Neetel Inside 文芸新都
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四月馬鹿達の宴

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タイトル :四月馬鹿達の宴
作者名  :西高科学部
ttps://www.vector.co.jp/soft/winnt/game/se485729.html



俺がサークル単位でフリーゲームの好みを語るなら、何はなくともまずはゴリッチュ、そして次にもちと西高科学部が並ぶ形となる。
演出の暴力でブン殴ってくるのも当然好きなのだが、作者の持っている世界観が存分に楽しめるようなのも好みだ。フリーゲームは雰囲気だよ兄貴。
ところで――







星の川!
魔法使いの月の国!
勇者と忘却の軍勢の戦いの記録!
俺のワクワクもちょっとでも伝わっただろうか。
世界には、俺の見たことのない面白そうなものがあふれていると昔、剣士に聞いたのだ。

四月馬鹿達の宴は、ジャンルとしては探索型RPG…やはりネフェイストに通ずるものがある。
ある程度の道筋はあるにはあるものの、方法を知ってさえいれば大胆なスキップやショートカット、隠し通路から強いアイテムを持ってきて普通は勝てない強敵を撃破したりもできる。
主人公は「あなた」。小柄な少年と言った風体だが、どうやら本職はサラリーマンのようだ。
異なる世界からメッセージを受け取ったあなたは、その声に答えて世界を超える旅に出る。
一方で、序盤に操作するのは「曖昧な都」で過ごしている探偵見習いのテツロ―、男の娘か女の子か好きな方で想像されるといいピンク髪剣士のピー子もといイツキ。
そして何故か漂流してたところを釣り上げられた、魔法使いの少女マナみの三人。
彼らは(いい年して無茶苦茶言いやがるクソジジイの)権力者っぽいマツリヤ氏と諍いを起こしてしまい、曖昧な都から追われるように旅立つ。
名前通り頭がトリの研究者、Dr.チキンヘッド。
自称・勇者ブブッピドゥのユーシャくん。
綾波のコスプレ…じゃなかった、全裸に包帯と言う若干えっちなアンデッド娘の墓森姫。
テツロ―の上司の探偵アマシロさんに、その助手の年齢不詳美女イトマキさん…。
等々、個性豊かな面々と殴り合ったり協力したりしながら、【全く個性豊かじゃない】謎の人物とも関わることとなる。
「灰色の男」達。クローンのように画一的で感情が見えず不気味な彼らは、ストーリーの進行と共にその存在感を増していく。
いつになったら、テツロ―達と「あなた」は合流できるのだろうか。
そして、【この物語は、どうやったら終わるのだろうか】。
そんな事を頭の隅にでも置いておきながら、牧歌的で、不思議で、不条理で、どこか切ない冒険を楽しもう。

システムも中々に独創的だ。
まず戦闘システムなのだが…前作からプレイした人にとってはおなじみのシステム【MPチャージ方式】は初見だと面食らうかもしれない。
西高作品においてMPは最大値から消費するものではなく、最低値から供給するものである。
そんなわけで、技を使用するのに必要なMPを溜めることになるのだが…
このゲーム、恐ろしい事に【発動さえすれば即死魔法が必中】。
しかも【誰一人として例外なく絶対に一撃死】と言うナメた性能を誇る。
MPを「8」も使ってぶっぱなす塗り潰しの一撃、「黒く【歪】む星」は、ラスボスも裏ボスも関係なく問答無用で仕留める殺戮兵器だ。
上級者にとっては真っ先に縛り対象となるが、初心者にとっては救済技としてありがたいことこの上ない。遠慮なく因果歪曲させていこう。
とは言え、流石に中盤以降のボスともなるとMPを減らしてくる等対策をされる。簡単には打てないが、技のコンセプト上かならずどこかに穴はあるはずだ。
戦闘参加キャラは三人で、控えが一名。
前衛しか直接攻撃ができない上に敵の物理攻撃をほとんど受ける事になるので、うまいことMPを溜めながらローテーションしていこう。
属性の話もしておこうか。
各キャラと攻撃の属性…有利不利のあるそれは、普通のRPGなら「火」「氷」「雷」といった種類だろう。
このゲームにおいてそれは【文明】【精霊】【信仰】となっている。
文明は精霊に強く、精霊は信仰に強く、信仰は文明に強い。
めっちゃくちゃ覚えにくいと言うか…俺未だにどれが有利不利か忘れるぞこれ。
なお、三すくみの外にも【空白】【硬質】【霊】【万能】、そして万能を上回る最強の属性が存在する。
それが何なのかは…終盤にはわかることだろう。
装備アイテムは「灰にする」ことでキャラクターに技を覚えさせたりパワーアップさせることが可能だ。
強力な装備をそのまま使ってゴリ押すか灰にして技でテクニカルに戦うかは「あなた」次第。
また、この世界にとって特別な存在である「あなた」は記憶を使うことで様々な奇跡を起こすことができる。
凶悪なボスを前に閉じ込められてしまった時は奇跡! お金が足りなくなった時は奇跡! 特に困っていないけどせっかくなので奇跡!!
いやぁ便利な世の中ですね! ところでご飯はまだかのうおばあさんや…
【彼女】の警告を素直に聞くかどうかも、「あなた」が決めることだ。
「あなた」が決めたことだ。
それだけは、忘れないでおこう。

