Neetel Inside ニートノベル
表紙

エスト
黒い影

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気持ちよく晴れた朝です。
ゼルは朝、目が起きてすぐに窓をあけて、深呼吸をしました。
海のにおいの混じる、少し冷たい風が大きく吹いて、部屋の中の空気を一新します。
部屋は5畳ほどで、もともとは物品庫として使われていました。
広い部屋が苦手なゼルが、清掃し、机とベッド、それからクロゼットを置いたのがこの部屋です。
マージュには息苦しい、と大不評ですが、イグジクトには無駄がなくていい、と好評でした。
風に吹かれて、机にあるメモ帳がひらひらと揺れ、落ちてしまいます。
それを拾って戻し、写真立てをふと見ます。
写真には、10年前の自分と、年老いた老婆が笑顔で写っています。

「おはよう、ラエおばあさん」

と小さくつぶやくと、ゼルは朝の準備を始めます。
ラエおばあさんは数年前に亡くなった、血のつながっていない家族です。
二人でとった唯一の写真を大切にして、まるでその場におばあさんがいるように、
毎日挨拶だけは欠かしませんでした。


朝食後、昨晩の話の通り全員が会議室に集まりました。
席順は少し変わって、窓側にゼル、イグジクト。廊下側にイーギル、マージュ。
イーギルは鈍い銀色の鎧を身にまとっています。
王が遅れてやってくると、さっそく会議が始まります。

「皆、あつまったね。
 パラディンの二人には業務があるから、手短に話す。
まず、マージュ、午前中に5番風車を見に行ってほしい。
昨晩のイグジクトの推理を確実なものにさせるような証拠が欲しい。」
「かしこまりました。」
「イーギルは夜に影の捜索をしてもらう。22時にはエントランスへ来るように。詳細はそこで話す。」
「承知いたしました。」

王は、二人の快い二つ返事に、ほんのりと笑顔で頷きます。
おびえるような表情の側近のほうを向き、目が合ったのを確認すると、
笑顔のまま安心させるように小さく頷きます。

「ゼルは、夜の捜索のために西区域の区民たちに協力を仰いでほしい。
この話し合いが終わったら王子と作戦会議をしよう。」
「わかりました。」
「それから、夜はイーギルと一緒に捜索に出るように。」
「わかり…えっ!」

返事途中に、思わず驚いた声を上げます。
王は変わらずに微笑んでいます。
側近は、困った表情でわたわたとしています。

「ディ、ディルトレイ様、お言葉を返すようで大変恐れ入りますが、
相手がどんな者なのかわからない状態で自分が行っては、足手まといになるのではないでしょうか」
「どうしてそう思う?」
「自分は…その…剣術が苦手なので…マージュ様のほうが頼れますし、正直行くのがこわいというか…」
「いや、ゼルに行ってもらわなければ困るのだ。そうだろう?イグジクト。」

また、足を組んで、椅子にだらしなく座っていた王子は嫌な顔をします。
大きなため息をつくと座りなおし、側近の背中をバシンとたたくと、
テーブルに肘をついて、ゼルの顔を見ます。

「おまえはカモフラージュだよ。
相手は兵士すら警戒して出てこないのに、パラディンが出てしまえば遭遇がさらに難しくなる。」
「じ、自分がカモフラージュ…?」
「そうだ。お前は幸い、良くも悪くも城にいる感じが全くしないし、
 警戒して歩き回るイーギルの意識もお前に向いて、程よくごまかされるというわけだ。
 …ごまかされるかどうかはわからないが。」

悪く言われたのか褒められたのか、「はあ」と小さな返事をした側近に、王子は話を続けます。

「さらに街の地図がきちんと頭に入っているから、相手を見つけたり追いかけたりする場合に役に立つ。」
「そうだね、僕は大体の道はわかっても詳細までわかっていないからゼルがいると助かるよ。」
「そ、そうですか…」

緊張の面持ちの側近に、男騎士はにこにこと笑顔で頷いています。
王子は、くるりといじわるな笑顔で王を見ます。

「…王は、まさかゼルを囮にしようなんて思っていませんよね?」

王はまた同じくいじわるさを含んだ微笑で、王子と目をあわせます。

「たとえ万が一囮のような形になってしまったとして、
大勢の兵を率いてこの国を守る最強の騎士がゼル一人すら守れないと思うかな?」

ふふふ、と二人には不穏な空気が流れています。
マージュは腕を組んで、それは愉快そうに微笑んでいます。
囮という言葉に不安そうなゼルに、イーギルが少し身を乗り出して、鎧をかしゃんとならします。

