荒野を歩く一人の男
誰にも認識されない一人の男
存在を認めてもらいえない男
宛てなく漂う男
人は男女の愛によってこの世に生を受け
人々の愛を受け止め強くなっていく
彼は神の悪意によってこの世に生を受け
人々の悪意によって弱くなっていく
嘲笑の的にでもなれるのなら
まだ生きていけるだろう
そんな悪意で
男なのにジェニファーと名付けられた
誰か見て
誰か見て
誰か見て
誰か見て
いくら叫んでも届かない
いくら泣いても届かない
彼はその星で忌み嫌われ
孤独に生きていくことを定められた
認識すらされないまま
今日も荒野を歩く男
出来たと思った友人は
手ひどく裏切り去っていく
出来たと思った友人は
手ひどく殺され死んでいく
今日も一人
いつも一人
誰か見て
誰か見て
誰か見て
誰か見て
死ぬことさえ許されないまま
一人ただただ宛てなく歩く
もし死んだとしても
六道輪廻の逆転によって
元の場所へと戻される
悪意によって戻される
認識すらされないままに
無限に繰り返される逆転の果て
気が遠くなるような時間を経た
繰り返される歴史には
ひとつとして同じものがなく
そして彼は気が付いた
実は
この世界になにがしかの影響を与える事が
彼には出来ると言うことに
実は
自分が悪意によって
生み出されていたわけではない事に
更に気が遠くなるような時間を得た歴史の中
少しずつ与えた影響によって
彼は人々に認識されないまま認知される存在になりえた
その時付けられた便宜上の名前は世界中に浸透して行き
いつしか彼は違う名前で呼ばれ始めた
多くの科学者、研究者、宗教信仰者から一般の人にまで
彼はただ「アダム」とだけ呼ばれるようになっていた