バーボンハイムの鎌倉・室町時代がアツイ!
創作ネタのゴールドラッシュ、鎌倉・室町時代の抗争史
物語を描くにあたって大事なのは、「抗争ネタ」。
ほぼ、これが土台を占めているといえるでしょう。
短期連載にしろ、長期連載にしろ
物語の息となるのは「抗争ネタ」です。
味方陣営と敵陣営の抗争を題材にすれば、必然と話が思い浮かぶもの。数多くの名作を見ても、そうです。
バトル漫画、超能力系バトル、ガンアクション、格闘もの、不良物、戦記もの……
どんな題材においても、絶対に「抗争ネタ」は避けては通れません。恋愛漫画ですら、主人公とライバルが恋人(シマ)を巡って争いを広げる「抗争ネタ」と言っても過言ではないでしょう。
「味方はもちろん、敵も信念があって戦っている」
創作家として、こういう物語を描くのは
一生涯のロマンといえるでしょう。
ただ、これを一から作っていくのはあまりにも
非常に困難な作業と言えるでしょう。
特に物語が重厚になればなるほど、敵味方の信念を色濃く描かねばなりません。では、せめてその入門として鎌倉・室町時代はいかがでしょうか。私はお勧めさせていただきます。
1:鎌倉時代・室町事件は暴力団の抗争並に事件が盛り沢山
まず、これです。
抗争のネタに困っている方にとっちゃ宝の山な時代なんです。
まず、鎌倉時代。
一見するとすごく地味な時代の印象が強い。
武士の世の中発祥の時代、由緒正しき武士道の始まりの時代。
次に室町時代。
まあ、戦国時代とかぶっているけれども
まあ、そこそこ平和だったんとちゃう?
知らんけど。
え?それが何?暴力団の抗争並みに事件が多い?え?
馬鹿も休み休み言えよ、抗争ネタを探すんなら、こんな時代よりも戦国時代の方が
いいんじゃあねぇのかい?と思われる方もおられることでしょう。
とんでもない。
私は鎌倉時代・室町時代の歴史創作入りしてまだ間もない若輩ですが、この時代ほどドロドロ血なまぐさい時代があったのかと
絶望するほどヤバイ時代でした。
はっきり言います。
鎌倉幕府、室町幕府なんてただの暴力団です。
断言します。
この時代の連中、エイリアンとプレデター並の
部族間争い並みにえぐい時代です。
ひとまず鎌倉時代の事件を列挙してみましょう
1189年(文治5年) 奥州合戦
1192年(建久3年) 源頼朝、征夷大将軍任命 初代将軍
1193年(建久4年)曾我兄弟の仇討ち
1199年(建久10年)
1月、頼朝の死、源頼家が2代目将軍に
2月、三左衛門事件
7月、頼家、安達景盛の女を略奪。危うく武力衝突に
1200年(正治2年) 梶原景時の変
1201年(建仁元年) 建仁の乱
1203年(建仁3年) 比企能員の変 頼家幽閉。源実朝3代目就任
1204年(元久元年) 源頼家・暗殺
1205年(元久2年) 畠山重忠の乱 、牧氏事件
1213年(建暦3年) 和田合戦
1219年(建保7年) 源実朝、公暁に暗殺される
1221年(承久3年) 承久の乱
1226年(嘉禄2年) 九条頼経が4代目将軍に就任 (摂家将軍の開始)
1232年(貞永元年) 御成敗式目の制定
1246年(寛元4年) 宮騒動(北条宗家vs将軍&北条分家名越)
1247年(宝治元年) 宝治合戦(北条・安達による三浦一族皆殺し)
1252年(建長4年) 5代目・将軍頼嗣を京へ追放、宗尊親王が6代目将軍に就任(宮将軍の開始)
1266年(文永3年)宗尊親王の息子・惟康王が7代目将軍に就任
名を源惟康と改める
↑源氏将軍の復活
1272年(文永9年) 二月騒動(北条宗家による反対派粛清)、宗尊親王追放、北条分家・名越兄弟討伐、時宗の兄・時輔討伐
1274年(文永11年) 文永の役
1281年(弘安4年) 弘安の役
↑神風、蒙古襲来
1285年(弘安7年)北条時宗死去
北条時宗死去後、北条貞時が8代目宗家当主・9代目執権に就任。
彼の後見人の安達泰盛と平頼綱の仁義なき戦いが始まる。
1285年(弘安8年) 霜月騒動
安達一族500人が討伐される、一説によると
これは将軍側(安達)vs得宗側(平、北条分家)の政治的抗争だったとされている。なお、諸説ありだが足利尊氏の祖父・家時が安達側に加担したとされて自害したとされる。
1287年(弘安10年) 7代目将軍・源惟康、源氏から親王へ 惟康親王となる。
↑源氏将軍の終焉
1289年(正応2年)7代目将軍・惟康親王 京都へ追放
深夜2時の暴風吹き荒れる鎌倉から、京都へ追放される。
1293年(正応6年) 平禅門の乱
貞時の乳父、いわば後見人の執事だった平頼綱を騙し討ちで
滅ぼす。これにより、貞時の独裁体制完成
1305年(嘉元3年) 嘉元の乱(貞時vs北条分家)
1324年(正中元年) 正中の変(後醍醐天皇、鎌倉幕府に対して謀反を企み、島流しに)
1326年(正中3年→嘉暦元年) 嘉暦の騒動(北条宗家の外戚・安達vs長崎の内紛)
1331年(元弘元年、元徳3年) 元弘の乱(楠木正成が幕府軍と交戦)
