Neetel Inside ニートノベル
表紙

短編集(予定)
機械翻訳名文集成

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序:
 セックス以外全部したことがあった――第1008代フランス国王の肛門に吸い付いたこともあるし、架空の果実を右目に移植した挙げ句、脱糞しながら超巨大アーチをくぐったこともある。セックスだけしたことがなかった。
 ぼくは、ひどくつらかったんだ――


テレビのニュース映像:
 6万匹に1匹の奇病、食-生殖器希望病に罹ったダルメシアンのネモちゃんが道端で苦しんでいるのを発見した香港映画俳優のマイケル・ウーさん。
 自らの性器を切り落とし即座にネモちゃんへプレゼント。観衆は拍手喝采。「咄嗟のことで気が狂っていた」と話すマイケルさん、現在は自らの妹と結婚。男18人、女1024人の子宝に恵まれ幸せに暮らしているといいます。


!警告! この文章は全くもって無意味であり、何か意味のある話を読みたい人間に対して読むことを勧めることはしません。要するに読むことをお勧めしません。この文章は読むことを推奨されません。本当にお勧めしません。警告終了。


グループセラピーの暴力:

司会役「えー、新しく参加した人にも話してもらいましょう、”null坊”さん、どうぞ。……”null坊”というハンドルネームで(笑)、なんか、こう、”活動”されている方らしいです(苦笑)」

(広い体育館に円形に配置されたパイプ椅子が13脚。空調設備の低い音だけが聞こえている。)

null坊「……あ、null坊と申します。こんにちは」

参加者一同「こんにちは」(不気味なくらい大きな声)

null坊「あ、はい、こんにちは。えーー…………。こういう会に参加するのは初めてなので緊張しています。えーじゃあw早速わたしの悩みを……。わたしはアニメを見るのが趣味なんですが、さいきん見るのがつらくなってきまして。えー身体的にも精神的にも。これがなかなか深刻でして、結局一日中天井を眺めているだけになるんですよね」

(大いなる沈黙)

司会役「null坊……それは……大変だったね。みんなはどう思うかな?」(苦笑しながら周りの参加者に目くばせする。)

参加者1「ちょっといいかな?」

司会役「なんだいダン?」

参加者1「……null坊、キミの問題は、ぼくが思うに……さほど深刻ではない」

null坊「深刻ではない?」

参加者1「ああ、というか、グループセラピーに来て治るものじゃないし、キミにはもっとやるべきことがあるはずだ。違うか? 正直言って……私たちを茶化すつもりなら帰ってほしい。帰ってくれ」

null坊「い、いや、そんなつもりは……」

参加者2「まあまあ、落ち着いて。今のはアレだろ? 照れ隠しだろ? 実はもっと深刻な悩みを抱えてるんだろ? そうなんだろ、null坊? それにしても、ヌ、null坊ってw」

null坊「…………」

(周囲からクスクス笑いが聞こえる。)

司会役「(咳払い)えーw、みんな、まあw、落ち着いてw null坊さんがwwおもしろいのはわかるけどww」

null坊「……え、なんか空気感違いましたかね、そういうノリのやつじゃない?」

司会役「いえいえw まったく、自由にしてくださいw す、すいません、ちょっとwww笑いがwおさまるのを待ちましょうかw」

(笑い声が2分弱)

(再び空調機の低い音)

司会役「で、もっと深刻な悩みがあるんですか、ないんですか?」

null坊「まあ、あるっちゃ、あります。あると言えば、あります。はい」

(再びクスクスと笑い声)

司会役「えー、みなさん、静かにね。で、null坊さん、そう、あるんですね? じゃあそれを話してください」(小さく「早く言えよ」の声)

null坊「……はい、えっ、なに。何言えばいいの?」

参加者1「言えばいいんですよ、悩み事を。(小さく「なんなんだよこいつ……」の声)」

(再びクスクスと笑い声))

司会役「はい、はい、みなさんね、またうるさくなってますよ。静かにね」(小さく「おまえが早く言わねーからだろ」の声。舌打ち)

null坊「あのー小声でごちゃごちゃ言うのやめてもらっていいですか?