と、ここまでシステムの話を長くしたが…
前述した通り、なんと言ってもこのゲームの肝は【雰囲気】の一言。
可愛らしいキャラグラに、あまり可愛くなかったりもするザコキャラ。見惚れてしまうような美しい背景。【どうなってんだお前!? ってなるようなボス】。
グラフィックもさることながら、音楽も素晴らしい。
プロローグ終了の曖昧な都から脱出するシーンのBGMの「ここから冒険が始まる」感じや、いちいち盛り上げてくれる最終版の連戦BGM…ああそうだ、このサークルは【聞きなれさせた曲をフルで流すタイミング】が抜群に上手いところがある。
音楽も語ればキリがないが、設定も最高だ。
何せ敵のボス集団のネーミングが【忘却王立劇団】とシャレオツ感ものすごい字面である。
メンバーも、
「魔剣の申し子ウサソフ」
「火喰い鳥の卵」
「水晶雲イジュ」
「世界壁ギュナ」
「撃砕のジュモルテス」
「調停者オガミ」
「荒天のギャシャジャジュデュ」
「因果侵犯狩りの    」
「生魔典ヨミヤ」
「時読みの巫女クーミェムコ」
「平行霊シュレーディンガー」
「忘却王エンプティ・エンプティ」
                 
と、声に出して読み上げたい【12人】組!
彼らの成り立ちと行いは、ラジオを初めとした各地で聞くことができる。
いやぁ股間に受けた石の呪いは強敵でしたね…
武器や技名も「七色硝子の渦の剣」「宴の夜の桜一振り」「白き勿忘草の剣」「マ剣抜刀」「可変曲線の魔法陣」「走馬灯駆」等々センスがテカっている。ぼくPKキナコモチ食べたい!
設定もいいがここはやっぱり間が抜けたような感じがあると思いきやグリッと要所要所で抉り込んでくるテキストも…

…と言ったように、このゲームは構成する要素同士がうまいこと噛み合っており、一つの【物語】となっている。
(ゴリッチュとは別方向に)高い演出力がそれを成しているのだろう。
欲を言えば前作のさいはてホスピタルからプレイしてほしい…とは思うが、完成度の高さで言えばこっちだし世界観も(直接は)繋がっていないので四月馬鹿をとりあえずプレイでも全く問題はない。
【ラスボスからレアエネミーになって主人公になるかと思いきやなんかおしとやかになった】例のアレな人を初見スルーしてしまうのくらいかな! 問題は!
あとさいはての主人公はタグチ(定期)

メニューを開くときはボタンをちょっと長押ししないといけないなど、少々とっつきにくい部分はあれど、フリゲを薦めるとなると外すわけにはいかない一作。
【俺の中でゴリッチュはだいたい別枠として扱っているとこある】ので、実質俺の大好きフリゲとしてはおばけと魔法とと並んでトップとも言い張る事ができる。
少しでも興味が沸いたなら、幼き頃の夢の続きを見たいなら。
是非とも、愛すべき四月馬鹿達の島に流れ着いてほしい。

旅は続く 世界の謎その全てを解き明かすまで!





そんな感じ。

       

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