Neetel Inside ニートノベル
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rider on the resolve
一話 「出会い②」

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 いつものことなのだが、ここに来ると感傷に浸りすぎてしまう。
 普段はまったくあの時のことを思い出さないといっても過言ではないのに、ひどく胸が痛む。もちろん、そのためにここにきているのだが、はっきり言って苦しい。でもそれは当然の苦しみなのだ。
 それをかみしめながら、虚空に向けて小さな声でつぶやく。

「俺は、強くなれたかな…………」

 一人になって思ったことは強くならねばということだった。
 二年ずっとそう考えていたが、これっぽっちも強くなれた気がしない。それどころか弱くなっていっている気すらする。なぜだろう。孤独にもなれた、援助も受けているといえ一人で暮らすこともできる。
 でも、弱くなっている気がする。気がする程度のものだけど、それがずっと気がかりなので。
 別にそれで悪くないの?
 そんな声が聞こえてきた気がしたが、100%気のせいだろう。自信がある。


 少し現実逃避をしようと少し別なことを考えてみることにする。
 去年は四時間、その前は二時間ほどここにいた。
 今年はどうなるだろう。時間が気になったので何となく腕時計を見てみる。するとすでに一時間半が経過しようとしていた。時間がたつのは一瞬だ。でも、まだここにいようと思う。
 そう決めた時だった。


 突然、星宮の意識が現実へと引き戻されることが起こった。
 バタンッという激しい音とともにプレハブ小屋の扉が開くと外から何かが飛び込んできたのだ。まるで体で無理やり扉を押し開けたかのように入ってきた瞬間にそれは床に倒れこんだ。
 黒と赤が複雑に混ざったよくわからない塊。それが人間であると星宮が理解するのにそう時間はかからなかった。
 なぜならそれは入ってきたのと同じぐらい突然暴言を吐き始めたのだ。

「くそったれ!! だから嫌だったんだ、封鎖区域で合流なんて!! こんなところで死ぬのかよ!! くそ!!」

 どうやら彼は星宮のことに気が付いていないらしい。
 足を乱雑に振るって転がった姿勢のままで扉を蹴り閉めるとそのまま体を引きずりながらなんとか部屋の中央に向かおうとする。そのあとに残っている赤い痕で、彼が赤グロに見えた理由が血を流しているからだと理解できた。
 いささか――いや、かなり驚いていた星宮だが一切動揺していないかのような表情で、その男に話しかける。だがしかし、その声には困惑が色濃く出ていた。

「おい、大丈夫か」
「はぁっ!?!?」

 そこで男は初めて気が付いたのか、驚いて飛び上がるとお化けでも見るような顔でこちらを見てくる。だが、すぐにばかを見るような目で見てくる。男はやけに貧相な顔つきで血の気が引いて唇は真っ青、まるで死神のような顔つきだった。しかし、男は無理矢理に頬を歪めるとなぜか半分笑っているような声で話しかけてきた。

「あんちゃん、なんでこんなところにいるんだ、それともあんた死神かなんかで、俺の幻影か?」
「違う、俺は…………迷子だ」
「ははははは、面白い嘘つくな、気に入ったよ」
「ところで、どうして血まみれなんだ? 何があった?」

 星宮がそう尋ねると、男は今度は怪訝そうな顔でこう言った。

「あんたここがどこだか知っているか?」
「封鎖区域、だろ」
「じゃあ当然あいつらがいるに決まっているだろ」
「イーターか、いや、でもここらへんにはほとんどいないはずじゃ……」
「いるときはいるに決まっているだろ、馬鹿」

 星宮は窓のあるほうに顔を向ける。
 すると、確かに何か黒い影のようなものが動いているのが一瞬見えた。それがイーターなのか瞬時には判断できなかったが、この男の言うことに嘘はなさそうだった。
 星宮は苦虫をかみつぶすような顔をして、「面倒だな」と小さくつぶやいた。
 まさか イーターと遭遇するとはこれっぽっちも考えていなかった。

「くそ、お互い年貢の納め時ってところか?」
「いやだね、俺は生きて帰る」
「無理だろ、あいつは血の匂いに誘われてこっちに来てるぞ」
「それでも、だ」
「大した自信だな」
「……こんなところで死んだら申し訳ない」


 星宮の発言の意味を男はよくわかってなかっていない。
 だがそれでいい。
 男は体を無理やり動かして壁にもたれかかり座ると大きく息を吐いた。


「いてぇ」
「……大丈夫か?」
「いや、もう駄目だ、出血がひどい。意識を保つのでやっとだ。ここに来るまでに動きすぎたみたいだ」
「そうか……」


 こういう時なんといえばいいのかよくわからない。幸いなことにあの事件で家族が死んだ以外、自分は身内や知り合いが死ぬようなことはなかった。死に触れる機会もまったくなかった。
 だから、何を言えばいいのかわからない。
 いや、これは言い訳だろう。
 星宮が困った顔をして黙っている間に男はボロボロになった服をまさぐり始めた。

「ちょうどいい、受取人にも会えなかったし俺が持っててもこのままイーターにぶっ壊されるだけだ」
「?」
「お前生きたいんだろう?」
「当然だろ」
「そう当然だな。じゃあこれやるよ」

 そう言って男は懐に入れていた物を無造作に放り投げ、ちょうど星宮の足元で止まった。そして星宮はそれに見覚えがあった。
 だがしかし、それがそこにある意味がさっぱり分からなかった。


「これは……」


「そうだよ、ライダーベルトだよ」



       

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