セブンのカレーおにぎり
雨上がりの並木道は夏の匂いがした。ベンチに腰を下ろした僕はコンビニの袋からカレー味のおにぎりを取り出した。
彼女と出会った時に、一つだけ約束をした。隠し事をしないでおこう、と。彼女は言った。四六時中、君が何をしているのか知りたい、と。僕らは弱かった。弱くて生きるのが辛かったから、お互いに依存して生きていこうとした。だから自然と僕らの間に僕ら以外のものはなくなっていった。
一度、二人で並木道を歩いたことがある。お弁当を作ると張り切っていた彼女。けど朝寝坊した僕らにそんな時間はなかったから、とりあえずコンビニでおにぎりを買って食べた。踏み荒らされた銀杏が臭くて、あまり美味しくなかった。でもそれが僕らの秋の匂いだった。
彼女がいなくなってから半年。僕はみるみる衰弱していった。彼女のもとにたどり着きたい僕にとってはちょうど良かった。病院では今頃騒ぎになっているだろうか。夏の匂いを感じながら食べるおにぎりは美味しくて、これじゃなかった。太陽が僕を見てると木漏れ日が教えてくれる。けど、僕が何をしているのかを彼女は見れない。だから、僕はもう秋の匂いを嗅がない。