Neetel Inside 文芸新都
表紙

要するに短い話なんだよ
隕石落ちた





 インターネッツ……それは、あらゆる可能性が存在する場所。ある者は新たな生命を生み出し、またある者は破壊を繰り返す。
 その、無限に広がる世界で、また今日も一つの物語が紡がれる……。




「今日で最後か」
 世界の最後、全ての終末、無への帰化。――あと数分もすれば、僕達私達の地球に隕石が衝突する。
 ……さて、一週間前の段階では、人々は何の心配もしていなかった。今更になって隕石が落ちてくるなんて、到底信じられることではなかったからだ。メディアでさえ、何も報道しない。
 五日前になって偉い学者が、地球に隕石が衝突するといった。誰もが信じかけたが、その学者は最後に余計なこと……ノストラダムスの予言やヨハネの黙示録を引き合いに出したことで、これもまた信じられることなく人々の記憶から抹消された。
 そして三日前、事件が起きた。報道規制をされていたにも関わらず、隕石が落ちてくると報道されてしまったのだ。その後はご想像通り、世界中が恐慌状態に陥ってしまい、人々を縛っていた法律は脆くも崩壊した。
 ここで可笑しいことに、現実がそんなにパニック状態だろうとネットはいつも通りの雰囲気を保っていた。のんきにも、内容は隕石であれ雑談を交わす。……そこに俺も存在していた。
「よぉ、ここに居たか」
「あぁ……夜空でも眺めようと、ね」
 星がきらめく夜空を上に、土手に寝転がっている俺。
 もはや現実とそう変わらないヴァーチャル空間、時間の概念や天候、そういった要素も既にネットには備わっていた。……ふと、HMDをはずして窓の外を見る。……空が赤い。何の因果か、隕石はこんな小さい島国に落ちようとしていた。
「まったく、困ったもんだよな。つい先週、初めての彼女が出来て浮かれてた矢先にこれだ。人生いいこと尽くめってわけにはいかんもんなのかねぇ」
 電子音が織り交ざる声で、隣に腰掛けているアバターが喋り始める。
「そう、その彼女も……彼女は金持ちでさ、告白した次の日にさっさと宇宙に行っちまったよ。それを言っちゃあ、彼女なんて出来てないようなもんだがな」
 あはは、と無理をするように笑う。
 彼とは10年来の付き合いで、度々現実でも会ったりしていた。その度に、「女にフラれた~」と愚痴を聞かされたのは記憶に新しい。
「まぁまぁ、最後にいい夢見られてよかったじゃないか。俺なんて天涯孤独、女のおの字もあったもんじゃない」
「はははっ、お前は見てくれがいいんだから、性格をもうちょっとどうにかしなきゃな」
 笑いあう二人。……ま、文明の終わりなんてこんなもんかとも思う。いつも通り生活して、突然終わる。俺たちは人間だからそれに抵抗があるのかもしれないけど、他の生き物じゃ十分に考えられることだ。結局は、考える脳みそがあるかないかの話。
「お、カウントダウンが始まったな」
「カウントダウンが始まると、急に名残惜しくなるよなぁ。別に特別好きってなわけじゃないけど、なくなると思うと勿体無いというか」
「ほんと人間って我侭だよな」
「や、まったくだ」


 10…思い残すことは多々あるけど、これもありか。
 9…そういえば、今は何時だ?
 8…22時か。そろそろ眠くなってきたな。
 7…思えば短い人生だった。
 6…何か突拍子もないことでもやっとけばよかったかな。
 5…しかし、昔の人はけったいな予言を残してくれたな。
 4…もうちょっと有益な予言をして欲しいものだ。
 3…残り三秒、3秒で出来ることってなにかあったっけ?
 2…無いな!
 1…あ――最後なんだし猫を抱いとけばよかった。それを考えた瞬間
 0…少し、泣きたくなった。


 その日、文明は終末を迎え、生命は滅び、地球という揺り籠はゆっくりと崩壊を始めた――。
表紙

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