Neetel Inside ベータマガジン
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好きなゲーム紹介アンソロジー2
レイジングループ/スマホ版以外がおすすめ

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デスゲーム系…【参加者同士で殺し合う類】の作品は、大きな欠点を抱えている。








恋人に振られた傷心旅行として、バイクで山道を走っていた主人公…なんだっけ名前。
ええと、そう房石。房石陽明だ。ふさゆきで覚えてた。
その房石は走行中悪路に入ってしまい、山道を進んだ中…藤良村の集落、休水へと迷い込む。
よそ者を警戒し、早く出ていくように薦める休水の住人。
どうにか長者に修理用具を貸してもらい、房石はバイクの修理を進める。
だが、彼は間に合わなかった。
休水を覆うように発生する霧。戸惑い、恐れる住人達。
房石をここまで運んできてくれた芹沢千枝実は、彼をトイレの個室に押し込んで言う。
「夜が明けるまで絶対にここから出るな」と。
そうすれば、もしかしたら生き残れるかもしれないと言う願いを込めて。
だが、房石はその後聞こえた悲鳴の元を確かめるため戸を開けてしまい…
『人狼』としか表現しようのない怪物に襲われ、命を落としてしまう。

…【ことを、房石は思い出す】。

確かに一度、自分は死んだ。
そして今の今まで忘れていたが、全く同じ筋道を辿り、ここまで戻ってきていた。
朝まで身を潜め、初日の惨劇をどうにか避けることのできた房石。
だが、犠牲者は既に出ていた。
記者として休水に滞在していた二人、橋本雄大と馬宮久子。
彼らは、無残な死体となって発見される。

「おおかみをくくらねばならん」

生き残りの中に、夜な夜なひとを殺す人狼が紛れ込んでいる。
誰が怪しいかを皆で話し合い、『くくる』ものを決める…

「黄泉忌みの宴」が始まった。

と、言う所から物語は始まる。




このゲームをものすごいざっくりと説明すると、「人狼ひぐらし」と言えばわかりやすいだろうか。
休水住人達が祀る「しんないさま」と言う神は、かつて「へび」「さる」「からす」「くも」と共に、悪い「おおかみ」を倒したと言う。
そのおおかみが、霧が発生すると黄泉の住人となる「よみびと」…つまり人狼を操り、人を殺すのだと伝えられているのだ。
よそ者からすると、そんな馬鹿な話はあるまい。
だが多少クセはあれど基本的に善良で一般的な常識を持っている休水の住人達は、それを信じてしまっている。
何より…実際に人狼のような何かは存在するし、犠牲者も既に出ている。
疑念と恐怖、そして親しい者が次々に死んでいく中で住人達はより深く、狂気に染まっていく…。

冒頭でデスゲームには欠点があると言ったが、あれはまぁ、よく言われる話である。
デスゲームものは参加者同士で殺し合うため、必然的にキャラクターはどんどん減っていくことになる。
【魅力的なキャラクターが多いほど、ゲームが進むにつれて面白くなくなっていく】のだ。
だが、これはレイジングループには当てはまらない。一日で少なくて一人、多い時には三人も死んでいくにも関わらず、だ。
なぜなら今作はデスゲームものであると同時に…【ループもの】の作品でもあるのだ。
房石は『死に戻り』の能力…死んだら黄泉忌みの宴の開始前に戻る(休水から出るのは何度試しても不可能であった)ループを自覚することができる。

どうやったら生き残ることができるのか?
どうすればこのループは終了するのだろうか?
いったい誰が裏で糸を引いているのか?
そしてそれは本当に、神の御業なのか?
そもそも自分はなぜそんな能力を持っているのか?

それらの真実を知るには、少しでも長く生き残り情報を集めなくてはならない。
黄泉忌みの宴は一般的な人狼ゲームに近く、「しんないさま」と共に戦ったと言う「へび」「さる」「からす」「くも」が人間側で言う「占い師」「共有者」「霊媒師」「狩人」に該当している。
のだが。一般的な人狼ゲームと違い【人間側が勝利したからと言って、必ずしも房石の勝利には繋がらない】。
房石の目的はあくまで真実を、それに繋がる手がかりを掴むこと。そのためならたとえどんな手段を使っても生き残らなければならない。
ある意味で、房石のポジションは彼のデザインモチーフである「狐」にも通じる所がある。


