Neetel Inside 文芸新都
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意志と表象としての世界
2018年5月

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5月7日/プラハの長い夜

旧共産圏風の、たぶんチェコかどこかの、寂れたマンションの一室。
私は5階に住んでいて、2部屋を借りているらしい。
片方は狭いけど小奇麗な部屋で、もう片方は広いけれど薄汚れていて、地面にコケなども生えている。
小奇麗な方の部屋にはカップルが1組。私は隣に座り、会話に耳を傾ける。
どこか芸術的な映画を想起させる回りくどい言い回し。ロケーションも含めて、ミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』に影響を受けている気がする。
男性が突然、ケーキを焼こうと言い出す。「僕の作るケーキは絶品なんだ。きっとね」
私は窓を開けて屋上に繋がるベランダへと出る。レンガ造りの外壁は、所々欠け落ちている。
外は雪が降っているけれど、庭ではバスケットをやっているグループがいる。
突然、屋上から飛び降りたい気分に駆られる。けれど、5階では死ぬことができなさそうなので思いとどまる。

     

5月11日/赤子はいないけれども

駱駝と獅子をかけ合わせたような犬が2匹歩いている。
1匹は我関せず、といった顔で通り過ぎ、2匹目は私に興味を示す。
ただ、私はサングラスをかけていたのでお気に召さなかったようだ。
私の部屋には大きな布が部屋を覆い尽くすようにかけられている。
今度、違う場所に持っていかなければ誰かがやってくるな、と思う。
きっとそれは悪い人だろう。きっとそれは善い人だろう。
ただ来客は好まないので、布は取り外そう。

     

5月14日/遠い坂道

自転車で坂道を漕いでいるけれど、いつまでも天辺には達しない。
なぜならその道は伸び続けているからだ。
どんどん息は上がり、足も辛くなってくる。しかしもう引き返すことはできない。
どこまでも伸びる道に終着点はあるのだろうか。
そして、登りついた先には何があるのだろうか。

     

5月18日/英国式の辛い中国語

アメリカ人の英語教師が英語ではない言葉を喋っている。
耳を傾けているうちになんとなく内容が分かったけれども、
曰く彼は中国人で、日本式麻雀は嫌いなのだという。
何よりも、本当のところ彼はイギリス人なのだ。
だから私は、彼に七味唐辛子を舐めるよう促した。
私も舐めていると、舌がどこかへ走り出した。

     

5月21日/やわらかいもの

トカゲと一緒に身長を測っている。
私は10cm以上伸びていたけれど、
トカゲはぬめぬめとしているので中々直立しない。
それに、彼は2m以上ありそうなのだ。
柱に傷をつけるのは諦めて、巻き尺を使うと
これもぐにゃぐにゃとして、触れることもできなかった。

     

5月22日/部屋のないホテル

部屋の区切りがない、公園のようなホテルにいる。
1つの階に50名ほどが宿泊でき
かしこにベッドや机が置かれ、プールなどもある。
豪華だけれど、まるでネットカフェから衝立を外したような雰囲気。
ここにいるのは私だけ。数年前から滞在していて、何百冊も本を読んでいる。
ただ珍しく、3人グループが泊まりに来たので場所を譲り
私は大きなベッドに寝転がる。

     

5月26日/泥舟が溶けるまで

和風の大庭園に誰かと一緒に。
庭といっても、そのほとんどは池になっているらしい。
筏を使って池の中央にある島へ行こうとすると、だんだんと沈み始める。
立つ位置を変えながら沈まないように努力するけれども
すでにくるぶしから太ももへ、そして腰まで水に浸かっている。
池の深さはわからない。「誰か」は助けてくれない。
そして、私はたぶん、泳げない。

       

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