「ゼル、大丈夫、相手が襲い掛かってきても僕が守ってあげるから。」

と、真っ白な歯を見せて、キラキラした笑顔で言い切ってきます。
ゼルはお礼を言いつつ、その笑顔のまぶしさに打ちひしがれそうになります。

「では、騎士の二人は業務に戻ってよろしい。大したことがないのに時間を取らせてすまなかったね。
ゼルとイグジクトはこれから作戦会議としよう。」

かしこまりました、と立ち上がってお辞儀をすると、
イーギルがばさりとマントをひるがえす音が響き、二人は部屋を出ていきます。
カシャカシャと鎧が擦れ合う軽い音と、コツコツという足音が遠のいていきます。

「さて、黒い影が出没しているという西区域は大体このようになっているね。」

早速、王は白と黒で描かれた西区域の地図を取り出し、
側近と王子の間に置きます。

「ゼル、相手が拠点にできそうな場所を絞り込みたい。
ごみが漁られていた場所と、空き家もしくは倉庫や物置になっている場所を記入してほしい。」
「はい。」

側近は、街の様子を思い出しながら胸ポケットから取り出した万年筆で空き家を塗りつぶし、
数字を振りました。
別の万年筆を取り出して、ゴミが漁られていた家には赤い丸を付けます。

「それから、西区域のバー、区域長の家等も」
「わかりました。ええと、区長の家がここだから…あ、駐在がここで…」

バーと駐在には文字を、区域長の家にはさらに取り出した緑の万年筆でリボンのマークを付けます。
メモの加わった地図をみて、王が問います。

「イグジクト、どう思う?」
「…5番は除外。」

早速、王子は側近の万年筆で5番の空き家にバツを付けます。
少しの間、沈黙が流れます。

「…4番もいらない。」

と4番にもバツをつけます。
また、考えるように顎に手をあてて地図の上を目線でなぞり、思考を巡らせます。

「あ」

側近は、短く声を上げると、
緑の万年筆で、二つの線をザカザカと加えます。

     


     

「…なんだそれは」
「これは、街の人たちがときどき使う本当に細い通路です。
…通路というより、家と家の間を勝手に通っているんですけど…
もし侵入者が気づいていたら、ここも通る可能性があるなと思って。」
「ふうん…ありがとう。」

王子はまた思考します。
何をつぶやいているのか、唇が動いています。
それを王は口に微笑みを含んで見ています。

「3番もないと思う…。」
「イグジクト、風車に隠れている可能性は?」
「ないです。風車を囲む柵を越すことはできても、中に入る鍵がありません。」
「では、3,4,5がないと思う理由は?」
「5は単純に周辺でごみを漁っている様子がないので除外しました。
 3と4はごみが漁られている家まで行くのに、何度も駐在の目の前を通らなければならない。
 そこまでリスクを背負わないと思っています。」

王子は蓋をしめた万年筆で、地図をなぞって説明し始めます。

「では、残るは南側の1番と2番ということになるね。」
「すぐそこに駐在のある家のごみを漁っているのをみると、2番が近くて…
1番が駐在近くの家に行く場合、バーの目の前を通らなければならないわけですが、
2番なら店から出ていく人の様子を見てから行くことができる。
でも1番では角から曲がってくる人がいた場合に鉢合わせてしまう可能性がある。」
「なるほど。」
「ゼル、この2軒はどんな状態だ?」

こんこん、と万年筆で1番と2番の建物をさします。
ゼルは思い出すようにうなると、1番を指さします。

「1番は…結構昔から放置されている倉庫です。割としっかりしてはいますが、
二階部分なんかは壁が朽ちている場所もあります。雨風はしのげます。」
「ふうん?手入れは?」
「…されていないと思います。危ないから近づく人もいないですし。」
「2番は。」
「…2番はたしか、半月前に家に住んでいたおじいさんがなくなってから、そのままです。
まだご家族が他国に住んでいて片付けに来れていないと思うので、家具とかもそのままかと…」
「わかった。」

ふと、王子は動きをとめて、ジトっとした目で王をみます。
突然がばりと背もたれに寄りかかって、頭の上で腕を組み、わざとらしくため息をつきます。

「…で、私の推理を基にして、王はゼルとイーギルをどう動かすおつもりで?」
「おや、そこまで考えてくれるのかと思っていたのだがね。」
「私は王の意見もききたいですねえ。」

また王子はいじわるそうな笑顔をすると、
王はふふ、と笑って、側近のほうを見ます。

「今晩の作戦を伝えるなら、イーギルが居なければね。
22時にエントランスで集まった時に説明しよう。」
「は?」

…王が、作戦を立てるための基盤を考えるのが面倒くさくて説明させられた、
ということに気がついた王子は、心底けだるそうな顔をしてまた大きなため息をつきます。
してやったり、といった顔をしている気品のある紳士に、ゼルは苦笑いします。

「ゼル、区長の家とその斜め向かいの家、それから1番の家の斜め前の家に、
城で出た食べ残しを一晩おいてもらうように依頼してほしい。
あと、1番と2番の周辺の家には、今晩は家から出ないよう手配をするように。」
「わかりました。」

