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★新都社作品感想2018★
2017年11月4日「あひるご飯」

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11月2日更新作品から


「あひるご飯」http://ahirugohaan.web.fc2.com/



 どんぐり政子先生作品。
 本当に無料で読めるのが信じられない作品だ。週刊少年ジャンプに掲載されていても全然驚かない。
 画力に関しては新都社でもトップレベル。特に「見やすさ」に関しては他の作品に比べても抜きんでている。背景、人物の構図や位置関係が凄く分かりやすく、漫画の教科書を見ているようだ。
 鳥山明の「ドラゴンボール」をリアルタイムで読んでいた私には物凄く懐かしい雰囲気である。コメントでも「鉄拳チンミ」にも絵柄は似ているとあったが、ドラゴンボール初期のレッドリボン軍と戦っていたあたりの絵柄とノリではないかと。あひるハンターの面々はレッドリボン軍の怖いけどちょっと間抜けな悪役たちを想起させる。
 また、天孫のキャラデザインも素晴らしい。あひるといってもリアルではなく、可愛くデフォルメされた親しみのある顔だし、そんな漫画的なあひるの頭に人間の武闘家のような鍛えられた肉体。これは孔雀ヘッドとか、変態仮面とか、そういうものを連想させる。孫悟空のツンツン頭のように、奇抜なようでいて秀逸な「漫画の顔」だ。あのあひるヘッドを見れば、「ああ、あひるご飯だね」とすぐ分かる特徴的なキャラデザで、これもまた商業漫画で売れる要素で、教科書的と言える。
 ただ、基本に忠実で教科書的とは言ったが、読んでいて不可解な点がある。「あひるのどこにそんなに価値があるというのか?」だ。作中でもあひるが高く売れるという描写があったが、人語を喋るあひるという点で珍しいのか? でも殺して食べちゃうぞーというような描写もあったし、殺しちゃただの肉だから「人語を喋るあひる」という希少性は失われる。ハンター協会のようなものが出てきて、A級ハンターという言葉も出ているが、やはりそこまでしてあひるを狩ろうとする理由が分からない。もしかしたら人類とあひるは白人とインディアンのような関係で、互いの生存圏をかけた種族間闘争とかそういう重い話なんだろうかとか、色々想像してしまう。
 分からないと言えば、パンテーラという女性キャラが何を考えているのかも良く分からない。この子は新人あひるハンターということで甘い性格をしているようで、悩みながらもあひるママさんを殺害し、あひる質となったガー助やガ次郎を殺すのを躊躇う様子を見せ、ボスのピューマを裏切りそうになって、悪役だったはずが天孫の味方のような顔をしているのだが……でも可愛いからいいか(笑)と済んでしまっている。これはアニメオリジナルの方のドラゴンボールで、ピラフ一味のマイが原作では単なる悪役モブだったのに、可愛いから何となく味方になってしまっているような違和感を覚えた。あひるママさんを殺害してしまっている以上、何の清算もせずにこのまま天孫たちと慣れあうのは頂けない。むしろ哀愁が味方になった方が自然だ。
 まぁ、こういう不条理な要素も、鳥山明先生の初期作品短編集の「鳥山明○作劇場」っぽいなぁとは思うから、意図的にやっているのかもしれないが。

 それに、何もかも説明されつくしてしまうのが良いとも限らない。WEB漫画なのだし、謎というかツッコミどころを多少残したまま進め、ノリやアドリブで展開をコロコロ変えていってしまうぐらいの方が、読者としてはコメントしやすくて良いと思う。語られていない設定については行間を読めといわんばかりのニュアンスでほのめかすぐらいの方が考察する方も楽しい。
 で、そういうことが許されるのもこれだけの高画力があってこそだと思う。絵的な説得力が凄いので、別に文章でそこまで語らなくても、キャラクターの断片的なセリフだけで設定を考察させるぐらいのパワーがあるのだ。
 世界観を説明しようとする余りに文字だらけになって読みにくくなってしまう漫画は多い。逆に、説明不足すぎてキャラクターの行動が不可解に感じられ、更に画力が低かったりしたら普通はクソ漫画やネタ漫画扱い扱いされたり、軽薄短小に感じられる。
 でも画力が伴うだけで何か高尚な意味があるものと感じてしまい、読者が考察しようとする。説明(話)の方は、あってもなくても関係ないといわんばかりに。
 つくづく、画力はパワーだ。RPGでレベルを上げまくって物理で殴るだけでずんずん強引に攻略していく感じ。
 少なくとも、松本人志に踏み殺されるようなヤワなもんじゃない。
 こんな凄い作家さんがいるんだから、まったく新都社って恐ろしいところだ……。





以上です。 

       

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