デスゲームで言うと、話が盛大にズレるのだが…俺は「ダンガンロンパ」がアニメ化すると聞いた時、【ゲームと全く違うシナリオ】を見せてくれるのかと少なからず期待し、盛大にガッカリさせられた記憶がある。
トガったキャラクターを多数出し、突飛なトリックで意外な人物が殺人を犯し、趣味の悪いオシオキで裁かれる…個人的にあのゲームにプレイヤーが何より求めていたのは【本格的なアナザーシナリオ】だったと思うんだよな。
一応ネタバレになるから人名は伏せるが、「まさか一章で〇〇が死ぬとは思うまい!」ってやってプレイヤーを驚かす事自体は悪くないと思うんだけど、それをやるんだったら「あの時もしも〇〇が生きていたら」ってプレイヤーが考えるのは当然。
だとしたら、アニメ化するならゲームと同じ内容をそのままなぞるよりも「知ってるよ〇〇が死ぬんだろ、そして模造刀の先制攻撃だべ~って」
と、ドヤ顔してる既プレイヤーに全然違う展開を見せて度肝を抜かせると同時に死ぬはずだったキャラクターが活躍するところを見せた方がよかったんじゃねぇの、って。


そう思った身としては、レイジングループはかなりキレていた。
細かいループ(死)は多数あれど、大きな流れとしては人狼ゲーム…もとい黄泉忌みの宴は【三回】行われる。
登場人物の役割が違えば、当然誰が死ぬかも異なるわけだ。
最初の宴ではイレギュラーとして宴そのものには参加できず千枝実に状況を聞くしかなかった房石が本格参戦するのは二戦目から。
休水住人にとってのみならず、【ゲームの主人公としてもかなり異端】な主人公、房石。
頭はとんでもなく切れ、行動力はズバ抜けており、常識も良識も一応は持ち合わせてはいる、の、だが…
必要に迫られれば狂信とも呼べる信仰に染まっている休水住民をもドン引きさせるような言動をし、オールクリアまで言ったプレイヤーからはおそらく結構な割合で
「一番狂ってるキャラクター? ん~~~まぁ房石じゃねぇかな」
って言われそうな危険人物。
彼が二戦目、そして三戦目でどんな役をするのかによって場にどんな影響を及ぼすのかは…ちょっとプレイして頂く他ない。
ついでに言うと一戦目、二戦目に参加できなかった橋本さんがどんな人物で三戦目で参加した時どうなるのかも確かめて頂きたい。

【めんどくさい奴】と【ちょっとヤバい奴】と【めんどくさい上にちょっとヤバい奴】しかいない豪華ヒロイン陣も見所。
ぼく李花子さん好き。清之介氏も好き(ヒロイン枠)。なんだこいつら! あざといぞ!
その他休水住人も「過程をすっとばして直感的に回答がわかったりする」と【ファフナー乗ったら活躍できそう】な女装っ子や「おおかみがくるぞ」と叫んでるボケてるとしか思えない謎の老人、夫を亡くし二人の息子が本当に好きで大事で優劣なんてつけられなくて【黄泉忌みの宴で死ぬことなんてあったらもうどんな事をしでかすかわかったもんじゃない】未亡人など、個性豊かなキャラがいっぱい。もちろん惨劇もいっぱい。
房石の心はどんどんスレていくぞ!

終盤では休水の成り立ちや神話の真実も追っていくことになる。
「元々〇〇と言う地名だったが今は××と呼ばれていて元々の意味はかなり差別的なもの」
「伝えられている話はそもそも全く違う内容だったのが村の長者に都合よく作り変えられた」
等々、明確な元ネタがなかったというのが信じられない程それっぽいリアル地方民話っぷりに微妙な田舎暮らしとしては「自分の地域もこんなんあったりしないよな…」と思わされてしまった。
若干どころじゃなく生々しい【役割】のお話は…正直に申せば年齢制限有版を見たかったですね…!

公式ガイドブックでは数あるループの内の一つとして「四戦目」とも言えるイレギュラーな黄泉忌みの宴の短編も読むことができる。
「あの人が人狼サイドだったらどうなってたかな…」と考えた身としてはとても楽しむことができた。
また、ゲーマーには「The video game with no name」でおなじみの(おなじみですね)赤野工作氏の短編も掲載されている。
そこかよ!? って部分を描き切った話だが、本編の省略部分を上手く補完しており、クリア後に読むと色々思わされること間違いなしだ。
また…このゲーム、実は同社(ケムコ)のADV「D.M.L.C(デスマッチラブコメ)」との世界観の共有があり、うっかりレイジングループだけクリアした状態でガイドブックを読むと【デスマッチラブコメの深刻なネタバレ】を見てしまうのは注意。
デスマッチラブコメも(全然ノリは違うけど)面白いゲームなので、レイジングループに満足したなら是非とも手を出してみてほしい。
このライターの人実はめっちゃ超能力バトルやりたがってない?




神が人を殺すのか、それとも人が人を殺すのか…
全ての真実を知る申奈明神は、待っている。
この殺戮に、この謀略に、この悲劇に。この神話に。
人の手によって決着を付けられることを。






そんな感じ。

       

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