ゼルはすこしだけ考えて、おずおずと王に問います。

「…あの、なんとなく隠れ場所の目星がついているなら、見てきましょうか?」
「いや、変に中を探るようなまねをして、相手を刺激するようなことがあってはならない。
 感づかれて別の場所に移動されても困るからね。」
「たしかに…そうですね。」

王は、わかってくれたことがうれしいように頷き、颯爽と立ち上がります。

「では、ゼル、頼んだよ。
…それからイグジクト、シーシアからの手紙を読んでおいてほしい。」
「手紙?」

王は、斜め後ろまで歩いてくると、胸元から開封済みの便箋を取り出し渡します。
王子は右手で受け取り、便箋を開いてテーブルに肘をついて読み始めます。

「あと、今日私は非常に忙しいので邪魔をしに来ないように。」
「…邪魔じゃなければいいってことですね。」
「ふふ、私がそう思わないならよろしい。
では私は執務に戻る。」

部屋を出ていくディルトレイをゼルはお辞儀をして見送り、
手紙を読みふけるイグジクトをみて様子をうかがいます。
視線に気づくと、瞳だけでゼルを見ます。

「なんだ」
「自分も行ってきます。」
「うん。」

イグジクトは瞳を手紙に戻すと左手をひらひらと振ります。

「失礼します。」

ゼルは軽く会釈をして、まずは街の人々への回覧板を作るべく、作業室へと向かうのでした。
回覧板の内容は、以下の通りです。
“今晩、21時以降家から出ないでください!
黒い影の調査のためご協力お願いいたします。”
バーで飲んだ人々がお店から一定時間出ていかないように、お店向けのものも用意して、
早々にお城を出て西区域へ向かいます。

またあの威圧的な区長のもとへ回覧板を回してもらえるように頼みに行かなければなりません。
少し気が滅入りましたが、それに反して空は突き抜けるような蒼穹でした。
朝よりは気温が上がり、速足で歩くゼルは少しだけ汗をかきます。
相変わらず人々に話しかけられつつも、足早に区長の家に向かいます。

昨日も訪ねた、リボンのついた扉をたたくと、中からは区長夫人のマリーが出てきました。
後ろにはマイレク区長もいましたが、心なしか小さく見えます。
事情を話すと、マリーが満面の笑顔で、
「みんなとお話ししたいから、私がみんなの家を回るわ!」
と引き受けてくれました。
意外と仕事があっさりと終わったゼルは、夜を待つだけになりました。

一度お城に戻り、昼食を済ませましたが緊張しているのか落ち着かず、
野次馬心もあって北区域の5番風車に向かうことにしました。
自分の部屋で身なりを整えて、さっそくお城を出ようとすると、エントランスのあたりで、
「ゼル!」と呼び止める声が響きます。
振り返ると、カシャカシャと小さく鎧の音を鳴らせて、真っ白なマントをなびかせて、
ホールのほうからイーギルが走ってきます。

「あ、イーギル様」
「これから西区域へ?」
「いえ、もう西区域での業務はおわったので、5番風車に行こうかと…」
「そっか!お疲れ様。」

さわやかな笑顔に、思わずつられてゼルも微笑みます。

「ゼル、朝あまり剣術が得意じゃないって言ってたよね?」
「え?あ、はい…」
「僕、これから兵士たちと剣の練習をするから、ゼルも一緒においでよ!」
「えっ」

輝く笑顔で手首をきゅっとにぎって、引っ張られます。
本人は軽くつかんでいるつもりのようですが、ゼルには重い鉄の手かせのように感じます。

「う、あ、あの、自分は…」
「大丈夫、新しく入った子たちもいるから、ゼルにもついてこれるよ。」
「そ…それは…」

哀れなゼルは、参加を断れず、引きずられていきます。
3時間がっちりと練習をさせられそうなところに、たまたまイーギルに用があった王子が止めに入ってくれたことで1時間半で済みました。
青空の元、汗だくで腕をがくがくさせながら、必死の形相で木の棒を振るゼルの姿に、
王子は笑いが止まらず、おなかを抑えながら一緒にお城の中へと戻ります。

疲れてクタクタのゼルでしたが、これからお城で出た生ごみを、
西区域の家にもっていかなければなりません。
シャワーをあびて汗を流し、だるい腕に鞭を打って西区域に生ごみを持っていき、
戻ってきたころにはもう夕方となっていました。

そうして、やがて夜が来ます。
真っ白な三日月が、周りの雲をささやかに照らします。
街の街頭がぽつりぽつりと灯り、家から漏れるオレンジ色の明かりがあたたかく感じます。
それでも町全体は薄暗く、影は真っ黒に塗られたようです。


