Neetel Inside 文芸新都
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吐き捨てられていく文字列
やぎゅぅ れんゃさい

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やぎゅぅ れんゃさい

 初めて伝記小説を読んだときから、彼の良さが全く分からなかった。柳生連也斎。新陰流を完成させたと言われる。完成ってなんだ。未だによく分からない。
 変わらない日々を送っていた。毎朝七時に起きる。幸せなことに一九時には家に着いている。休日はだらだらするとすぐ終わってしまうので、彼女や友人と会うようにしている。
 その日も彼女と会っていた。以前は出かけてみたりもしていたけれど、最近はもっぱら彼女が家に来るだけになっていた。かかる金と言えば彼女の電車代と近くに食いに行く飯代、後はコンドーム代くらいのものだった。
「いつまでこんな生活つづけるんだろうね」
彼女の疑問に心の中で「ずっとだ」と答えながら、口では「どうなんだろうね」と応じた。
「結婚しようか」
戯れにそう口にした。
「うん」
彼女がそう応じた。そうして僕らは本当に結婚した。ずっと揺蕩ってた〇・九九九……が一になる瞬間はあまりにあっさりしていた。
 そうやって何かが完成した後、燃え尽きてしまうのかと思ったのだけれど、完成の次には訳が分からないくらいの大変さが待っていた。連也斎も新陰流を完成させた後の方が大変だったのかもしれない。でもそんなことは誰にも気にかけてもらえないんだろう。そう思うと好きでもない奴のことを少し好きになれた。

       

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