2017年10月20日更新作品から
「ビビの日々 ミシュガルド奇談」http://www.studio-uccello.com/MIS_vivi-hibi/vivi-hibi_index.htm
ウッチェロ先生作品。
2015年から続いている新都社シェアワールド企画のミシュガルドは、世界観やキャラクターをシェアしながら思い思いに作品創作していくもの。
ウッチェロ先生はかなり多くのキャラを登録していて、ビビを始めとして10以上のウッチェロキャラがいる。そのキャラたちは、他の作家さんも独自の解釈で漫画や小説を創作して登場させていく。
ミシュガルドにおいてはこれが実に楽しい。
自分の登録したキャラが色んな面を見せてくれたりした時には、FAを貰った時以上の喜びというか、つまりFC(ファンコミック)やFN(ファンノベル)を貰ったような感覚になるのだ。
また、「セキーネのミシュガルド開拓史」にナッカというキャラクターが出ていたが、それを意識した形で「魔法監察官フロスト」でもナッカを使って話を膨らませて…という、作品同士の交流が見られるのも面白い。
ミシュガルド沼にハマって抜けられなくなる作家が多いのもこういう理由からだ。
本作は、ウッチェロ先生の代表キャラであるビビを中心としたほのぼの日常劇の連作短編集である。日常物だからミシュガルドを良く知らない読者にも非常に取っつきやすいし、短編集だからどこから読んでも大体面白い。ミシュガルド物は膨大な作品数があるので手を出しにくいけど、本作だけは読んでいるという読者も多くいると思われる。
ビビというキャラクターは愛すべきところが多くある秀逸なキャラだ。性格は明るくおバカなようで、過去の戦争で重い過去も背負っているがそれを感じさせない。ルックスもツインテールに褐色貧乳でビキニアーマーという、80年代にちょっと流行ったやつで親しみを感じるデザイン。まぁ、多分きっと、このデザインはおっさんだけでなく若者にも受けているだろう。
ウッチェロ先生作品は3DCGで描かれているが、これが「ボンゴ」でも思っていたけれど、どんどん進化している。最初は人形劇のようだったが、どんどん普通の漫画かそれ以上に豊かな表情を見せてくれるようになり、血の通った生きている感じが強くなった。ブログで3DCGのメイキングについて語られているが、技術的にかなり高度なことをやっていることが分かり、素直に凄いと思う。
話の方もどれも面白い。おすすめは第7話の「冒険してもいい頃」である。日常劇の延長のような感じだが3馬鹿トリオによるドタバタ冒険ギャグが読める。メタギャグあり、エロあり、バトルありで非常に盛り沢山な内容だった。このシリーズはウッチェロ先生の本命作品である「ボンゴ」を明らかにコメント数で超えていたよね…。当時のボンゴはクライマックス間近だったのにね…。
が、「コメント数の違いが、面白さの決定的差ではないということを教えてやる」と言わんばかりに、ウッチェロ先生はコメント数度外視のシリーズも見せてくれる。
その一つが現在進めている「戦記編」ともいうべきシリーズだ。
このあたりを語るとどーしても我田引水になってしまうのをお許し頂きたい。というのも、このシリーズは、私の小説作品である「ミシュガルド戦記」の設定をかなり踏襲して頂いているのだ。ちょっと申し訳ないぐらいに。
ミシュガルドには、三つの国があって過去には戦争をしていたが停戦となり、平和となった現代では新たに発見された未知の大陸・ミシュガルドの開拓が進んでいるという基本設定がある。
そのため、ミシュガルド作品群でも「過去の戦争について語った作品」「現在のミシュガルド大陸での冒険や開拓を語った作品」という二つの大きなムーブメントが作られた。
ただ過去の戦争については、残念ながら漫画作品で扱うのはデメリットが大きい。小説なら元からコメント数も少ないから誤差の範囲だが、漫画だとコメント数にもろに影響してしまう。内容がいかに良くても、シリアスが好まれないのか、一般的な新都社読者の食いつきが悪い。
特に本作においては、それまでの日常路線がヒットしていた分、反動が大きいように見える。ウッチェロ先生もそれは分かっていたかと思う。それでも「戦記編」なんてやるのは、もう本当に趣味の世界だ。新都社での活動なんてすべて趣味だから良いかもしれないが、唯一の報酬であるコメント数が伸びないとなると…それが大変申し訳ないと感じてしまうのだ。普通に日常編をやっていればコメント貰えているのに…と。
ただその一方で、ウッチェロ先生のような人気作家が「戦記編」をやってくれているということに、私自身は非常に喜びというか、愛しさと切なさと心強さを感じる。クラウスというキャラについては、余り他の作品では取り上げられないし、ウッチェロ先生のキャラなのに私の小説内でのイメージが強くなってしまっていたところだ。そこで、ウッチェロ先生の描くクラウスやニコロが見られるのは嬉しい。ついでに私の一番のお気に入りのアメティスタも出して欲しいところだ。
最新話ではウッチェロ先生のキャラではないけど、ゲル・グリップのかっこよくてシリアスな面が見られて非常に見応えがあった。ゲルって正統派な軍人キャラなのに他の作品じゃそこまでシリアスに描かれてないんだよね、なぜか。
そうそう、戦記の方で、勝手にクラウスとミーシャの子供なんて作ってしまいました。この場を借りて謝りたい。ただその子供については私が勝手にキャラ設定するとまずいかなぁと思って性別すら曖昧に描写していますが、一応は戦記の最後まで生き延びます。で、その子供は「英雄クラウスの子供」ということで各国家が重要人物として捜索しようとする…なんてクエストを考えていたりします。子供の設定をウッチェロ先生が登録して頂けると捗りますので、余裕がありましたらご一考ください。
以上です。