真っ暗闇で、目を覚まします。
頭が痛い、息が苦しい。
壊れかけのテーブルに置いた汚れた緑の瓶から液体を飲み、
両手をおでこにあてて、また寝そべって苦痛が去るのを待っています。
呼吸を整えます。
やらなければ、行かなければ、おなかがすいた。
もう少ししたら何か食べられるものを探しに行こう。
そっと、大きく息を吸って、生きるのをやめるように目を閉じます。
「あの人のだいすきな目」を探さなければ…

     


さて、とっぷりと夜に沈んだイースは、夜の23時には静かになります。
それでも、夜にお酒が飲めるようなお店はにぎやかで、
もう少し暖かくなってくると外でお酒を飲む人も増えてくるでしょう。
城門は閉じられ、外からの訪問者もありません。

静かにしていると、海のさざ波が聞こえてきます。
風がふいて、お城の周りの木々をゆらします。
エントランスに入ってきた風は、ゼルの長い前髪を揺らします。
なびいた前髪を手櫛でなおし、広い円形のエントランスの扉の前でイーギルや王を待っています。


静かな空間に、自分の心臓の音が聞こえるのではないかと錯覚しながら、深呼吸を繰り返します。
昼にイグジクトと会ったとき、服装を街の人たちに合わせるよう指示があったのです。
サスペンダーにこげ茶のストレートパンツを履いて落ち着きない様子は、
何も知らない人から見たら、お城に迷い込んで緊張をしている街の青年にしか見えないでしょう。

「…や、やっぱこわぁ…」

大きくため息をついて、なんとか緊張をほぐそうとしますが、なかなかうまくいきません。
もともと薄暗い場所が苦手なゼルは、暗闇に潜むなにかと対峙するということにひどく恐怖を感じるのでした。
お昼の特訓のせいで、腕がだるくて重くて、なんだか痛みが出てきた気もします。
両方の二の腕をさすっていると、エントランス横の階段から小走りしてくる音が聞こえてきます。
重なって、ゆっくり歩く音も聞こえます。

軽やかに階段を降りてきたのは、イーギルでした。
昼とはうって変わって、真っ白なYシャツをベージュの乗馬キュロットにしまい、きちっとベルトをして編み上げブーツを履いた、いつもよりずっとラフに見える格好でした。
まくられた袖から見える、血管のうっすら浮いた太い腕が、逞しさを際立たせます。
腰の横には銀色の装飾の入ったレイピアを差し、背中のあたりに短剣を差しています。
後ろから歩いてきたのは朝と変わらない様子のイグジクトでした。

「おまたせ、ゼル。」
「いえ…あれ、王は…」
「なんだ。私じゃ不満か。」

イグジクトが鼻で笑っていじわるに言います。

「王はキシェのところに行っているから私は代理だ。
 まず、おまえはイーギルを1番まで連れて行け。
 そこで確保できなかったら、ゼルはバーのほうから、イーギルは小道を使って2番へ向かう。
 ”えさ”にくらいついているようだったら、うまく挟み撃ちできるし、
 2番にいるんだったら合流してどうにかしてひっ捕らえろ。」

えさ、とは、夕方に持って行った食べ残しのことでしょう。
二人がうなずいたのを確認すると、口の端を吊り上げます。

「できれば生きて捕まえて来いと。パラディンのおまえならできるだろう?」
「もちろんだよ。」

イーギルはオレンジ色の瞳の鋭さを隠さずに微笑みます。
その瞳を確認すると、イグジクトはふん、と小さく笑います。
ぴん、と、てぐすが張ったような空気のなか、ゼルはおずおずと右手を上げます。

「じ、自分はもしかして途中から一人に?」
「がんばれよ。」
「ええ…」

一人になるという不安に、それはもう絶望に打ちひしがれた顔をしています。

「安心しろ。昼にマージュが5番風車を見に行った時、破損部分に無理矢理に上ったような
 足跡があることを確認してる。相手は人間だ。」
「それなら僕が太刀打ちできのは確実だね。さ、これ以上怖くなる前にさっさと済ませてしまおう。」

ゼルはまた、強靭な腕にがっしりとつかまれて、
情けない声をあげながら半ば引きずられるように連れていかれます。
ぎい、とお城の扉が開くと、イグジクトが「あ」と短く声を上げます。

「あと一つ、二人とも絶対に怪我するなよ。気を付けて行け。」

扉から出ようとした二人は少しキョトンとした顔をして見合わせると、
わかりました、と返事をして出ていくのでした。




***


やっと、身体を起こして錠剤を飲んだ。
数十分して動けるほどの力が出てきて、朽ちた建物の二階から外の様子を見る。
人通りはない。すこしほっとする。
緑の瓶にしっかりと蓋をする。
中身はあと5口ほどしかないのを見て、ポケットに入れる。

