のようなものに囚われていた気もしますが、私には結局読み取れないままです。ニンゲンは犬に食われるほど自由だ、と誰かが言ってましたが、死に触れ合うことで人は自由になれるのでしょうか。まるで死によって自由を齎されているようで、死という他者の介在を必要とするなど自由からはほど遠い気が私にはしてしまいます。
 今回はここまでにします。

     

コメントに頂いている通り、ペースに無理がある気がします。
もう少し様子を見て、無理そうならルール改変を考えます。

■第七回感想対象日
サイコロ (3,1)
日付 2017年7月3日
雑誌 ニノベ

よろしくお願いします。


鹽竈先生への私信

ローレライの剣を持つのは後藤健二先生だけです。
どうか共に歩んでいただけたらと存じます。

       

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