1332年(元弘2年、元徳4年)元弘の乱、鎮圧
1333年(元弘3年、正慶2年) 鎌倉幕府滅亡
幕府側の足利高氏も妻子を人質にとられ、我慢汁の限界でプッツン、反幕府勢力となる
鎌倉幕府の歴史をあげただけでもこれだけです。
同じ日本民族なのに、何かあると直ぐに殺し合い・処刑・失脚・追放・反逆…… 仁義なんてどこにもありません。
あれ?武士道なんて何処いった状態です。
特に鎌倉幕府初期なんか殺し合いの連続です。
将軍頼家と北条・安達・三浦・和田・畠山ら軍閥御家人との政治抗争
オヤジが亡くなったらこれかいお前ら。
で、その肝心の頼家を消したら今度は北条が将軍家の金玉を握るわけですが、畠山を牧の方事件で滅ぼし、和田を和田合戦で滅ぼし、三浦を宝治合戦で滅ぼし、安達を霜月騒動で500人も虐殺し、平(長崎)を地震の混乱に紛れて襲撃……
おまえらプレデターかエイリアンか。
部族間争いってレベルじゃねぇぞ。
まあ、最終的に北条も一度は滅ぼしかけた安達や長崎とまた手を取り、幕府の建て直しを図るわけですが…
その後、安達と長崎は宗家の当主争いでそれぞれ後継者を立てて政治的抗争を繰り広げる……
もはや暴力団と呼ばれても仕方ないでしょう。
次に室町時代
1334(正慶3) 建武の新政
↑今度は武士VS朝廷の抗争劇の始まりです
1335(正慶4) 中先代の乱
1336(延元1) 足利尊氏vs後醍醐天皇の抗争本格化
↑藤島の戦い
1338(延元3) 石津の戦い 藤島の戦い
↑北畠顕家・新田義貞戦死
1350(正平5) 観応の擾乱
↑足利尊氏&義詮 vs 足利直義
あ…ちょっと疲れてきたのでタンマです。
ちょちょちょ待て お前ら
室町初期の段階でこれかい。
鎌倉幕府いっしょに倒そうぜした仲やないか。
おまえら、敵居なくなったらチンポの食い合いかお前ら(きたない)……
おまけにここに南北朝時代が絡んでくるからすごいややこしい。
だって、尊氏&義詮なんか直義と戦うために敵方の南朝と手を組むンですよ? わけわからんでしょホンマ。
で、その後南朝に裏切られて京都を占領されて、また奪い返す…
バーバリアンかお前ら
とまあ、こうして室町初期を探っただけでもこれだけの
抗争ネタが盛りだくさんです。
とまあ、これだけ探って頂ければお分かりいただけるかと思うんですが、暗殺劇、戦争、抗争だらけの時代、これを見てるだけでも
戦いとはどのようにして起こるかが凄く勉強になります。
バトルもの、戦記物、陰謀物を描きたい作家さんにとっては、いいネタ揃いでしょう。
たかが武士同士の抗争を探っただけでも「抗争ネタ」にプラス「属性」までテンコ盛り。
親子兄弟同士の悲しい抗争、3人の義父を失脚・殺害した独裁者、戦友同士のすれ違い劇……
ただの抗争ネタが描きたいんじゃあないんだ、ラブストーリー、恋愛劇を描きたいんだ。もう何でもござれです。
NLだけに飽き足らず、BLネタも盛りだくさんです。
基本、武将同士の悲しい人間ドラマが込みの「抗争ネタ」なので
ただのBLを描きたいんじゃあないんだ!という方にはこれほどお勧めな題材もありません!
作品をそのまま描くのもヨシ!オマージュとして取り入れるのもヨシ!それをオカズにするのもヨシ!
おまけに我々日本人にとっては聞いたことのある名前ばかり。
これほど、使いやすいネタも無いでしょう。
こういう武将同士の抗争劇なんか、読者層も幅広い。
鎌倉時代なら、源氏将軍3代の滅亡劇・北条一族の隆盛劇
室町時代なら足利一族の抗争劇……
ここら辺でお話を描けば多方面からの読者層も引き込めますし、ネタを仕入れるなりすればかなりの良質な作品になることは間違いありません。 ハンターハンターの王位継承戦レベルの知略合戦モノを描けるのも夢ではないでしょう。
ただ、室町時代の特に魅力的なのは
ヤバイのは武士だけじゃありません。
一般ピーポー同士の抗争……
詳しくは清水 克行 (著)の喧嘩両成敗の誕生 (講談社)を見ていただければ分かるんですけれども、ヤバイですよ。
ローソンにクレーム入れたらラオウとサウザーが喧嘩してたぐらいの大事件が頻繁に起こってるんです。たとえおかしいかもしれないですけど。
あと、お寺同士の抗争もヤバイ。
園城寺vs南禅寺
金閣寺vs北野天満宮
は?って思うでしょ。
お寺同士がなんでやねんって思うでしょ。
ガチですからね。これ。
農民とか、僧侶、下人、遊女とかが虐げられてるだけの存在、公家は運動音痴のへタレばかりといわれているとは思うんですが
これ見たらマジで変わりますよイメージ。
北斗の拳のモヒカンとか、ウシジマ君とか、虎眼流一門とか、カイジの兵頭会長レベルの鬼畜な連中ばかりです。
まあ、すごいですよ。
さてと、色々と好き放題喋ってしまいましたが
続きはどうか考え中です。
もし、何もなければ次回は日本の歴史漫画(鎌倉~室町時代編)の5社(集英社版、小学館版、角川版、学研版、講談社版)比較レビューをやりたいと思います。