Neetel Inside ニートノベル
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玉匣の姫 (イチロさんは…)
蒔稲のひとびと。

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蒔稲のひとびと。

ばあちゃんと妹のミコが隣あって座り、卓を挟んで俺、姫、坊さんが座っている。
気がつくと床の間に居いて、こうなってた。
驚いたが姫も俺もちゃんと服を着ていてすごく、ほっとした。ひとまず、ほっとした。
どうやらこの状況をこの家のひとにこれから説明するところのようで俺は説明する側なんだなあ。と思った。

「あ、あのさ。ばあちゃん…。聞いてほしくてさ。」

「イチロー。今日は、うまく喋るんだね。」

もう。ホントに。言葉に詰まる。
ミコがひとくち茶を飲んだ。

「ご母堂様。」静かに坊さんが語りかける。

「これまで姫君をお育て頂きましたこと。
御礼申し上げます。」

視線が坊さんに集まる。適度な緊張感と和やかな空気が生まれた。

「かの姫君はお家に伝わります玉匣より本日めでたくご誕生あそばしました。
ご母堂様に大切に大切にお取り扱いいただき、お育ていただき、また、ご先祖様方々より今日に至る永きに亘りお伝えいただいた故、
いまが御座います。
手短に申しまして姫ならびに私はご母堂様やご子息。ご息女とは少々違いが御座いまして。そもそも玉匣というものは…」


「じじ。いや。おしょう。長い。長い。」
姫が割って入った。

「…ゴボドー様。お騒がせして申し訳無い。
いま、おしょうの言ったとおり。
わたしはこの家で育ち今日、生まれた。」

ひといきついて、続ける。
「函の中からは外のことはわからない。
だが、わたしが大切に育てられたことはわかる。
イチロ…様を知ればこのお家はヒトを愛し、ヒトとヒトの繋りを大切に思って来たことがわかるのです。」

ほおー。という目でばあちゃんが俺の方を見る。
なんか。すごく。居心地が悪い。

「わたしは、この家に生まれ、イチロ様と出会うことが出来て、本当によかった。
どうか。わたしをこの家に置いて頂けないでしょうか。何でもします。どうかイチロ様のもとに置いて下さい。お願い申し上げます。」
そして深々と頭を下げた。

ミコがキョロキョロとばあちゃんを見たり姫を見たり。俺を見たり。猫かよ。

「顔を上げて下さい。」

姫はそうした。

「あなた。お名前は。」

「わたしは。名がありません。イチロ…さまが考えてくれています。」

ばあちゃんがまた、ほおー。という目で俺を眺める。
隣でミコが、ほおー。という顔をつくる。
ウゼえ。

「そう。じゃ。イチロさんよ。いい名前。早めに頼むよ。いっしょに住むのに名前が無いのも困るだろ。」

姫の目は輝いた。俺は頷いた。
「ばあちゃん。ありがとう。」

「あんたも。大きくなったもんだね。父さん母さんにはあんたから話しておくんだ。
姫さん。こんな子だけどよろしく頼んだよ。」

「ありがとうございます。ゴボドー様。」
「はいはい。こんなバーサンにありがとよ。」


と、話しはあっさりとついてしまった。
家族が(というかばあちゃんが)少し風変わりというか、あまりにもこだわらないというか。ひどく拍子抜けした。
そういう家風なのかもしれない。
父さん母さんもたぶんそうなのだ。買い付けやらなんやらで忙しく、家にいたことが無いとか、そこはこだわらないんだ。

姫は名前が欲しいと言った。
「うん。」と返事はしたが、これがなかなか難しい。
相手はニンゲン。言語でコミュニケーションする。意味を求めたり。好き嫌いがあったり。

姫から連想するワード。姫らしいイメージ。
そうだなあ。「あお」「ケムリ」「おっぱい」「しり」「こし」「あし」「モチモチ」…。
そんなんしか浮かばないし。後半はただのフラッシュバックだ。
「アン」というのは冗談だし、「姫」でいいんじゃないか。と思うがそれでは「手抜き」だとか「愛情が無い」とか揶揄を含むクレームが来そうだ。

「あおい」というのはどうだろう。
・「青」という姫のオンリーワン性。
・優雅。女性的。明朗。
・覚えやすい。馴染みやすい。

いいじゃないか。

じゃあ。「姫」ではどうか。
・ステータスの表現
・威圧的。特別感。
・抵抗感。畏まったかんじ。

うんうん。テンプレっぽいな。

ぜったい無いけど「ケムリ」は。
・誕生の姿に由来。
・現状と一致しない。
・馴染まない。

うん。やっぱナシだな。

試しに「おっぱい」では…
・外観を主に表現(蔑視ととられる)
・わかりやすい。(が、蔑視ととられる)
・呼べない。(人格が疑われる。)

わははは。そりゃそーだ。
オモシロイな。
これらを可視化するには、項目をテーマ、イメージ、効果に分類するか。数値に換算する方法は、主観しか無いかな。コレを体系化できればネーミングの負荷を軽減できる。次はいつ使うんだろう。

       

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