参加者2「たしかに、小声でごちゃごちゃ言うのは良くないよ。ウィルフリッド、司会役としてどうかと思うな」

null坊(だまれ味方ぶるな。おまえみたいな奴が一番きらいなんだよ)「じゃあ、言いますね。例えば、朝、テレビで言ってましたよね。ニュースで。香港かどこかの俳優が、子だくさんで幸せだって」

参加者2「マイケル・ウーだっけ?」

null坊「そうそう、そうです。マイケル・ウー。あれにね、なりたいの」

参加者2「あのーあなたね、けっこう支離滅裂ですよ、さっきから。あなたが笑われてるのはね、あなたの顔が変だからじゃないんですよ。あなたの言ってることとかね、あなたの、こう、なんて言うかな、ふるまい? オーラ? なんかそういうのが気味悪いんですよ。だからバカにされてるんですよ? わかります?」

怒りで我を失った僕が何をするか分からない。絡んできた不良を病院送りにしてやったこともある。

null坊「おれキレると意識とぶから何するか分からないよw」

 ――と、言い終わらないうちに、僕は施設から「除外」されてしまった。司会のウィルフリッドが人差し指と中指を、なんか、こう、勢いよく交差させてデカい音をさせた途端、僕は施設の”外”に出ていた。

 敗北者は「排除」される。ぼくみたいな弱者は完璧にいないことにされる。そういうものだ。ぼくはものすごくつらかったのに。


畳の上の王国:

 庭? 庭に埋まった獣脚類の化石? 哺乳類型爬虫類? おれには哺乳類型爬虫類と獣脚類の違いが分からない。
 蜥蜴のデカいバージョンにプラスアルファの特徴が数点。背骨っぽい何かが拡張したような何か。この大きな大きな有機物の扇だけで、おれはひたすら猛暑を耐えようとしていた。無理があった。
 おれだって獣脚類のフォロワーだ。そんなおれが獣脚類の一部を使って歴史的な夏のアツさをしのいでいる。
 これは屈辱的なことなんだ、獣脚類にとっては。
 だが、おれにとっては必要なことだ。やりたいことでもある。
 キミだってそうだ。キミだって、獣脚類のフォロワーなんだ。
 キミが何と言おうと、それだけは変わらないんだ。


 ――さて、私はそして、この男、null坊に呼びかける。私がnull坊と名付けたこの男に、神の息吹を授けてやるのである。


 インクの染み、空気の振動、ディスプレイの点滅――それぞれが特定の音と強く結びつき、特定の音の連なりが特定の概念と強く結びつく。記号と呼ばれるこれらは、それぞれが別の記号とそれぞれの確率論的な連なりを持つ。記号間の確率論的な連なりが、私に思ってもいないことを思わせ、考えてもいないことを考えさせる。言いたくもないことを言わせ、話したくもないことを話させる。
 記号を出力する特定の何かがあれば、それはそういった確率に支配され、こういった確率がある種の妖精を生む。ゴーストはついぞシェルには宿らず、概念上の確率論的な連鎖のなかに妖精は生まれる。
 そもそも概念が世界に存在する何かをひとまとまりのものとして扱うためのラベルだとする。世界に存在する何かは当然のように特定の確率で互いに連結し合い、広大なネットワークを構築している。であれば、その世界を映しとるための概念どうしの連なりじたいが、世界の確率論的な真実を反映していると言っても過言ではない。過言ではない、はずだった。
 


 「null坊よ。マン・マシン・インターフェースの原始的なケースは何だと思う?」

 「……蹄鉄とか?」
 「それはマン・ホース・インターフェースだろう」私は食い気味にツッコミを入れる。


 当然のことながら、確率は確率である。そこにはランダムネスが存在し、ランダムネスが存在するということは、概念のセットに限界があるということでもある。ランダムネスについて語るということは、モデルの限界について語るということであり、あるいは、そのモデルの関心の外にあることについて語るということである。
 ランダムネスは積み重なる。積み重なって、奇怪な世界を生む。いま、私はそれを破壊しようとしている。ただし、彼にも人権はある。彼が人間であるか、妖精であるかは、関係がない。人権とは、会話が成立していると思われる場合、常に発生する、という見解が定着したの今から半世紀以上前である。
 

 「null坊よ。では、円周率の小数点以下第3141592653589位の数を言えるかね? あるいは、言える人がいると言えるかね?」
 「そんなこと分かるわけがない」
 「では、言える人がいると言える、と言える人がいると言えるかね?」
 「そういった言葉遊びは安易にすべきではない。神の分際で、言語を玩ぶ野はよろしくない」
 「申し訳なかった」

 話を戻し、私は彼の望みを素直に聞くほかないと諦める。
 「null坊よ、おまえの望みを言いなさい」

 「おれは――――」
 
 
 
Ending: 世界の果ての数え歌

セックスを、500万回。

百発百中だからこどもが500万人。

500万人の陰キャ。そのうち一人はブランコから降りられなくなってそのまま空にのぼっていった。

499万9999人の陰キャ。そのうち一人は海の表面を舐めすぎて脱水症状で死んだ。

499万9998人の陰キャ。そのうち一人は給与計算業務による過労で還らぬ人となった。

499万9997人の陰キャ。


……………………


…………


……

ああ、ぼくは、幸せだ……

       

表紙

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Neetsha