生まれ出ずるは蛇女
両手両足の無い
背中にうろこの刺青で
夜な夜な鼠を食べてすすり泣く
「さぁさぁ
寄ってらっしゃい見てらっしゃい
火星の毒電波を受信した
呪われた男と女の間から生まれ出ずるは蛇女
両手両足が無いばかりか
背中にうろこを持っている
何もすること無いままに
夜な夜な泣きながら鼠を捕って喰らうと言う
蛇女興行のはじまりはじまり」
火星の毒電波を受信した男は
居ても経ってもおられずに
思いついたは外道のいかさま
彼を慕う少女を荒縄で縛り上げ
肉切り包丁あてがって
両手両足をちょん切った
知り合いの掘り師を呼び寄せて
背中にうろこに刺青を入れさせた
蛇女興行の始まり
生まれ出ずるは蛇女
両手両足の無い
背中にうろこの刺青で
夜な夜な鼠を食べてすすり泣く
事あるごとに出向いては
見世物テントを築き上げ
お目にかけまするは世にも珍しい蛇女興行
薄暗いテントの中
埋め尽くされた客の笑い
幸か不幸か見えないのは
少女と男の悲哀の涙
「あなたのためならこの手足などなくなっても良い」
覚悟を決めた少女はただの笑いもの
蛇女興行の始まり
生まれ出ずるは蛇女
両手両足の無い
背中にうろこの刺青で
夜な夜な鼠を食べてすすり泣く
見て行って頂戴 蛇女
全国行脚の傍らだ
哀れな事にこの2人
相思相愛で夜な夜な求め合う
年老いた2人は見世物テントをたたんで
2人で静かに消えてった
どことも無く消えてった
悲哀に満ちた恋模様
狂った2人の恋模様
笑って頂戴この涙
それが2人のためになる
それで2人はまた生きる