あの人の声が頭でぐるぐるする。
”ぼくのたいせつな目を探してほしいんだ”
”みつけたら、ぼくにおしえてほしい。”
全部で4つの言葉、あと2つも脳内で甘く響く。

 頭がまだはっきりしない。
まずは水を飲みに行こう。
軽くなった脚で静かに1階に降りると、もう一度外の様子を見る。
ふう、とため息をついて、建物を出る。
 身体がだいぶよくなった。明日には探さなければ、明後日には…
ドブネズミのように、街灯と家々から漏れる光を避けて、身体を縮めて街を歩く。
はやくあの人のたいせつな目を探さなければ…


***


「そういえば、珍しくレイピアを持っているんですね。」
「ふふ、街は小回り利いたほうがいいなって思ってマージュから借りたんだ。」

腰に差さった細い刀身の剣が、街灯の光を受けてきらめきます。

「なるほど…」
「僕はハルバードとかツーハンデッドソードのほうが好きなんだけどね。」

ゼルは、なんですかそれは、という言葉を飲み込みます。
 心なしか、大きな声でしゃべっているわけでもないのに、話し声が街に響いている気がします。
響いた声は、闇に溶けていきます。
 街灯があるとはいえやはり薄暗い街中を、ゼルはランタンをもちながらイーギルの前を歩きます。
二人の歩く音が響き、すこし不気味に感じます。

「僕、久々にこんな格好をしたよ。」
「そうですよね、いつも制服か甲冑ですもんね。見慣れませんけど、似合ってますよ。」
「ふふ、ありがとう。ゼルは8年前を思い出すね。」

 8年前、ゼルが円卓となったころです。
一般市民の18歳の頃、確かにこんな格好だったかもしれない、と思い出します。
円卓全員の集まる場に連れていかれ、王が自分を側近にしたい、と宣言したあの日。
全員が驚いた顔をして異議を唱え、それを黙って聞いている弱弱しい自分に、
にやりとした顔を向けた王子の顔。

「…思い出しました。」
「ふふ、なつかしいね。」
「自分がこの国に来た時、騎士は一人でもみんなをまとめられるんじゃないかって思っていました。」
「そうか…いや、僕には無理だな。女性の気持ちも限界もわからないから女性兵士たちを生かせない。
 マージュは時に女性たちの敵に周るような動きをして、うまく僕に軍をまとめさせている。」
「なるほど…それは知りませんでした。」
「僕はマージュにはすごく助けられているよ。」
「信頼しあってるんですね。」

肉厚なごつごつとした褐色の手が、まるで自分の子供のようにレイピアを静かに撫でるのを見て、
ゼルは信頼以外の想いを感じたような気がしました。

 騎士が分かれていることは、兵士の育成と役割の分担による効率化に非常に役立ちました。
たくさんの男女が集まる兵士たちを、性別で差別せず”区別”することによって
それぞれの良さを引き立てられたのです。
また、不思議なことに、同等に優秀な騎士が二人いることにより、
性別にかかわらず自然と「女騎士派」と「男騎士派」に分かれるという現象がありました。
これにより、どちらかによる反乱が起こっても、残りの半分で対抗することが可能だということを
イースは長い歴史で学びました。

 そんな他愛のない話をしているとゼルが立ち止まり、ほんの少し遅れてイーギルが立ち止まります。
早速、1番の倉庫に着いたのです。
倉庫はブロック塀で囲まれた、木造の建物でした。
 イーギルは、早速そうっと壊れそうなドアを開けようとしますが、鍵がかかっています。
ゼルからランタンを受け取ると、そのまま上手に足音を立てずに家の裏に回ります。

 家の裏の角には、人が一人通れそうな穴が開いています。
慎重に中を確認すると、特に生物がいるような気配はありません。
ランタンを持ったまま、大きな体をできるだけ縮こませて何とか中に入ります。
朽ちた棚や壁に掛けられた蜘蛛の巣だらけの農具、長年放置された煤だらけの鍋や釜、
埃だらけで白くなった床、床についた足跡。
足跡は、階段を上ったり降りたりしています。
 静かに静かに、階段を1段踏みしめます。
ぎい、ときしむ音が響いて一瞬動きを止めますが、そのままゆっくりと上ります。
二階には小さなテーブルや木箱、大きく開いたままの壊れたクロゼットが置いてあります。
木箱の上には昔何かに使われていたであろう麻布が置いてあり、
人がそれをかぶって寝ていたような気配がありました。

「甘い香りだ…」

 りんごのシロップを煮たような香りがほんのりと残っています。
周辺を少しだけ確認しましたが、元となるようなものは見当たりません。
これ以上、めぼしいものは見つからないと判断し、元のルートをたどってゼルのもとへ戻ります。
倉庫の目の前でビクビクしながら待っていました。

