Neetel Inside ニートノベル
表紙

枕営業系令嬢とその愛人の役者達にご用心
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「○○(※男の名前を入れて下さい)様ぁ~、また○○(※女の名前を入れて下さい)がわたくしを苛めるのぉ~」
「ああ、そうだとも。分かっているよ、僕の愛しいアイリス」


(…また、違う男に毎回いつも同じ事言ってる)

屋敷中にこだまする定型文(笑)は舌ったらずの男爵令嬢?アイリス・ホアキンズだ。

市民階級の身でありながら彼女の両親がふと始めた金銭の貸し付け業と
宿泊施設・ビッグイーストリッジホテル
(そこに生息するとある珍しい生物が目と鼻の先で観察出来る為研究学者御用達の専用宿泊施設になっているとか
はてはまたワケアリ(妻子持ち)の紳士達が一夜限りのアブナイアバンチュール(乱交パーティー?)を楽しむ為の
秘密会場として利用されているとの噂もあるとかナントカ…なんだそれ)
の運経営が思いの他上手くいった為に
せっかくだからとついつい手にした大金で偽りの高い身分まで買ってしまった
いわゆるブルジョア階級、資本主義の豚一族というやつである。

最近などはかの芸術家の守護者であるとされたポンパドゥール婦人
(国王の愛人やりつつ国の国家予算を湯水のように使い挙げ句戦争にまで口を出し
「私の時代が来た!」とまでのたまうた人。
他人の金で遊んどるただのコジキやんか)や
かの名作曲家であるフレデリック・ショパンのパトロンとして名をはせたジョルジュ・サンド
(男装してる変わり者だったらしい)に彩かって
売れなくなった落ち目の役者や声楽家(無職スレスレである)などを自らの邸宅も兼用したイーストリッジホテルに何名も呼んでいては
夜毎真夜中どんちきドンチャンアハンウフンイクイクイヤーンの騒ぎだった。

芸術家に混じってのアイリスのお粗末すぎる素人ピアノ(一応習った)の演奏も相まってか
正直言ってかなり近所迷惑である。

そんなアイリスがオモチャのぬいぐるみ程度には可愛がっている(当然世話はしていない)オスの愛犬ポメラニヤン、コートニーは
飼い主に似ているのか弱い犬はよく吠えるを地で行くといったように
ギャンギャンと大きな声で意味もなく喚いては
他所の家の敷地内へと気まぐれにブリブリ糞を排泄していた。

その様子と言ったらまるで泥酔し敷地内に不法侵入しては一升瓶片手に暴言を吐いている
アイリス達の所へ滞在していた落ち目の役者や声楽家達の素行の悪ささながらである。


(頼むから、早く出て行って欲しい)
願わくばアイリスごと、いや、せめて駄目ならば犬や落ち目の芸術家きどりどもでもいい。

今にあるその心境というのは大陸移住という名の名目を持った侵入者のスペイン人に
ペスト菌という病原菌ウイルスをばらまかれ蹂躙された末
挙げ句滅亡まで追い込まれてしまった南アメリカに住む三大文明を持つ原住民の心境そのものである。

「ああアイリス、君のその美しい瞳はまるで七色の虹の如く輝いて煌めき
君のその甘美なる視線に囚われた者は
愛の使者エーロスの金の矢でいられたようにたちまちに恋に落ちてしまうよ」

「うふ~ん、○○(※男の名前を入れて下さい)こそ常にわたくしを導いてお守り下さるナイト様ですわぁ」

ちなみに上の言葉も定型文だ。
そしてこんなしたったらずの話し方をしているが
アイリス・ホアキンズは40近い年増のおばさ…いやいや妙齢なご婦人でふつーに夫もいた女である。

金にモノを言わせては
売れなくなった落ち目の役者や芸術家達を呼びよせつつ自分達の事をヨイショという
ダイレクトステルスマーケティング(いわゆるバラマキのおかげである)を彼達にさせ
婿養子で肩身のせまい夫を尻目にその者達と不倫を楽しんだ。

そんなライフスタイルである人間にターゲットにされたなんて正直こちらもたまったもんではない。

アホみたいに吠える駄犬のポメラニヤンと
まるでシンクロでもするかのように不法侵入しては一升瓶片手に暴言を吐いてくる落ち目の役者や声楽家達。
そしてトドメとばかりに披露される下手くそなアイリスのピアノに毎夜幾度となく延々と繰り返される乱交パーティー。

(もう、限界だ)

向こうが出て行かないのならこちらから出て行くしかないだろう。
幾度となく繰り返される迷惑行為のノイローゼになった私はついに
アイリスや落ち目の役者や声楽家の居座り続けるこの地から去る事を決意する。


…数日後

「あなた!観光資源の珍しい生物が、いなくなってしまったわぁ~」

「…むむっ。まいったな、この生物を題材にもうひとつ新しい物語を考えようと思っていたのに」

アイリスの愛人である落ち目の役者や声学家達のように
この珍しい生物をモデル(ストーキングばりの観察をしに)として脚本を構成しては芝居の参考にする客達も珍しくなかった。

というよりもビッグイーストリッジの宿泊客の10割はその珍しい生物を目当てに来た客達がほとんどである。
ホアキンズ一家は収入のほとんどをその珍しい生物にまかなってもらっていたと言っても過言ではない。

「…おまけに、先月から進められていたこの地方に住むご令嬢との縁談も、破談になったとさ。」
「でもアイリス。君みたいな素晴らしい女性と巡り会えた僕は幸せさ。
たとえみんなから祝福されない禁断の恋だとしてもね。」

「まあ!わたくしもですわ!」

アイリスの30人目の愛人である落ち目役者がクサい定型文の口説き文句を吐いた傍ら
束の間の新しい住処を探しあてた珍しい生物は
どこかにある遠いその地にひっそりと身を隠すよう暮らしながら切なる内を願っていた。

(どうか、アイリスや落ち目の役者や声楽家達のような者が自分の側に現れてきませんように)
と。

ほどなくして、その珍しい生物の住まう土地が有名な観光地として栄えたのはもはや言うまでもない。

終わり

       

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Neetsha