2017年10月19日更新作品から
「はちゅこい ~爬虫恋~」http://hachukoi.html.xdomain.jp/index.html
え~と先生作品。
2016年にも感想を書いた(http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18928&story=31)が、それで一通りの感想はしていた。
そこでも書いたが、本作はぷげら漫画として非常に完成度が高い。
色鉛筆で描かれたフルカラーの絵は温かみと優しさが感じられて好感が持てるし、頭身の低いキャラデザの絵柄も非常に可愛らしい。また、爬虫類と両声類の豆知識が多く詰め込まれて楽しく読めるし、小学校の理科で副読書として読ませたいぐらいの教育的な作品だ。その路線をずっと続けていて安定感も抜群。こういった良作が無料で読めるとは本当に良い時代になったものである。
前回で言及しなかったようなことも書いていきたい。
本作では、生物の豆知識的な話がテーマになることが多い。登場人物はカエルやヘビやカメやトカゲやヤモリなどの擬人化であり、彼らが完全な人間になることを目指して高校生活を営むストーリーだ。擬人化された彼らはどんどん人間くさくなっていき、最近では恋バナや人間化と成長を結び付けた話が多い。例えば、ヤモリのタクヤはまぶたが無いから涙を流すことができないが、だからといって映画を見ても感動できない冷血な性格という訳ではない。先輩の卒業式までにまぶたを手に入れる努力をして、卒業式で涙を見せるというドラマがあった。こういう生物学的要素を絡めた話づくりが非常に巧みである。
主人公は一人だけ両生類のニホンアマガエルであるジュンだが、同級生のシマヘビの女の子であるマチなどから求愛されていたりする。マチは食欲から来るドキドキを恋と勘違いしているが、ジュンも捕食される恐怖からマチの求愛を受け入れることはできない。人間化を目指すにあたり、彼らが恋愛の成就はともかくとして、本能を克服できるかどうかは見ものだと思う。
また、生物学的観点からの話づくりは多彩だし巧みだと思うが、文学的観点からのアプローチも見てみたいところだ。
私自身、小説を書いている時、申し訳ないがヘビやカエルというのはネガティブなイメージの文章表現で使うことが多い。
例えば、「蛇のようにぞっとする冷たい視線で…」とか、「太った蛙のように醜い姿で…」とかだ。
熟語やことわざでも、ヘビやカエルを使った表現ではマイナスイメージのものが非常に多い。「蛇足」「藪蛇」「鬼が出るか蛇が出るか」「井の中の蛙大海を知らず」「蛙鳴蝉噪」などなど。
ヘビには、恐ろしい、冷たい、厄介な代物というイメージが多い。
カエルには、小さな存在、弱者、やかましいというイメージが多い。
そのため、文芸的に小説でヘビやカエルを良いイメージで書くのはできないこともないが、余り積極的にしようとは思わない。
だが、え~と先生ならば、こうしたマイナスイメージを覆してくれるような優しくて暖かみのある話を作り出せるのではないだろうか。
ところで、最近の私は丸くなったと言われている。毒気を抜かれるというか、牙を抜かれたというか。まだまだ感想で厳しいことを書くことを期待されている気もするが、私の毒はヤマカガシのようなものと思って頂きたい。滅多に見せることはないだろう。ましてや本作のようにまったく毒の無い作品に対して見せるのは尚更難しい。それに私は体温を調節できない冷血動物というわけではないのだ。
以上です。