「二階で誰かが寝ていたような形跡がある。潜んでいたのは多分ここだ。」

怯えた表情のゼルにランタンを返しながら、イーギルは小さな声で言います。

「で、では2番は確認しなくてよさそうですね」
「うん。じゃあ予定通りゼルはバーのほうから区長の家に向かってほしい。
 罠にかかっているか確認しよう。」
「や、やっぱり一人ですか?」
「そう。」

 ゼルはまた絶望的な顔をします。
倉庫内を捜索しに行っているイーギルを待っているだけでも恐ろしかったのに、
今度は鉢合わせするかもしれない状況に一人で立ち向かわなければならないのです。

「ゼル、大丈夫だよ!」

 今度は、がっしりと両肩をつかまれます。
この世の終わりのような表情の青年に、さわやかな笑顔の青年。
もちろん逃げられるはずもなく、恐る恐るバーのほうへと歩き始めます。
イーギルは、区長の家近くの小道から向かいます。

 1番の倉庫を背中にしてしばし歩くと、街灯のない、左へ曲がる少し狭い通りが現れます。
何かが角から飛び出してくるんじゃないか、と考えてしまい、
ランタンで先を照らしながらできるだけ迂回して左へ曲がります。
通りの終わりあたり、左側にはバーの明かりが見え、やがて中の楽しそうな声が聞こえてきます。
窓をのぞくとお酒を飲んでいる大人たちで大いににぎわっているようでした。

 人の気配に少し安心してちいさくため息をつきます。
あとはまた左に曲がって、しばらくまっすぐ進んでいけば、区長の家です。
それまでにイーギルと合流できるか、
それとも、夕方ごろに置きにいったお城の食べ残しを食い漁る影がいるのか…

ひとつ深呼吸をして、左に曲がります。
2番としてマークしていた家の前を通って、まっすぐ、まっすぐ…

     


 ゼルと別れた後、イーギルは小道を探します。
小道は家と家の間に出来ていて、街路樹や土地を分けるために植えられている低木でわかりずらく、
きちんと見なければ気付かないほどでした。
ランプも持っていなかったイーギルは、そっとかがんで小道に入ります。
向こうの道路の街灯の光でうっすらと出口が見えている所を見ると、
道中に何かが潜んでいる様子はありません。
小道を抜ける少し手前でしゃがみ、低木から顔だけ出して周りの様子を伺います。

 よく目を凝らします。
区長の家の、斜め前。
ごみの入っている箱の影で、何かがうごめいているようにみえます。

 道の奥から、小さく揺れる光が現れます。
おそらくゼルのランタンでしょう。
息をひそめてもう一度斜め前の様子を見ます。
何かはわかりませんが、間違いなく動いているのが確認できます。

まだ、出るタイミングじゃない。
 息をひそめて様子を見ていると、影がゼルの足音に気づいたようで動きを止めました。
ごみの入った箱からほんの少しだけ顔を出して様子をうかがっているようです。
ついに、イーギルは息を殺してうごめく影に近づきます。

 ゼルはなかなかイーギルと合流できないことに不安を覚えます。
小道を抜けてこちらに歩いてくる姿が見えてもいいはずなのです。
きっと影に隠れて待っているだけだ、と自分を襲い掛かる不安を振り払ってそのまま直進すると、
右前方で銀色の光が煌めくのを見ました。

 イーギルは影の背後から、レイピアを鞘に収めたまま振り下ろします。
暗闇から見えるそのオレンジの瞳が、鷲の目のように光ります。
影は、それに気づいていたかのように横にごろりと回転し、
左足で下からイーギルの手をめがけて蹴り上げ、剣を手から離そうとしますが、
蹴りは目標を外れてレイピアの鞘を飛ばします。
 白銀の剣身が現れ、そのままくるりとひるがえったイーギルがさらに白金の剣を降り下ろします。
影は後ろに飛んでごろりと後転します。
暗くて良く見えませんが、剣が相手のどこかをほんの少しだけ切ったのを感じました。
相手は、手の甲で顔のあたりを拭く動作をしたので、おそらく切れたのは頬でしょう。

 二人は向かい合います。
黒い影の後ろにはゼルが呆然と立ち尽くしています。
街灯がほんの少しだけ、黒い影を照らします。
 15歳程のやせ細った黒い髪の少年が、肩で息をしながら敵意がむき出しのギラギラとした目で
こちらを見ています。
イーギルはふう、と息をついてレイピアをかまえると、またさわやかな笑顔をみせます。

「君、名前は?」

返事はありません。
相手は荒い呼吸のまま、ぶつぶつとつぶやきはじめます。

「じゃまをされたら…ころしていい。」

 枷が外れたように、少年はイーギルに飛びかかります。
紙一重のところでかわされるとそのままごろりと転がって、
すぐに体制を立て直し、くるりとこちらに身体をむけ再度飛び掛ってきます。
 見切ったイーギルは一閃、相手の右肩にどすりとレイピアを突き立てると、
相手は、ぐう、と苦しそうな声をあげて、後ろに飛びます。
少しの間があって、またギラギラとした目でこちらを見たかと思うと、少年はゼルを目標に変えます。

「はわあ!」

 ゼルは、こちらに猛スピードで走ってくる相手に、情けない声をあげて逃げようとしますが、
あまりの恐怖にすくんで足が動きません。
 数メートル上から飛び掛ってくる少年を見上げた時、目があいます。
ゼルは少年が一瞬、目を見開くのを見ながら、頭を守るようにランタンを持った腕をあげて目を閉じて上から来るであろう衝撃に備えます。

「モタモタするな!」

 という怒号が響いたと思うと、
スライディングをしてきたイーギルの蹴りが斜め下からゼルのおへそ上あたりに入り、
数十センチ浮いて後ろに飛ばされ、ざざあっという音を立てて、背中で地面をスライドします。
 ランタンが投げ出され、ぱん、と音を立てて割れました。
 少年は目標がずれたことにより攻撃を外し、顔から地面に突っ込むように着地しますが、
またごろんと受け身を取り、一瞬、ゼルを気にするように顔をそちらに向けます。
少年の左肩から血が出て、シャツが染まっています。

 無表情のイーギルは止まることなくまっすぐと剣を相手に鋭く突きます。
ひらりとかわされると、それを予期していたようにそのまま剣を薙いで相手の体を狙いますが、
伸ばした腕の内側に相手がくるりと入ってきてみぞおちに掌底を入れられます。
口から声を漏らしつつも奥歯を食いしばって耐え、
左手で腰に隠して差していた短剣を逆手持ちして、相手の肩に突き立てようとします。

 がちん、という音がします。
少年は、口を大きく開けて短剣の刃を歯で受け止め、そのまま刃を噛み砕きます。
イーギルは動じることなく冷静に短剣を後方に投げ、
レイピアを持った右手で少年の後頭部の髪をつかみ、うしろに叩きつけようとします。
相手は右肩で地面に叩きつけられながらも脚を器用にイーギルの脚にひっかけて体制を立て直し、
股の間を抜けてゼルのほうに走ります。
ぱりん、と小さく何かが割れる音がしました。

 ゼルは、痛むおなかを抑えて唸りながら、身体を起こしている所で、
少年がこちらに走ってくるのをみて、また情けない声をあげて怯えます。
すぐに押し倒され、がしりと顔を両手で捕まれると、甘い香りがしました。
1秒、見つめあいます。

「だいじなめ、みどりの――」

 その時、レイピアがきらめきます。
少年の右耳が貫かれ、ぎゃあ!と悲鳴を上げて飛び上がり、ゼルから離れてうずくまります。
ほとばしる血を見て、ゼルも小さく悲鳴を上げます。

 右耳を抑える左手の指の間から血が流れ出て、瞳には怯えが見えています。
イーギルのオレンジ色の瞳は冷たく輝き、無表情で脚を大きく開いてゼルと少年の間に立ち塞がる姿は、まるで魔王のようでした。
 少年の表情が一瞬で怒りに変わります。
はじめよりも速いスピードでとびかかり、それに対応してイーギルも相手の太ももを狙って
大きく踏み込んでレイピアを突き出します。
 少年は、左太ももの左側をほんの少しだけ切られながらも上手にかわして、
細い左手からは考えられないほどの恐ろしい力でイーギルの右腕を掴み、引っ張ります。
爪が深く食い込み、イーギルの腕に5列のひっかき傷が出来ていきます。

 少年が肩にかみつこうと右腕をさらに力いっぱい引き寄せた瞬間、
イーギルの左拳が見事にみぞおちに入りました。
苦しそうに口を開いて後ろに尻もちをつき、転がって四つん這いになり、嘔吐します。
 すかさずレイピアの柄が少年の首筋へ打ち付けられると、
落ちるように崩れて、電池が切れたようにぱたりとうごかなくなりました。

イーギルは大きく息を吐くと、ズボンのポケットからハンカチを出してレイピアを拭き、
静かにゼルのほうへ歩いていきます。
ゼルは怯えた目で見上げると、いつもの柔和な顔のイーギルがいました。

「ゼル、警察兵を呼んできてほしい。あの子を城まで連れて行かないと。」
「は…はい」

 ゼルの手を取ってきちんと立ち上がれたことを確認すると、パタパタと砂をほろってくれます。
軽やかにレイピアの鞘を取りに行くと、傷がついていないか確認して、すらりと中に納めます。
 警察兵が駆けつけると、簡単に少年の手当をして縛り上げ、
お姫様抱っこの要領で抱えて毛布を掛けてお城へと連れていきます。

「思っていたより傷つけてしまった。」

少年を抱えたイーギルが少し息を切らしながらつぶやきます。
少年の傷はできるだけ処置しているものの、イーギルの右腕を伝って血が滴り落ちています。

「そうですね…戻ったらキシェ様のところに連れていきましょう。」
「うん…そうだね。」

 足早に帰り道を急いでいると、ゼルは肩で息をするイーギルの様子が気になりました。
自分より体力のあるイーギルが、少年を抱えているとはいえただ歩いているだけで
こんなに呼吸を乱すものだろうか?

「…イーギル様、自分が抱えましょうか?」
「…いや、大丈夫行こう。」

ふつふつと、額に汗もにじんできています。
お城の入り口は目と鼻の先でした。


ゼルは、力いっぱい重たいドアを開けます。
エントランスには、ディルトレイと、白衣を着た大きなカバンを肩に掛けている青い髪の少年、
白衣を着た深いピンクの髪の若い女性、さらに何人もの軍医たちが待っていました。

「いま、戻りました。」
「ご苦労だったね。」

少年をゆっくりおろすイーギルに、ディルトレイが静かに声を掛けます。
その時、イーギルは苦しそうにゼエゼエと音を立て首を手でおさえながら、
流れるほどの冷や汗をかいて膝をつきました。
ゼルは思わず駆け寄ります。

「い、イーギル様、どうしたんですか!」
「ゼルゼル、大丈夫」

少年はふんわりとした猫っ毛の青髪を揺らして、まん丸のガラス玉のような深い青の目をきょろきょろとさせながら、イーギルに近づくと、肩をぐいぐい押して座らせて背中側に回り、
上半身を自分に寄りかからせます。
喉を抑える右腕を伸ばさせて、袖をぐいぐいと上にまくると、カバンから注射器を取り出します。

「い、イーギル、大丈夫大丈夫、よしよし。」

少年はイーギルの右腕のひっかき傷を確認すると、慎重に二の腕に注射針を差しこみます。
中の液体が全て注入されると、少年はさらにカバンをひっくり返して、
ばらばらとたくさんの道具が出てきた中から消毒液とコットンを指さし、軍医に消毒させます。

「ゼル、ゼル、安心していいよ…大丈夫、イーギルは健康だったから。」
「キシェ様、こ、これは…」

 ゼルは、手際よく包帯が巻かれていくのを見ながらへたり込んでしまいます。
青髪の少年――キシェは鼻歌を歌いながらイーギルの頭をなでていたかと思うと、
さっきカバンをひっくり返したときに近くに転がってきた四角い箱をイーギルの指に挟み、
表示された数値を確認して、また何か指示を出しています。
 白衣の女性が軍医たちに何か指示を出して、少年を担架に乗せて運び始めたりと、
慌ただしくなってきました。

それをみながら、キシェは笑顔で、目をぱちぱちさせながらゼルの頭をなでます。

「イーギルは大丈夫、大丈夫だよ、アナフィラキシーショック、免疫の過剰反応。
きっと腕の傷口からあの、あの子の血液が入って引き起った強いアレルギー反応。
体力があるし、今ちゃんと処置、処置してるから。」

 せわしなく動くキシェや軍医たちに、自分にできることはないと思ったゼルは、
邪魔にならないよう少し下がって呆然と様子を見つめています。

「ご苦労だったね、ゼル。」

自分に掛けられた落ち着いた声にハッとします。
振り向くと、穏やかな表情のディルトレイが立っていました。

「…怪我をしてしまったんだね。」
「は、はい、自分…自分が足手まといで…」
「いや、問題ないよ。あとはキシェたちに任せて、ゼルは今日おやすみ。」
「で、でも…」

食ってかかるように一歩近づきますが、表情を変えないディルトレイにハッとします。
少しだけ後ろを振り向くと、あわただしく軍医たちが動き回る様子が見え、
本当に自分が無力であることをやっと認識します。

「イーギルはまかせて大丈夫だよ。今日のところはシャワーを浴びておやすみ、ゼル。」
「…はい。」


ディルトレイが、少しだけうつむいたゼルのに変わらずに微笑みます。
ゼルは、力なくお辞儀をして、背中を向けます。
すると、パタパタと走る音が聞こえて、キシェがゼルにぎゅっと抱きついてきました。
後ろから小走りで、ピンクの髪の女性もついてきています。

「ゼルゼル、大丈夫、大丈夫だから。
 今日は砂まみれでが、がんばったね。いいこいいこ。カヨ、カヨもそう思うよね?」

キシェはゼルの頭を撫でて、どこからか取りだしたキャンディを一つ渡して来ると、
カヨ、と呼ばれた女性のほうに向き直ります。

「ゼル、本当にイーギルは大丈夫だから、安心してね。」
「はい…よろしくお願いします…」
「おや、おやすみ、おやすみなさいゼル。」

キシェの無邪気な笑顔に、力なく笑って「おやすみなさい」と返すと、自分の部屋に向かいました。



       

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